化審法の「化学物質の性状等に応じた規制」を整理!第一種特定化学物質、監視化学物質への対応は?

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化審法の解説(化学物質の性状等に応じた規制)

化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)では化学物質の有する性状のうち、「分解性」、「蓄積性」、「人への長期毒性」又は「動植物への毒性」といった性状(場合によっては環境中での残留状況)に応じて、規制等の程度や態様を異ならせています。

今回の連載コラムでは、その「性状等に応じた規制」について、簡単にまとめてみます。
なお、化審法における「化学物資」の用語などの基礎知識は、前回の連載コラム「化審法の基本・要点解説」で解説していますので、そちらをご参照ください。

 

経産省・化審法の逐条解説より
[※出典:経済産業省 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律【逐条解説】
 (P19の「本法の規制等の対象となる化学物質とその性状等」の図を転載)

 

1.「第一種特定化学物質」に関する規制

第一種特定化学物質は、「難分解性」、「高蓄積性」及び「長期毒性」という性質を有するので、ひとたび環境中に排出されると、環境汚染の進行を管理することが困難となり、人の健康や生活環境動植物に係る被害を生じるおそれがあります。
そのため、製造・輸入について許可制にするとともに、環境汚染を生じるおそれのない一定の用途以外の使用を認めない等の厳格な管理を行うこととされています。

まず、第一種特定化学物質は経済産業大臣の許可を受けなければ製造又は輸入を行うことができません。

また、当該用途について他の物による代替が困難である等の特定の場合以外は使用も認められません。
指定されている化学物質は、PCB、DDTなど人への長期毒性が認められているものであり、代替物質への転換などにより事実上新規に製造・使用されることはなくなっています。

さらに、政令で定める製品で、第一種特定化学物質が使用されているものは、輸入が禁止されています。
無制限に輸入されると、その製品の消費や廃棄を通じて環境汚染が生じることも想定されるからです。

第一種特定化学物質の指定の際に、当該化学物質又はそれを使用した製品が既に広く一般に流通している場合であっても、使用されている製品の製造又は輸入の事業を営んでいた者に対して、それらの回収を図ること等必要な措置を取るべきことを命ずることができるとされています。

 

2.「監視化学物質」に関する措置

難分解・高蓄積性と判明し、人の健康又は高次捕食動物への長期毒性の有無が不明である化学物質は、三大臣(厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣)が監視化学物質に指定し、その名称を公示します。

「人又は高次捕食動物への長期毒性」を有する場合には、第一種特定化学物質として指定されますが、こうした長期毒性の有無が判明するまでの間、監視化学物質として一定の監視措置が講じられます。

なお、新規化学物質については、難分解性及び高蓄積性を有すると判明した場合には、引き続き、長期毒性の審査が行われ、第一種特定化学物質に該当するか否かの判定が行われ、長期毒性の有無が明らかになるまでは、製造・輸入が認められないため、「監視化学物質」に該当することはありません。

監視化学物質を製造・輸入する者は、毎年度、経済産業省に対して、製造・輸入実績数量や用途の届出を行わなければならないとされています。
製造、輸入、使用等の状況からみて、環境汚染が生ずるおそれがあると認められる場合には、三大臣は、製造・輸入事業者に対して長期毒性に関する調査を行うよう指示(有害性調査指示)を行い、人又は高次捕食動物への長期毒性があることが判明した場合には、速やかに第一種特定化学物質に指定して、規制を行い、長期毒性がないと判明した場合には、監視化学物質としての指定を取り消します。
 

3.「第二種特定化学物質」に関する規制

「高蓄積性」ではないものの、「長期毒性(人又は生活環境動植物)」を有することが判明した化学物質のうち、相当広範な地域の環境中に相当程度残留している又はその見込みが確実であることから人の健康又は生活環境動植物の生息・生育に係る被害を生ずるおそれのある化学物質は、「第二種特定化学物質」として政令で指定されます。
製造・輸入された化学物質が使用や廃棄を通じて環境中に一定数量以上放出されることにより、環境中の濃度が人や動植物への被害が生ずるレベルに達することがありうるためです。

なお、優先評価化学物質について有害性調査指示を行った結果、人又は生活環境動植物への長期毒性が判明する場合、第二種特定化学物質に指定されることとなります。

主務大臣(事業所管大臣)は、環境汚染を防止する観点から、第二種特定化学物質又は政令で定める製品で第二種特定化学物質が使用されているもの(第二種特定化学物質等)を取り扱う事業者がとるべき措置を技術上の指針として公表するとともに、第二種特定化学物質等の容器、包装等に環境汚染を防止するための措置等に関して表示すべき事項を定めます。

製造・輸入者は、第二種特定化学物質の製造・輸入予定数量/実績数量、第二種特定化学物質が使用されている政令で定める製品の輸入予定数量/実績数量等について、経済産業大臣に届け出る必要があります。

 

4.既存化学物質の取り扱いは?

新規と既存の化学物質を区別するために、化審法公布の際(1973年10月16日)、業として製造され、又は輸入されていた既存化学物質を収載した既存化学物質名簿が作成されています。

この名簿には、約二万種の化学物質の名称が収載されており、これらの化学物質については新規化学物質には該当せず、それらを製造・輸入するに当たって、新規化学物質の届出を行わずに製造・輸入を引き続き行うことができます。

ただし、年間1トン以上の製造・輸入を行う場合には、一般化学物質等の届出の対象となり、毎年度、製造・輸入数量等を届け出なければなりません。

 

5.実務で役立つ化審法対象物質のリスト、データベース

環境省が、第一種特定化学物質について、専門家以外の人にも理解できるように個々の情報をわかりやすく整理し、簡素にまとめた「化学物質ファクトシート」(352物質がカバー)を作成していますのでご参照ください。

ファクトシートには、物質名、用途、環境中への排出量・移動量、主な排出源、主な排出先など、環境中に排出された後の化学物質の動き、人の健康への有害性についての記載、適用法令などの種々のデータが記載されています。

 

また、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の化審法データベース(J-CHECK)では化審法対象物質が検索できます。

 

さらに、NITE化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)では国内外における化学物質の法規制・有害性情報等を入手することができます。

 
企業等で化学物質管理に関わる方は、化審法などに関する法律面の知識習得に加え、このような情報源を随時活用しながら適正な管理を行うことが重要です。

 
(日本アイアール株式会社 A・A)

 

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