【機械設計マスターへの道】周波数応答とBode線図 [自動制御の前提知識]

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自動制御

前回コラムでは、自動制御を理解する上での前提知識として「過渡応答」についてご説明しました。

今回は、周波数応答とBode線図について解説します。

1.周波数応答と周波数伝達関数

線形で安定した制御系に、振幅A、角周波数ωの純正弦波 y(t)=Aejωt が入力として与えられたとき、過渡的には乱れが生じても、系が安定していれば、過渡成分は消滅して、応答出力は入力と同じ周波数の正弦波となって、振幅と位相が周波数に依存して異なる特性となります。これを「周波数応答」といいます。

周波数応答を解析するとき、sをjωで置き換えた伝達関数G(jω)を用います。
G(jω)のことを「周波数伝達関数」といいます。
入力と出力の関係は図1のようになります。

周波数応答(入力と出力の関係)
[図1 周波数応答]

 

2.周波数特性とゲインおよび位相

周波数伝達関数をG(jω)、入力を Aiejωt とすれば、

周波数特性とゲイン・位相

ここで Ao/Ai は入出力の振幅比、ψ は位相ずれを示します。

入力正弦波の角周波数ωを変えると、出力正弦波の振幅Aoおよび位相ずれψが変化し、振幅比と位相ずれはωの関数となります。

G(jω)は、ωの複素関数であることから
G(jω) = Re(ω)+j Im(ω) = |G(ω)|∠G(jω)

したがって、次のようになります。
周波数特性とゲイン

振幅比|G(ω)|のことを「ゲイン」と呼びます。
ゲインと位相ずれを角周波数ωの関数として表したものを「周波数特性」といいます。
 

3.1次おくれ要素、振動系2次要素の周波数特性

(1)1次遅れ要素

一般化した1次おくれ要素の伝達関数
一般化した1次おくれ要素の伝達関数
においてs=jωとおき、共役複素数を用いて分母を有理化すれば

1次おくれ(共役複素数を用いて分母を有理化)

よって、次のようになります。
1次おくれ要素(ゲインと位相)
 

(2)振動系2次要素

一般化した振動系2次要素の伝達関数
一般化した振動系2次要素の伝達関数
において、s=jω、ωT=uとおいて、1次おくれ要素と同様に整理すれば、次のようになります。

振動系2次要素(ゲインと位相)
 

4.Bode線図

周波数応答を図に表す方法として、よく使われるものに「Bode線図」があります。
角周波数ωを横軸に対数目盛でとり、
ゲインを対数量 20log10|G(jω)|(dB)で表して、位相ずれ(度)とともに縦軸にとった線図を「Bode線図」といいます。

Bode線図は、次のような利点(メリット)があります。

  • ゲインを対数量で表すため、要素の積を代数和で求めることができて、複数要素の組合せ特性を求めるのにも便利
  • 対数目盛を用いるので、広範囲の周波数に対応できる

1次おくれ要素と、2次おくれ要素のBode線図は図2,3のような特性となります。

1次おくれ要素のBode線図
[図2 1次おくれ要素のBode線図]

 

振動系2次要素のBode線図
[図3 振動系2次要素のBode線図]

 

5.一巡伝達関数とゲイン余裕

当連載のコラム「伝達関数とブロック線図」の回で解説したフィードバック接続のブロック線図において、
制御対象伝達関数G1(s)とフィードバック伝達関数G2(s)のsを
jωで置き換えたとき、G(jω) = G1(jω)・G2(Jω) を「一巡周波数伝達関数」といいます。

図4のように一巡周波数伝達関数の周波数特性をBode線図で表したとき、ゲインが1(0dB)となる角周波数において、位相が-180°に対してどれほど余裕があるかを示す値を「位相余裕」といいます。また、位相が-180°となる角周波数において、ゲインが1(0dB)に対してどれほど余裕があるかを示す値を「ゲイン余裕」といいます。系が安定であるためにはゲインが1.0(0dB)以下である必要があり、ゲイン余裕が大きいほど安定性が増します。

ゲイン余裕と位相余裕
[図3 振動系2次要素のBode線図]

 

以上、今回は周波数応答とBode線図についてご紹介しました。

次回は、プロセス制御によく用いられるPID制御について解説いたします。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)
 

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