【早わかり電気回路】電源回路の基本を解説[直流/交流,インバータ/コンバータ,レギュレータ等]

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電源回路の基本を解説

電子回路は、電源があって初めて動作するものです。
今回は、最も基本的事項である電源回路の基礎について説明します。

世の中のほとんどの機器は、電気があって初めて動作しています。
停電になると、自動車以外のあらゆるものが動作しなくなり、生活が困難になります。
また、電気自動車はもとより、ガソリン車もバッテリーを積んでいますので、電気が必要なことは間違いありません。

1.電気の基礎

電気は、どうやって作られるのでしょう?
最近では、太陽光発電もありますし、身近なところでは、電池も電気を作っていることになります。

しかし、一般的には、電気は発電所で作られます。
発電所には、水力、火力、原子力などがありますが、基本原理は同じで、機械エネルギー(回転エネルギー)を電気エネルギーに変換する発電機を用いて発電しています。
 

発電機の原理

発電機は、学校で習ったフレミング右手の法則を応用して電気を発生させています。
フレミング右手の法則とは、磁界の中で導体が動くと導体に電流が流れる電磁誘導現象において、磁界・導体の運動・電流の方向、の関係を示すものです。

図1は、交流発電機の基本原理を示す概略図です

発電機の原理
【図1 発電機の原理】

 
図1において、磁石が赤の矢印の方向に回転すると、N極の磁力線がコイルを通過するので、コイルの電線に電流が発生します。N極が遠ざかると磁力線がなくなるので、電気は起きません。

しばらくすると、S極が通過するので電気が起きますが、今度は磁力線の方向が反対ですから、反対方向に電流が発生します。
このようにして電流の方向が入れ替わる電気(交流)が発生します。これが交流発電機となります。

発電所で作られた電気が家庭のコンセントに届くまでのルートは、次のようになります。
[発電所(数万V) ⇒ 送電線(数十万V) ⇒ 変電所 ⇒ 配電線(数千~数万V) ⇒ 柱上変圧器 ⇒ コンセント(100V)]
発電されてから、家庭に届くまでに色々なところを経由してきていることがわかります。
 

2.電源の基礎知識

「電源」とは?

「電源」とは、言葉通りの意味としては、電気エネルギーを発生させる源のことを言います。すなわち、発電所や電池のことを指しています。
また、コンセントから得られる電力を電気機器を動作させるために、使いやすい電力として供給する装置や回路のことも電源といいます。

このコラムでは、主に後者について、説明します。
 

交流電源と直流電源

電源の種類を大別すると、「交流電源」と「直流電源」になります。

交流は一般家庭用のAC100V、50/60Hzとか、工場用のAC200V、単相、三相、などがあります。
直流では、電池、バッテリーなどの身近なものがあります。

商用電源ならば、小さな電力から大きな電力まで自由に利用できます。商用電源は交流(AC)の100Vです(日本国内の場合)。
交流は、時間とともに電圧の大きさと電流の方向が周期的に変化します。
交流の場合、1秒間に繰り返される同一波形の数を「周波数」といい、単位はヘルツ(Hz)です。
電力会社から送電される日本の電気は、静岡県の富士川を境にして東側が50Hz、西側が60Hzの周波数となっています。

一方、産業機器、民生機器等に使われている電子回路は直流(DC)で動作するようになっています。
中には、モーター機器や白熱電球など、交流電圧でそのまま駆動するものもありますが、最近はモーターとスイッチだけといったような単純な機器はほとんどなく、何らかの電子制御回路が搭載されており、それらはすべて直流電圧で動作しています。

そこで交流を直流に直して、電子回路に適した電圧と電流を供給する装置として、直流電源回路が必要になります。  

図2に電源回路の出力による分類を示します。

電源回路の出力
【図2 電源回路の分類(出力での分類)】

 

図2のように、電源回路は出力で見ると大きく2種類に分けられます。
一般的に出力が交流の電源回路を「インバータ」出力が直流の電源回路を「コンバータ」と呼んでいます。
 

3.インバータとは?

直流を単相交流または三相交流に変換する回路を「インバータ」(Inverter)と呼びます。

インバータがもっとも使われているのがモーター制御の分野です。
オン/オフのような単純な制御に比べて、モーターを駆動する交流の周波数を変えて回転をきめ細かく制御することで省エネなどになるからです。

図2のように、インバータは、さらに電圧型インバータ電流型インバータに分かれます。
インバータの多くは電圧型で、制御形式が色々とあります。

 

4.コンバータとは?

