ヒューマンエラーを防ぐ!工場の安全推進活動のポイント《ヒヤリハット活動と危険予知》
今回のコラムでは、工場・製造現場等における事故の多くを占めるといわれる「ヒューマンファクタ」と安全推進活動について取り上げます。
目次
1.ヒューマンファクタ
今日、事故の大半は、人の行動に起因するヒューマンエラーによるものと言われます。
機械や設備の技術進歩、巨大化、自動化に伴い、機械故障など未知現象による要因よりもヒューマンエラーが占める比率が次第に高まっていったと考えられています。
以下、ヒューマンエラーによる機械や設備のミスオペを防止するための安全管理についてご紹介します。
(1)ヒューマンエラー
人間は、ある行動をするとき、自身の持つ知識・経験をもとに、外界状況を認識判断して意思決定しますが、この過程で次のような誤りをすることがあります。
- 認知ミス・・・技術・知識の欠如、見聞違い
- 判断ミス・・・考え違い、思い込みなど
- 意思決定ミス・・・迷いなど
- 行動エラー・・・技能未熟、勘違いなど
これらを称して「ヒューマンエラー」と言います。
(2)背後にある要因
ヒューマンエラーが生じる要因として、個人の資質や、心理状態の他にも、次のような周囲との関わりに起因する要因が挙げられます。
- 上司、部下、同僚など周囲との人間関係
- 設備との関わり
- 作業基準や連絡方法
- 労務管理、教育など総合的な管理
したがって、ヒューマンエラー(ミスオペ)を防止するためには、作業環境整備(騒音・振動・照明・作業空間・悪臭などへの配慮)、作業時間の適切な配分、作業者への適切な教育、などが必要となります。
(3)ヒューマンエラー防止のために
ヒューマンエラーによるミスオペを防止するためには、次のような考え方を常に認識することが大切です。
- 完全な安全など存在しない、常に危険と隣り合わせ
- 安全への日頃の努力を怠ると、事故はすかさず起きる
- 安全は一人一人が力を合わせて作り出すもの
- 失敗例から学ぶ
また、事故や労働災害は、単一要因で発生することは少なく、大半は複数の要因が重なったときに発生する、といわれています。
下図のように、ヒューマンファクタ―と、設備・環境側の両面から考え、常に改善していくことが重要です。
2.主な安全推進活動の手順とポイント
(1)ヒヤリ・ハット活動
日常業務の中で「ヒヤリ」としたり、思わず「ハット」したりした経験をお互いに報告し合って共有し、全員の経験として注意を喚起する活動です。
生産活動や研究活動の中で、ふだんと異なるちょっとした異常に遭遇することがしばしばあります。
それらのちょっとした異常(変化)が思わぬ大発見につながったり、あるいは重大事故の原因となったりすることがあります。
事故以前の「ヒヤリ・ハット」現象を集計・分析して、顕在化する事故の未然防止を図ろうとする活動です。危険に対する意識を高めるためにも有効です。
《ヒヤリ・ハット活動の手順》
- 事例情報の把握(重大事故に至らなかったヒヤリ・ハット経験を放置せず共有)
- 問題点の分析(ヒヤリ・ハット事例から、そこに潜む危険性を抽出)
- 対策方針の決定
- 実施計画の立案
- 計画の実施
- 結果の確認と評価
(2)危険予知(KY)
作業に際して潜在的な危険に対して高い感受性を有し、正しい判断のもとに安全な作業を行う能力を開発するための危険予知訓練(KYT)と、これを応用して、日常の職場において短時間で実践できる危険予知活動(KYK)を定着させることが広く展開されています。
危険予知訓練を進めるには、市販の危険作業イラストを使用して、まず危険予知の体験学習をすることが基本となります。
KYTは下表のように4段階で、議論を進めます。
危険予知訓練(KYT)では、第1R第2R(どんな危険がひそんでいるか、これが危険のポイントだ)が特に重要です。
《第1Rにおける危険の捉え方と表現の仕方のポイント》
- 1)イラスト中の作業者になりきる:
自分が作業するつもりで考えます。 - 2)危険を“危険要因”と“現象”の組合せで表現する
- 3)現象は、発生しうる事態の形で言い切る:
「~かもしれない」「~の危険がある」「~の恐れがある」という表現ではなく、「~する」などズハリとした表現にします。 - 4)“危険要因”は“不安全行動”と“不安全な状態”の組合せで表現する
- 5)危険要因を掘り下げる:
なぜそうなるのか、という要因を一緒に表します。
例:「ぐらつく」→「身を乗り出したのでぐらつく」 - 6)危険要因は具体的に表現する:
例:「無理な姿勢なので」(抽象的) → 「中腰なので」(具体的) - 7)危険要因は、対策を思い浮かべずに表す:
例:「保護メガネをしていないので」(対策案ありき)→「顔を近づけたので」(危険要因のなかみがわかりやすい)
KYTは訓練、KYKは実践活動ですが、職場のKYKを高いレベルにしようとすれば、当然そのための日々の訓練KYTも必要です。
したがって「ここまでが訓練で、あとは実践活動」というように明確に区別するものではありません。
なお、当研究所では製造現場向けの安全教育に関する教材も提供しております。ぜひ皆様の安全向上に役立ててください。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)