3分でわかる フェライトビーズとは?ノイズ対策の原理と使い方・選び方
今回のコラムは、電子回路のノイズ対策部品である「フェライトビーズ」について説明します。
目次
1.電子回路のノイズ対策用部品「フェライトビーズ」
電子回路を構成する部品のなかに、「フェライトビーズ」という部品があります。
主に伝送路に載ってくるノイズを除去するための電子部品で、名前の通り、フェライトをビーズ状にした形状になっています。
【図1 フェライトビーズの形状】
図1のような形状で、図のようにリード線を貫通させて使用することが多いです。
2.フェライトビーズの基本
(1)フェライトビーズとは?
まず、「フェライト」とは、主原料である酸化鉄に他の金属酸化物や微量添加物を加えた粉末原料を、混合・成型・焼成してつくられる磁性セラミックスです。これをビーズ状にしたものが「フェライトビーズ」です。
フェライトは、金属磁性材料の一つで、電気的に抵抗率が極めて高いという特徴があります。
[※フェライトについての解説はこちらのコラムをご参照ください]
(2)フェライトビーズによるノイズ対策の原理
上記図1のリード線に電流が流れると、フェライトビーズの内部に磁束が発生します。
その結果、フェライトビーズはインダクタとして機能します。
ちなみに、ここで使用しているフェライトは高周波での損失が大きい材料で作られており、高周波域では電流のエネルギーがフェライトでの損失として失われる(熱になる)ため、高周波であるノイズを吸収することができます。等価回路を考えると、フェライトビーズは、インダクタと抵抗を直列に接続した構成になります。
すなわち、フェライトビーズは、インダクタンス成分と抵抗成分を併せ持ち、低周波領域では主にインダクタンス成分が機能してノイズを反射し、一方、高周波領域では、主に抵抗成分が機能してノイズを吸収します。
この機能が切り替わる周波数を「R-Xクロスポイント」と呼び、これはフェライトの材質によって大きく異なっています。
3.フェライトビーズの役割(ノイズ除去のイメージ)
フェライトビーズの役割は、ノイズを吸収することですが、その様子をみてみましょう。
図2は、ノイズが重畳されたパルスがフェライトビーズを通過することによって、ノイズが除去された様子を示しています。
【図2 フェライトビーズによるノイズ除去のイメージ】
フェライトビーズは、元の信号波形を保ちノイズだけを除去することができます。
フェライトビーズは、低周波領域ではインダクタとして機能するので、ノイズを反射します。
さらに、抵抗分が高周波成分を熱に変換するためにこのような効果が得られるのです。
4.フェライトビーズの使い方・選び方
図3は、フェライトビーズをICの入力ポートに挿入した例です。
図のようにフェライトビーズを外部からの信号線に直列に挿入することによって、信号線に重畳されるノイズを取り除くことができます。
【図3 フェライトビーズの利用例(ICの入力ポート)】
フェライトビーズは、特定範囲の周波数成分を除去できるのみで、広帯域のローパスフィルターのようには機能しません。
不要な周波数成分が抵抗成分を示す帯域内にあるフェライトビーズを選択する必要があります。
フェライトビーズには、様々な周波数-インピーダンス特性があり、適切な選択が必要です。
信号の周波数にもよりますが、必要な信号が減衰しないように注意しながら選択します。
また、直流抵抗が高いと、消費電力が大きくなるとともに信号レベルを低下させるので、直流抵抗はより低いことが望まれます。
近年のフェライトビーズの動向
近年、電子部品の小型化要求とともに、フェライト素体の中に積層工法などでコイルを形成した構造のチップビーズが使用されるようになりました。中空構造ではありませんが、当初のビーズという名前を受け継いでいます。「チップフェライトビーズと」いう名称の部品が多く使用されるようになってきました。
形状も、プリント基板に表面実装可能な形状のものが製品化されています。スマートフォンなどには、0.4mm×0.2mmの超小型のものも使用されています。
電子部品が多く使われるようになってきた自動車にも、ノイズ対策部品として多く使用されています。
今後もフェライトビーズは、活用例が増えていくと思われます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)