【機械製図道場・上級編】機械要素「キー」と「キー溝」の製図を学ぶ!

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機械は、多くの「機械要素」から構成されています。
「機械要素」とは、色々な機械の中で共通的な役割を果たす部品のことをいいます。

本連載コラムの初級編 「ねじ」の表示方法 で解説している「ねじ」も機械要素の一つです。

今回は機械要素の一つである「キー」と「キー溝」の製図方法について学ぶことにします。

1.機械要素「キー」とは?

機械要素の「キー」は、軸と、軸に取付くボス(継手、歯車、スリーブ類などの要素部品)を連結して、軸からボス側へ、あるいはボス側から軸へ、動力を伝えるためのものです。

キーには、「平行キー」「半月キー」「こう配キー」などの種類がありますが、最も広く使用されているのが「平行キー」です。

平行キーは一般的に、軸と穴の両方にキー溝を設けて取り付けます。
これを「沈みキー」といいます。トルクを確実に伝達できるので、回転機械に良く用いられます。
軸の外周と、ボスの内周の両方にキー溝を加工して、軸側のキー溝にキーを挿入しておいてからボスを挿入して取付けます。
キーとキー溝はJIS B1301に寸法、寸法公差、キー溝底Rなどが規定されています。

平行キー自体は、[幅x高さx長さ(bxhxl)]、両端の形状(両丸、両角、片丸)を指定すれば、形状と寸法を規定して購入することができますので、規格品を使う限り、特に製図は必要ありません

 

2.キー溝とその製図

「キー溝」は、軸あるいは、軸に取り付くボスに設ける溝であって、部品図中にその形状・寸法を製図する機会も多いので、ここではキー溝の描き方について解説と例題演習を行いたいと思います。

(1)穴側のキー溝(左図)

加工時や検査時に測りやすいので、通常はキー溝の深さを、左側のようにキー溝と反対側の穴内径からキー溝の底までの寸法で表します
ただし、必要な場合は右側のように内径線との交点で現われる溝深さで表示することも可能です。

 

(2)軸側のキー溝

加工時や検査時に測りやすいので、キー溝の深さを、キー溝と反対側の軸外径からキー溝の底までの寸法で表します
軸は通常断面で表すことはしませんが、キー溝が軸端から抜けていない場合は、断面をとってキー溝を表します。

軸側のキー溝
 

では、キー溝の製図方法について簡単な例で演習してみましょう。

 

【例題】キー溝の製図

《 問題 》

図のようなシャフトのキー溝を、寸法公差、表面形状を含めて製図してください。
ただし、キー溝以外の寸法は記入不要です。

機械要素例題

 

《 解答 》

解答例はここをクリック

機械要素解答1

 

《 例題の解説 》

解説はここをクリック

キー溝が4か所、異なる方向に配置されています。
右側から見た矢視断面で、4つのキー溝を表示して、寸法、公差、表面形状を記入します。

A部、C部のようにキー溝形状がわかりにくい場合は、局部投影図を利用して端部の丸み形状を表示します。
キー溝の形状および寸法は、JISB1301の規定に従います。

キーの呼び寸法(幅x高さ)は、適用する軸径の範囲が定められているので、軸径に応じて選択します。
キー溝深さは、JISB1301に規定するt1寸法を軸径から引いた値に、t1の許容差を考慮して設定します。キー溝幅の公差N9はJIS表の並級を採用しています。

溝底の半径は、規定の範囲内の小数点以下1桁の数字としましたが、できれば一つに統一したほうが、加工に使う切削工具(バイト)の準備上は有利です。
キー溝長さの公差は、キーが確実に溝に入るようにするため普通公差の範囲でマイナス側をゼロとします。両端はキー溝が抜けているので下をゼロとしました。
キー溝の表面粗さは、一般的に適用されるRa3.2(旧JIS▽▽)としました。

下表は、JISB1301の抜粋です。参照してください。
 
機械要素解説

 

【関連知識】出来るだけ標準機械要素を活用することが重要!

機械要素を最初から設計しようとすると、大変な労力(時間)と費用がかかります。
そこで、機械要素の寸法、精度、材料、強度などに関する規格が制定されており、設計者は規格やメーカーのカタログに記載されている標準品の中から、設計仕様に合う機械要素を選択するようになっています。

標準外の機械要素を発注すると、製作するための治具や型から作る必要があり、コストアップに繋がります
たとえばキーの長さをとっても、JISB1301には選択可能な寸法が掲載されているので、キーの強度を確認したうえで、この中から選ぶようにします。
材料についても、標準外の特殊材を指定すると調達コストがかかります。

したがって、標準機械要素を上手く活用することはとても重要です。

また、機械の全機構やシリーズ・機種など製品群全体を見通して機械要素の共有化を図ることも、設計合理化と数量メリットによるコストダウンの観点で価値があります。
 

[※関連コラム:標準化とコストダウン(標準数適用、市販部品活用のメリット)もご覧ください。]

 
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)

 

 

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