【品質保証塾・初級編】工場勤務での品質保証・品質管理の業務内容とメリット
皆さんは、選べるのであれば「本社勤務」「工場勤務」のどちらが良いでしょうか?
私の周りは「本社はキラキラしているな」「工場は古くて嫌だな」「本社は人間関係が複雑…」「工場の人間関係は楽だなぁ」などなど、両者とも良い意見も、悪い意見も、耳にします。ある程度大きな組織であれば、品質保証という仕事は本社にも工場にも存在する組織が多いのではないでしょうか。
今回は、品質保証として本社勤務も工場勤務も経験のある筆者が『工場勤務の品質保証』の魅力をお伝えしたいと思います。
目次
1.品質部門は工場勤務の方が得?
品質保証として勤務している方は、本社にオフィスがあるよりも工場の事務所で働いている方が得することが多いです。中には都会勤務や綺麗なオフィスに憧れる方もいらっしゃると思いますが、品質保証として働く場合は、本社ビルよりも工場の方がたくさんの経験を積めます。
なぜなら、製造業では工場でモノづくりを行い、品質問題も工場で起きているからです。
某有名ドラマでの名言「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!』まさしくこれです。
とはいえ、いきなり『工場勤務の方が得』と言われてもイメージがわかない方も多いのではないでしょうか?
より具体的に『なぜ品質保証は工場勤務が得なのか』をお伝えしていきます。
2.工場勤務を希望する若手も多い
実は品質保証で働く若手は、工場勤務を希望する人も多いです。本社の綺麗なオフィスで仕事をしていても、なかなか現場のイメージがつきづらく、想像でしか話すことができないため、専門用語が飛び交う会議についていくことも困難な場合も多々あります。
何か品質問題が発生しても、本社で文字や写真の情報は知ることができても、それ以上の情報が来ないことが大半です。工場勤務ならどうでしょうか?何か困ったら、すぐに現場を見に行くことができます。現場に足を運び、現場を生で見ることができるのです。
本社で働いていても、工場従業員との人間関係も少なく、なかなかコミュニケーションが取れなかったり、聞きたい疑問も聞けずに日々過ごすことも少なくありません。仕事は経営者への報告資料の作成であったり、上司から修正の指示が入ったり『モノづくり』から程遠い仕事をしている人もいます。
このような背景から、現場で経験を積みたいと考える品質保証の若手社員も多く、若手のうちに早く工場配属になった方が、後々役に立つことが多いのです。
3.工場勤務で品質保証の仕事をする具体的なメリット
(1)品質問題の経験を積める
繰り返しになりますが『問題は現場で起きている』のです。
本社勤務をしていると、回ってくる品質問題の情報は極一部です。
ほとんどは現場で処置され、逐一、本社まで回ってくることはありません。
ところが工場勤務ならどうでしょうか?
工場内で検出された問題も、流出してしまった問題も、どんなに小さな問題でも品質に関わる全ての問題の情報が入ってきます。
なぜ起きてしまったのか?なぜ流出してしまったのか?どういう時に問題が起きやすくて、どうすれば解決するのか、原因調査をおこない対策するまで全ての過程を生で見ることができます。
多くの品質問題を扱うにつれ、自然と製品や技術的な知識も習得できるので、様々な部門と協議するスキルが身につくのです。工場で品質問題を扱う経験は、品質保証を行ううえで重宝されます。
(2)出世には現場を知り尽くしていることも必要(?)
特に品質保証として出世する場合、時には大きな品質問題をコントロールしなくてはならないときがあります。早急に情報を集め、指示をかけることも必要となるのです。このような場合、様々な拠点とコネクションをもっていることで、案件を早急に進めることができます。人間関係をたくさんもっていることが管理職になるうえで重要となってきます。
また、管理職として他拠点とコミュニケーションをとる場合、数々の現場を知り尽くしていることも大切です。工場によって扱う製品が異なることもありますし、それにより製法や製造ラインが異なります。工場が違ったら文化や決まりが違うこともあります。様々な知識や経験を持ってることは重宝されるのです。
(3)現場と密なコミュニケーションがとれる
工場の事務所勤務だと、少し歩けば製造ラインに入れる環境です。
もし、品質問題が発生した際に、いつでも気軽に現場と密なコミュニケーションがとれます。
現場の作業者に話しかけることもでき、現場の本音を聞くこともできるのです。
『なんでミスっちゃったの?』
「いや、体調が悪くって…。本当は有給の申請をしたんだけど、今日は人がいなくてどうしてもって認めてくれなかったんですよ。」
こんな本音が聞けたら、組織としての問題もあるように感じませんか?
現場と仲良くしていれば、品質問題のリアルが聞けます。
(4)現場のレイアウトや製法を目の当たりにできる
安全、防災、法規、規格等の知識は、組織が違えど共通している部分も多いので、一般的な書籍で勉強することが可能ですが、品質保証の場合はそうはいきません。品種によって製法や製造ラインが異なることもあり、ほとんどは企業秘密で守られているので、一般的な書籍で知識を習得することは難しいのです。
そのため、工場で品質保証を経験することにより、現場のレイアウトや製法を目の当たりにでき、スキルや経験を習得することができます。どういった検査装置があって、どのような装置で製品を製造しているのか、またそれらは、どのようなレイアウトで現場に置かれ、どういう人の導線が存在しているのか、どういうセットアップで製造しているのか…等、現場でしか習得ができない経験を積めるのです。
4.工場勤務の品質保証の仕事内容(典型的な一日)
工場勤務の品質保証は、普段どのような仕事をしているのか事例をお伝えします。
朝礼などが行われる会社もあり、前日までの問題点(作業不備や装置異常など)をレビューします。会社によっては、実際に生産ラインへ行きチェックを行います。製品の検査結果や外観、梱包の状態などを確認し、問題があった場合は、即座に対応します。
実際に生産ラインが稼働しているときは、作業者の作業や生産設備の状態、操作方法などを確認します。これは日々の製品品質を維持し続けるために大切な活動となります。作業者の手順を確認して、不備があればトレーニングを行ったりもします。
1日を通して確認された問題点をレビューしたり、レポートにまとめたりします。このレポートは、次回の生産ライン確認の際に役立つ資料となったりもします。
その他にも工程変更がある場合は、全体のリスク分析や承認回覧作業を管理し、品質問題が発生することもなく、変更が安全に行われるように制御することも品質保証の仕事の一貫です。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。
本社勤務の方がカッコよくて、オフィスもきれいで良い!といった意見も多いかもしれませんが、品質保証として働くのであれば、工場勤務のメリットも多いです。現場を経験することで、品質保証のスキルアップに繋げてもらえれば幸いです。
- 品質保証の若手は工場勤務を希望する人も多い
- 現場勤務を経験することでモノづくりのノウハウ(作業や製法など)を習得できる
- 現場のノウハウは社外秘で守られていることも多く実務でしか習得できない場合も多い
- 現場と密にコミュニケーションを取ることで、品質問題が起こる予兆を知れる
- 装置やレイアウト、操作方法などを間近で見ることができる
次回は、本社勤務での品質保証業務について説明します。
(アイアール技術者教育研究所 Y・S)