- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
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今回は、電気を取り扱うときに、最も注意すべき電気安全について説明します。
現在では、電気がなければ、人々の生活が成り立たなくなっています。ひとたび停電すると、テレビも冷蔵庫もエアコンも使用できなくなり、一気に生活が困難になってしまいます。
今回は、この生活に不可欠な電気の安全について考えます。
そもそも、電気とは何でしょう?
すべての物質は原子からできています。原子はプラスの電気を持っている原子核のまわりをマイナスの電気を持っている電子がまわっています。
原子核は陽子と中性子からできています。外をまわる電子とこの陽子が同じ数で中性になります。いつもは、原子核のまわりをまわっている電子が刺激を受けることで電子は原子核のまわりの軌道から飛び出してしまいます。この飛び出した電子のことを自由電子といい、この自由電子が動くことを「電気」といいます。
そして、電線の中を自由電子が移動すれば、それが電気の流れ=「電流」となるのです。
電流とは電子の移動なのです。
電子が移動する(電流が流れる)ためには、高さの差が必要となります。この高さの差を「電位差」と呼びます。これは、電流を流すための力「電圧」となります。
電気の安全で最も気になるのが感電ではないでしょうか。
感電とは、電流が人体に流れて衝撃を受けることです。冬場にドアノブに触れたときや、衣類を脱いだときに「パチッ」となる静電気も感電の一種です。
感電の危険度を決めるポイントは3つです。
これらによって人体に及ぼす危険度が変わります。
感電で重要なのは、”電圧の大きさ”ではなく”流れる電流の大きさ”なのです。
(電圧がかかっても、電流が流れなければ感電しません)
従って、ほんの小さな電圧でも人は死ぬ可能性があります。
よく言われているのが、42Vの電圧、通称『死にボルト』です。
100Vの半分くらいの電圧でも、人間は死ぬ可能性があるということになります。
個人差がありますが、感知電流(人がビリビリ感じる電流)は1mA程度と言われています。
皮膚の抵抗は、1kΩほど(濡れると数百Ωオーダーに減少します)と言われていますので、場合によっては10Vほどで感電します。
また、筋肉がうまく動かなくなる付随電流は、20mAほどと言われていて、家庭用100Vでも自力で脱出できなくなるような感電が起こり得ます。このくらいの電流であっても長時間身体に流れると重大な障害や命の危険があります。50mAを超える電流が心臓を流れると、心室細動を起こし、死に至る可能性がかなり高くなります。ですので、さわっても感電しないのは、乾電池の電圧くらいまでということになります。
図1に電流値と人体への影響を示します。
電流値 | 人体への影響 |
1mA | 感じる程度 |
5mA | 痛みを覚える、人体に悪影響を及ぼさない最大の許容電流値 |
10mA | 我慢できない |
20mA | 痙攣、動けない |
50mA | 非常に危険 |
100mA | 致命的 |
[図1 電流値と人体への影響]
感電は危険なので、しっかりと対策をしておかなければいけません。
ここでは、感電を防止するための方法をいくつか示します。
電位差がある2点間が、抵抗が小さい導体(例えば、電線)で接続されるのを「短絡」といいます。
短絡は「ショート」ともいいます。
オームの法則により「V=RI」です。つまり、電圧は電流と抵抗値を掛けたものになります。
これを変形すると「I=V/R」で、この式から分かることは、抵抗が小さくなればなるほど電流の値は大きくなるということです。抵抗は「遮るもの」ですから、遮るものが少なくなれば電流の値が大きくなるのは簡単にイメージできると思います。
短絡が起こると、短絡電流による火災や、短絡電流によって電気設備が故障するなどの被害が起こることがあります。
そのため、一般住宅などでは、短絡が発生した場合には配線用遮断器などの遮断器で回路を遮断し、短絡電流が流れ続けないようにしています。
