【技術者のための法律講座】特許ライセンス契約の実施料(ロイヤリティ)に関する基礎知識

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特許ライセンスのロイヤリティ(実施料)の基礎知識

特許ライセンスの対価(実施料)の基準は?

特許ライセンス契約を締結する際、ライセンサーにとってもライセンシーにとっても最も気になることは、やはり「お金」の話ではないでしょうか?
ライセンス契約における対価(実施料)は、「ロイヤリティ」(royalty)と呼ばれます。(「ロイヤルティ」と記載することもあります)

特許ライセンス契約のロイヤリティは当事者間の交渉によって決められますが、特許の価値、実施権の種類(専用実施権か通常実施権か、独占か非独占か)、技術分野、関連する市場の動向や今後の事業展開などによって大きく変動します。
学説や一般慣行では利益の4分の1、利益の3分の1、又は売り上げ(正味販売額)の3~5%とする考えもあるようですが、例えば医薬品やバイオの分野では、売上の十数%というケースもあるようです。
 

実施料の支払い方法の種類は色々ある

実施料の支払方法も様々です。

例えば、

  • 売上の一定割合を支払うランニング・ロイヤリティ方式(売上基準/数量基準で繰り返し支払い)
  • 定額方式(オールオーバー方式)
  • 一括払い(ランプサム、”Lump‐Sum Payment”)

などがあります。

ランニング・ロイヤリティ方式の場合、[頭金(イニシャルペイメント)+ ランニング・ロイヤルティ]が基本ですが、特に独占的ライセンスの場合は、最低実施料(ミニマムロイヤルティ)を規定することが多いようです。

ランニング・ロイヤリティの計算方法も様々ですが、

  • 実施品の販売総額×実施料率(料率法, Percentage Royalty)
  • 実施品の販売個数×1個あたりの実施料(従量法, Per Unit Royalty)

によって算定する方法やこれらの組合せによって算定する方法があります。

このように販売実績によってランニング・ロイヤリティによって算定する場合、ライセンシーは販売数量を開示する必要がありますので、その旨を契約書に規定する必要があります。
 

特許ライセンス契約のロイヤリティに関する検討事項

特許ライセンス契約の実施料に関する問題は多種多様ですが、契約書の起案や交渉時における主な検討事項を列記します。

  1. 対価の支払対象 (Royalty Base)は何か?
    たとえば部品についてライセンスが許諾されている場合、製品全体を対象とするのか、部品部分とするのかなどを明確にする必要があります。
  2. 独占的実施権の場合、最低実施料 (Minimum Royalty) が設定されていることが多いが、その基準をどうするのか?
    また、最低実施料が設定されている場合は、ライセンシーからの解約要求とその場合の残存期間中の最低実施料負担についても検討事項となるでしょう。
  3. 許諾特許(Licensed Patent)が無効になった場合、それまでに支払った対価の返還はどうするのか?
  4. 許諾特許の実施が他人の特許の侵害となることが判明した場合の対価の支払中止または減額の仕方は?
  5. ライセンシーの改良技術をグラントバック(Grant Back)する場合の対価の額と支払・受取方法は?
    「グラントバック」とは、ライセンシーが許諾技術をもとに改良技術を創出した場合に、ライセンサーに対してその改良技術の実施許諾をすることです。なお、グラントバックは、契約の条項のあり方によっては不公正な取引として独占禁止法上の問題となる可能性がある点に注意が必要です。
  6. 許諾特許が複数ある場合、対価の計算方法をどうするのか?
    たとえば、一つの製品の製造に複数の特許が関係する場合の取り扱いを考える必要があります。
  7. 対価の支払通貨は何か?
  8. 税金の処理(二重課税防止)はどうするのか?
  9. 会計記録とその監査はどのように行うのか?

 
このように、特許ラインセンス契約のロイヤリティに関する実務上の問題は複雑であり、契約交渉にあたって軽率な判断は禁物です。
ライセンス契約の成否は、中長期的に自社の事業活動に大きな影響を与えてしまう可能性もあります。
社内の法務・知財部門の契約担当者や弁護士など外部の専門家に相談したうえで、自社にとってのベストな対応(落としどころ)は何かを十分に検討しましょう。
 
 
(日本アイアール株式会社 A・A)
 


<参考文献>

  • 石田正泰 著『知的財産契約実務ガイドブック 第3版』発明推進協会、2017

【日本アイアールの知財セミナー】ライセンス契約のロイヤリティに関するセミナー情報
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