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2024/12/3(火)9:30~16:30
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ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関では、排ガスをクリーンにすることと、出力、燃費などの目標を同時に達成しなければならなくなった結果、後処理技術を前提とした燃焼技術の開発が必要となりました。
燃焼は吸入空気と噴射燃料により行われますが、このうち燃料噴射にかかわる制御について説明したいと思います。
燃料噴射弁(インジェクタ)からの単位時間あたりの燃料噴射量の時間変化の例をグラフにすると以下図(A)のようになります。
また、図(B)は、燃料噴射における基本的制御変数をまとめたものです。
ガソリンエンジンでは、排ガス規制が厳しくなった時に様々な技術開発がされましたが、最終的に「三元触媒」を使う技術に統合されました。
‘三元’とは、有害排ガス成分の三元素、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)そしてNOx(窒素酸化物)を表すもので、これら三元素を低減するのが三元触媒です。
ガソリンエンジンの燃焼において、出力、燃費と排ガスに影響を与える支配的因子は、吸入空気量と噴射燃料量の比(空燃比)です。
空燃比を、出力と燃費が最適となるように理論空燃比(ストイキオメトリー、ストイキ)とすることが目標となります。
このため、図(B)に示した噴射制御変数の中で噴射量がメインとなります。
空燃比が各運転域で目標値となるように、噴射量のフィードバック制御を行うシステムの例として、燃焼の前後の酸素濃度の変化をセンサで検出し、目標の燃焼が行われている時にあるべき酸素濃度になるように、噴射燃料量の加減を行うというものがあります。
ガソリンエンジンでは、空気と燃料があらかじめ充分混合されたものを点火プラグで着火を行いますが、ディーゼルエンジンでは、噴射時の燃料の霧化により空気との混合を行い圧縮により着火を行わなければなりません。このため、燃料の量以外にも図(B)で示す他の変数の最適化も重要となります。
ディーゼル燃焼で最も特徴的な点は、噴射した燃料が一気に着火して燃えると、窒素酸化物NOxが大量に発生するとともに、燃焼騒音が大きくなることです。
このため噴射する量だけでなく、同一の噴射量でも、どのようなパターン(変化率)で噴射するかの制御が必要になります。以下図(C)に噴射率の影響や効果を示します。
図(C3)は、一回の燃焼に対する噴射を三回に分けて行う多段噴射の例で、噴射のための燃料を常に高圧で保持することのできる「コモンレール」という機構の導入により可能となったものです。
ガソリンエンジンの燃費向上あるいはCO2低減のために従来の吸気管での燃料噴射ではなく、燃焼室に直接噴射させる直噴式ガソリンエンジンの導入が進んでいます。
この場合には空気と燃料の混合を充分に行うために、ディーゼルエンジンと同様に、燃料の霧化特性や噴射率が重要となります。
燃費をさらに向上するために、吸入空気流量割合を多くする希薄燃焼の直噴ガソリンエンジンでは、ディーゼルエンジンの燃焼技術や後処理技術と同様の技術が活用されることとなります。
これは、ガソリンエンジンでも、どれだけの量を噴射するかに加えて、どのように噴射するかという技術が重要になってくることを意味します。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)