「計装」とは?計装技術の専門家が必須前提知識を解説!
「計装」とは、「計器装備」を語源とした技術のことです。
あまり聞きなれない単語だと思いますが、その歴史は古く、戦後の石油化学工業の発展と共に成長した技術です。今回は「計装」に携わる人なら絶対に押さえておきたい基礎知識をわかりやすく解説します。
目次
1.「計装」の意味って何?
計装は「計器を装備する」ということになりますが、現在は以下に記したことが計装と言えるでしょう。
- 工場やプラントやビルなどの設備の安全面も考慮された機能の計画と設計
- 機能を満足するための計器や機器の選定と調達
- 機能を満足するための各詳細設計
- 各詳細設計にもとづいた機能を実現するシステムの開発
- 計器と機器とシステムの実装
- 設備の試運転調整と設備操業後の保守
(*機能≒自動制御)
2.計装技術には何があるの?
計装は意外に守備範囲が広いことがお分かりになったと思いますが、では、計装技術には具体的に何があるのか説明いたします。
(1)計画と設計
「P&ID」(ピーアンドアイディー)という設備の基本設計図から計装設備の機能を抽出・検討します。
そして、計器や機器の選定とシステムを設計します。
(2)調達と開発
選定した計器やシステムを構成するための機器を調達します。
そして、調達した機器を組み合わせてシステムを開発します。
(3)実装
調達した計器や機器、開発したシステムを現地に実装します。
なお、実装では、他の技術(配管や電気設備など)の実装も同時に行うため、協調して作業をすることが計装技術者には求められます。
(4)保守
設備操業後に計装設備の保守を行います。
「計器キャリブレーション」というものを行います。
3.計器で何を測定するの?
例えば、ある化学反応のプロセスを管理するのに、反応温度や反応圧力の情報が必要になります。
これらを温度計と圧力計で温度と圧力を測定します。
このように設備のプロセス状態や稼働状態を計器で測定します。
計器は、例えるなら人間の目や皮膚に相当します。
温度計と圧力計以外にも、流体の積算流量や瞬時流量を測定する流量計、タンク内の液体や粉体の量を測るレベル計、液体のpHやTOCを測定する計器など、多種多様な計器が存在します。
4.計器信号はアナログ、デジタル?
ところで、計器の測定値はアナログ、デジタルのどちらでしょうか?
正解は両方です。
古くはアナログ計器から始まり、現在は設備の状態をコンピューターで監視するため、電子計器からのアナログとデジタルの測定信号を、PLCやコンピューターで受信します。
基本は4~20mADCの電流信号ですが、近年は「HART」(ハート)というスマート通信の方式で、4~20mADCアナログ信号に交流デジタル信号を重畳させて測定値以外に測定点番号、測定名などの情報も通信できるようなシステムが市場に導入されてます。
なお、計器信号は、人間に例えるなら神経信号と言えるでしょう。PLCやコンピューターは脳ですね。
5.計器信号から何を制御するの?
人間は、目で見たもの、皮膚で感じたものの情報が神経を通り脳に達して、手足を動かします。
設備では、計器信号の情報からPLCやコンピューターが判断して、調節弁や自動弁やポンプなどの計器や機器を制御します。温度や圧力の現在の値と目標とする値の差から「PID制御」という制御方法で、調節弁という開度を調節できる弁を開閉します。
例えば、お風呂の湯船に入ったお湯を手で触ると熱かったので、蛇口を調節しながら水を入れてお湯の温度を調整する。これを計装システムが自動的に行う(自動制御)ということです。
6.計器信号は信頼できるの?(計器キャリブレーション)
ところで、計器信号は本当に信頼できるのでしょうか?
本当は50℃なのに、計器が80℃と計測していたら事故が起きる可能性があります。
計器の測定値が正しいことを検証するために、「計器キャリブレーション」というものを実施しなければなりません。
国家標準の標準器にトレースできる基準の計器と、キャリブレーション対象の計器を比較して測定値が正しいことを確認します。
人間に例えるなら、病院で目の検査を受けて視力の確認をするということになります。
(※この記事は、阿部計装技術士事務所 阿部修一講師からのご寄稿を、当研究所が再構成したものです。)