- 機械製図「ドラトレ」シリーズ
【10月期】2024/10/21(月)10:00~17:00
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前回の当連載では、“JIS B0001″「機械製図」の規定による寸法表示の原則のうち、いくつかについて解説し、例題演習を交えて学びました。
今回は、その続きの解説と、JISの規定以外で寸法記入上注意したい点について、解説と例題演習を行います。
目次
別の連載コラムシリーズである機械設計マスターへの道・『手書き図面はこれからも必要』の中で、基準形体からの寸法記入例を紹介しています。
その例における寸法記入は「並列寸法記入法」と呼ばれる記入法ですが、もう一つ「累進寸法記入法」というものがあります。
「累進寸法記入法」は、基準形体から表示すべき寸法が多数におよぶとき、寸法線を1本で表すことができるので便利です。
【累進寸法記入法と並列寸法記入法】
基準とする面や点を示す必要がある場合は、下図のように基準を記入します。
基準が穴中心である場合、図のように中心点から引出し線を出します。
原則として、寸法を複数の投影図に重複して表示することは避けます。
ただし、図をよりわかりやすくするためなどの理由によって同じ寸法を複数の投影図に表示する場合は、重複する寸法の前に黒丸をつけて、図面内に重複であることを注記します。
ここから下の記載については、”JIS B0001″の寸法記入方法に関する規定以外の内容となりますが、わかりやすい寸法記入のための注意事項をいくつか補足として説明します。
寸法が、数か所隣接して並ぶ場合、寸法線を一直線に揃えるようにします。
当連載・初級編の「寸法表示の基本を押さえる!」の”関連知識”(寸法補助線を使うと紛らわしくなる場合は?)の章でも解説しましたが、寸法は寸法補助線で引き出して、寸法数字を表示するのが原則です。
特に、横方向・縦方向の寸法を両方外形線内に配置すると寸法数字が読みづらくなるので、外へ出すようにします。
同じく、「寸法表示の基本を押さえる!」の中で、寸法補助線を使うとかえって紛らわしくなる場合に、外形線の間に直接寸法線を引いて寸法数字を記入する例を紹介しました。
ここでは補足として、細長いシャフトのような場合に、寸法をわかりやすく表示する方法を紹介します。
例えば、板に異なる穴径の穴が多数配列される場合などは、座標と記号を用いて表形式で寸法表示することで、見やすくスッキリさせることができます。
下図の品物は、右端面が基準形体です。寸法表示方法を修正してください。
図面に基づいて製作された品物には、図面指示寸法との間に、ある誤差が生じます。
そこで、機械がその機能を発揮するために許容できる誤差範囲を決めて表示します。
これを「公差」といいます。
基準形体からの寸法表示とすることの利点は、累積誤差を最小化できることです。
例題の寸法表示とした場合は、各寸法公差が0.5であるとすると、一番奥の段付き部までの寸法150に対して累積で最大0.5x3=1.5の誤差が生じる可能性があります。これを基準形体からの寸法表示とすることで、最奥までの寸法150の誤差も同じ0.5に押さえることができます。
ということで、数回にわたって様々な寸法表示について解説と演習を行ってきました。
寸法記入の要領と注意点を一通り理解することができたと思います。
次回からは、「公差」についての解説に入ります。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)