ある直流電圧を別の直流電圧に変換する回路や、交流を直流に変換する回路を「コンバータ」(Converter)と呼びます。
前者を「DC/DCコンバータ」や「DC-DCコンバータ」、後者を「AC/DCコンバータ」や「AC-DCコンバータ」と表記することもあります。

DC/DCコンバータは、直流電源をある回路が必要とする直流電圧に昇圧したり降圧したりするもので、電子機器や家電製品などの多くの機器に搭載されています。

AC/DCコンバータは、例えば、ノートパソコンやスマートフォンの充電に使われるACアダプタです。
AC/DCコンバータは、回路の構成としては、交流を直流にする整流回路にDC/DCコンバータを組み合わせたものとして扱うことができます。

したがって、家庭用コンセントから電源をとる家電製品は、多くがDC/DCコンバータを搭載しているといえるでしょう。
 

5.リニアレギュレータ

図2のように、リニアレギュレータは、「シャントレギュレータ」と「シリーズレギュレータ」に分類されます。

(1)シャントレギュレータ

「シャントレギュレータ」は、負荷と並列に制御回路を入れる方式です。

図3は、シャントレギュレータの動作を示す図です。

シャントレギュレータの動作
【図3 シャントレギュレータ】

図3において、制御回路に流れる電流Icと負荷に流れる電流Irの合計電流が抵抗に流れ、抵抗を通った後の電圧を一定にします。
電源に対する負荷を一定にすることで、電源電圧を安定化します。
このため、無負荷時にも最大負荷時と同じだけ回路電流が流れ、電源回路としての効率は悪くなります
 

(2)シリーズレギュレータ

「シリーズレギュレータ」は、入力と出力の間に直列に制御回路を入れる方式で、出力電圧をモニターしながら出力電圧が一定になるように制御を行います。

図4は、シリーズレギュレータの動作を示す図です。
 

シリーズレギュレータの動作
【図4 シリーズレギュレータ】

 

図4より、可変抵抗(実際にはトランジスタやMOSFET)と負荷が、分圧回路を構成しています。
したがって、負荷電流が可変抵抗にそのまま流れるため、可変抵抗の両端電圧×負荷電流で求められる電力が損失となり、熱となって逃げていきます

 

6.スイッチングレギュレータ

スイッチングレギュレータは、入力電圧をスイッチ素子(パワーMOSFETなどのパワーデバイス)でオン/オフさせてパルス波を作り、最後に出力段で平滑化して出力電圧を得る電源回路です。
オンとオフの比率を変えて出力電圧を制御するのが基本的な原理です。

図5は、スイッチングレギュレータの構成と動作原理を示す図です。

スイッチングレギュレータ図5a
【図5(a)スイッチングレギュレータの構成】

 

図5(a)は、スイッチングレギュレータの構成を示す図で、入力電圧をパワーMOSFETなどのパワーデバイスでオン/オフさせています。出力段でコンデンサなどで平滑化して出力電圧を得ています。制御回路は、出力電圧を検出して最適電圧になるようにオン/オフ期間を調整しています。

スイッチングレギュレータ図5b
【図5(b)スイッチングレギュレータの動作】

 

図5(b)は、パルスの様子と平滑後の電圧の様子を示しています。
オン時間が短いと出力電圧は低くなり、オン時間が長いと出力電圧は高くなります。
このようにして様々な電圧を得ることができます。

また、スイッチングレギュレータは、入力電圧と出力電圧の関係だけに着目すると、次のように3種類に分類されます。
 

(1)降圧型

入力電圧よりも出力電圧が低い電源回路で、スイッチングレギュレータとして一般的です。
図5(a)の回路形式が降圧型です。
 

(2)昇圧型

入力側にインダクタを置いて、スイッチ素子がオンのときにエネルギーをコイルに蓄えておき、スイッチ素子がオフのときにコイルからエネルギーを放出させることで、入力電圧よりも高い出力電圧を得る電源回路です。
高電圧を必要とする液晶パネルやLEDの駆動用として使われています。

図6は、昇圧型のスイッチングレギュレータの構成と動作原理を示す図です。
 

昇圧型のスイッチングレギュレータの構成
【図6 昇圧型スイッチングレギュレータ】

図6において、スイッチがオンの時は、赤色の矢印のように電流が流れ、コイルにエネルギーが蓄積されます。
スイッチがオフになると青色の矢印のように電流が流れ、コイルに蓄えられたエネルギーが入力電圧に上乗せされる形になり、昇圧の形になります。
 

(3)昇降圧型

降圧動作と昇圧動作のいずれにも対応した電源回路で、主に入力電圧が大きく変動するような用途に用いられます。

図7は、昇降圧型のスイッチングレギュレータの構成を示す図です。

昇降圧型のスイッチングレギュレータの構成
【図7 昇降圧型スイッチングレギュレータ】

 

昇圧型スイッチングレギュレータにコンデンサとコイルを追加した形になっています。
昇降圧型では、中央のコンデンサに電荷が充電されることで、この入力電圧分を打ち消して降圧もできるようになります。追加のコイルは、このコンデンサに充電される電圧を安定させるように働きます。

図2で示したように、DC/DCコンバータには、リニアレギュレータとスイッチングレギュレータの2種類がありますが、用途によって使い分けが必要です。

図8は、両者の特徴を比較した表です。

リニアレギュレータとスイッチングレギュレータの比較(電圧の変換/出力電流/効率/ノイズ/設計への負担/部品点数/コスト)
【図8 リニアレギュレータとスイッチングレギュレータ】

 

図8のように、リニアレギュレータとスイッチングレギュレータには、特徴の違いがあります。
最近は、スイッチングレギュレータ用の安価で高性能なICも増えてきており、スイッチングレギュレータが増えてきていますが、ノイズの影響を受けたくないオーディオアンプなどには、リニアレギュレータが使用されています。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)
 

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