- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
お問い合わせ
03-6206-4966
前回コラムでは、自動制御を理解する上での前提知識として「過渡応答」についてご説明しました。
今回は、周波数応答とBode線図について解説します。
線形で安定した制御系に、振幅A、角周波数ωの純正弦波 y(t)=Aejωt が入力として与えられたとき、過渡的には乱れが生じても、系が安定していれば、過渡成分は消滅して、応答出力は入力と同じ周波数の正弦波となって、振幅と位相が周波数に依存して異なる特性となります。これを「周波数応答」といいます。
周波数応答を解析するとき、sをjωで置き換えた伝達関数G(jω)を用います。
G(jω)のことを「周波数伝達関数」といいます。
入力と出力の関係は図1のようになります。
[図1 周波数応答]
周波数伝達関数をG(jω)、入力を Aiejωt とすれば、
ここで Ao/Ai は入出力の振幅比、ψ は位相ずれを示します。
入力正弦波の角周波数ωを変えると、出力正弦波の振幅Aoおよび位相ずれψが変化し、振幅比と位相ずれはωの関数となります。
G(jω)は、ωの複素関数であることから
G(jω) = Re(ω)+j Im(ω) = |G(ω)|∠G(jω)
したがって、次のようになります。
振幅比|G(ω)|のことを「ゲイン」と呼びます。
ゲインと位相ずれを角周波数ωの関数として表したものを「周波数特性」といいます。
一般化した1次おくれ要素の伝達関数
においてs=jωとおき、共役複素数を用いて分母を有理化すれば
よって、次のようになります。
一般化した振動系2次要素の伝達関数
において、s=jω、ωT=uとおいて、1次おくれ要素と同様に整理すれば、次のようになります。
周波数応答を図に表す方法として、よく使われるものに「Bode線図」があります。
角周波数ωを横軸に対数目盛でとり、
ゲインを対数量 20log10|G(jω)|(dB)で表して、位相ずれ(度)とともに縦軸にとった線図を「Bode線図」といいます。
Bode線図は、次のような利点(メリット)があります。
1次おくれ要素と、2次おくれ要素のBode線図は図2,3のような特性となります。
[図2 1次おくれ要素のBode線図]
[図3 振動系2次要素のBode線図]
当連載のコラム「伝達関数とブロック線図」の回で解説したフィードバック接続のブロック線図において、
制御対象伝達関数G1(s)とフィードバック伝達関数G2(s)のsを
jωで置き換えたとき、G(jω) = G1(jω)・G2(Jω) を「一巡周波数伝達関数」といいます。
図4のように一巡周波数伝達関数の周波数特性をBode線図で表したとき、ゲインが1(0dB)となる角周波数において、位相が-180°に対してどれほど余裕があるかを示す値を「位相余裕」といいます。また、位相が-180°となる角周波数において、ゲインが1(0dB)に対してどれほど余裕があるかを示す値を「ゲイン余裕」といいます。系が安定であるためにはゲインが1.0(0dB)以下である必要があり、ゲイン余裕が大きいほど安定性が増します。
[図3 振動系2次要素のBode線図]
以上、今回は周波数応答とBode線図についてご紹介しました。
次回は、プロセス制御によく用いられるPID制御について解説いたします。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)