漏電とは、電気が本来通るべきルートをはずれて流れる(漏れる)現象をいいます。
電気は電線・ケーブルなどの電気を通しやすい物質の中を通り流れています。
そして、これら電線やケーブルは、外に電気が漏れないようにするために、通常、絶縁という電気を通しにくい物質で覆われています。
しかしこの絶縁に傷がついていたり、劣化を起こしていたりすると、正常な電気の通り道(電線やケーブルの内)以外にも電気が流れ出てしまいます。
これが漏電です。漏電すると、感電の危険性がありますし、火災といった深刻な事故の原因となることがあります。
漏電の原因の多くは、「配線もしくは家電製品そのもの」にあります。配線か家電製品が漏電している疑いが高いですから、その場合は、まず問題のある回路を見つけることが重要となります。
しかし、漏電していても電気製品はいつもと変わらず稼働していることも多いため、気づきにくいケースが多いのです。電気使用量がいつもよりも異常に増えていたり、触れるとビリビリと痺れる感覚がある場合は漏電の疑いがあると思ってよいでしょう。
家の電化製品等が漏電していた場合、漏電ブレーカーが落ちることで漏電している事を知ることができます。
接地とは、大地と電気的に接続された状態を指します。
「アース」や「グランド」とも呼ばれます。どちらも大地に由来しています。
接地の目的は、大きく2つに分けられます。
接地には、現在、4種類の接地工事があります。
工事の種類 | 区分 | 接地抵抗値 |
A種接地工事 | 高圧、特別高圧 | 10オーム以下 |
B種接地工事 | 高圧または特別高圧電路と低圧電路とを結合する変圧器の低圧側中性線 | 変圧器の高圧側または特別高圧側の電路の1線地絡電流のアンペア数で150を除した値以下 |
C種接地工事 | 300Vを超える低圧 | 10オーム以下 |
D種接地工事 | 300V以下の低圧 | 100オーム以下 |
[図2 設置工事の種類]
接地の目的から見ると、漏電対策にはC種かD種接地工事、変圧器にはB種接地工事を行います。
上記のような電気の安全に関しては、適切な教育が必要となります。
即ち、労働者が感電する恐れがある場合には、労働安全衛生法第59条第3項で危険又は有害な業務に就かせる時には「特別教育」を行うよう事業者に求められています。
通常、低圧電気関連の業務について、
を行う時には、事業者が感電の恐れがあると判断した場合には特別教育の修得が必要とされ、下記の通り学科教育時間、実技教育時間が定められています。
《学科》
《実技》
この「充電電路」とは、裸線(露出部分等)に触れれば感電する通電の状態です。
「充電電路の敷設若しくは修理の業務」とは、充電電路(活線)状態で電動工具のコードが破線している時に絶縁テープを巻いて修理することなどが含まれます。
また、開閉器等で充電部分が露出した刃型開閉器(ナイフスイッチ)等の操作はこの2.の業務に該当します。
この低圧電気取扱い特別教育は、直流で750V以下、交流で600V以下(対地電圧が50V以下であるもの及び電信用のもの、電話用のもの等感電による危害の生じる恐れがないものを除く)が対象となります。すなわち、扱う電圧が50V以下であれば教育は無くてもよいとも言えます。
また、上記以上の電圧を取扱う場合には、高圧・特別高圧電気取扱い特別教育を修了する必要があります。
低圧電気取扱い特別教育は、安全衛生マネジメント協会、電気保安協会などの外部機関でも実施しています。お近くの機関に相談してみるのもよいでしょう。
また、法律では事業者が実施することになっていますので、社内の「知識と経験が豊かな人」が講師になって教育しても問題ありません。
特別教育の講師については、資格要件は定められていませんが、教育科目について十分な知識と経験を有する人でなければなりません。
会社に適任の人がいない場合、中央労働災害防止協会などの外部機関で実施している「講師育成コース」を受講して講師になることも可能です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)