初心者でもわかる「化審法」要点解説|知っておきたい用語もチェック!

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化審法の基礎知識

1.化審法の目的と法律構成

先ず、「化審法」(正式名「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」)の「目的」を記載した第1条を見てみましょう。
 

「第一条 この法律は、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するため、新規の化学物質の製造又は輸入に際し事前にその化学物質の性状に関して審査する制度を設けるとともに、その有する性状等に応じ、化学物質の製造、輸入、使用等について必要な規制を行うことを目的とする。」

 

経済産業省の「化審法とは」というサイトの「本法の全体像」という資料では、「化審法は、化学物質の有する性状のうち、「分解性」、「蓄積性」、「人への長期毒性」又は「動植物への毒性」といった性状や、環境中での残留状況に着目し、上市前の事前審査及び上市後の継続的な管理により、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境汚染を防止することを目的としている。」と噛砕いて説明しています。

さらに同サイトでは、法律の構成について以下の通り説明しています。

  • 新規化学物質の事前審査
    → 新たに製造・輸入される化学物質に対する事前審査制度
  • 上市後の化学物質の継続的な管理措置
    → 製造・輸入数量の把握(事後届出)、有害性情報の報告等に基づくリスク評価
  • 化学物質の性状等(分解性、蓄積性、毒性、環境中での残留状況)に応じた規制及び措置
    → 性状に応じて「第一種特定化学物質」等に指定
    → 製造・輸入数量の把握、有害性調査指示、製造・輸入許可、使用制限等

 

化審法の法体系(経産省資料)

[出典:経済産業省資料「化審法の体系」より]
(URL: https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/law_scope.pdf )

 
なお、化審法の所管官庁は、厚生労働省、経済産業省、環境省の三つの省となっています。

 

2.化審法における「化学物質」の用語解説(概要)

上図の通り、化審法では化学物質について色々な用語が出てきます。
まずはこれらの用語を整理してみましょう。
 

化学物質

化審法の規制の対象「化学物質」は、「元素又は化合物に化学反応を起こさせることにより得られる化合物」と定義される。
一般に「化学工業品」「化学品」「化学工業薬品」等と呼ばれているものであること、完成した「製品」ではなく、「製品」を構成する「物質」に着目して、規制を行うものであることなどの理由による。
「化合物」には、不純物、副生物等が混在している混合物や概念的にしかその化学構造の分からないものなども含まれる。
 

新規化学物質

我が国において新たに製造又は輸入される化学物質(新規化学物質)。
 

第一種特定化学物質

難分解・高蓄積・人への長期毒性又は高次捕食動物への長期毒性がある化学物質。
製造・輸入の許可制(事実上禁止)。政令指定製品の輸入禁止。事前審査又は既存化学物質の安全性点検等により、「難分解性」、「高蓄積性」及び「長期毒性(人又は高次捕食動物※)」の三つの性状をすべて有していることが判明した化学物質は、第一種特定化学物質として政令で指定される。

※捕食者である動物のうち、高次の階層に分類される動物で食物連鎖を通じて化学物質を最もその体内に蓄積しやすい状況にあるもの。
 

監視化学物質

難分解・高蓄積・毒性不明の化学物質。長期毒性の有無が判明するまでの間、監視化学物質として一定の監視措置が講じられる。
一定の場合には長期毒性の有無を調査する指示(有害性調査指示)を行い、長期毒性を有することが明らかになれば、速やかに第一種特定化学物質に指定される。
 

第二種特定化学物質

低蓄積・人又は生活環境動植物への長期毒性がある化学物質。
「高蓄積性」ではないものの、「長期毒性(人又は生活環境動植物)」を有することが判明した化学物質のうち、相当広範な地域の環境中に相当程度残留している又はその見込みが確実であることから人の健康又は生活環境動植物の生息・生育に係る被害を生ずるおそれのある化学物質は、第二種特定化学物質として政令で指定される。
 

優先評価化学物質

低蓄積・人又は生活環境動植物への長期毒性の疑いが明らかであるとは認められない化学物質。
国は有害性評価の資料提出を求めることができる。
一定数量を超えて上市されている一般化学物質について製造・輸入数量等を収集した上で、有害性に関する既知見等に基づきスクリーニング評価を行い、リスクがないとは判断できないため、優先的にリスク評価を行う必要があるものを「優先評価化学物質」に指定する。
この「優先評価化学物質」について、段階的に情報収集を行った上で、詳細なリスク評価を進めていく。
 

一般化学物質

優先評価化学物質、監視化学物質、第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、新規化学物質以外の化学物質。
 

既存化学物質

化審法公布以前にすでに製造・輸入していた化学物質。
 
 

なお、第一種特定化学物質、第二種特定化学物質、監視化学物質、優先評価化学物質、一般化学物質については、毎年度、前年度の製造数量又は輸入数量を経済産業大臣に届け出る必要があります。
ただし、試験研究の場合および製造又は輸入数量の合計が年間1トン未満の場合、届出は不要で、事前審査も行われないとされています。

 

3.化審法における新規化学物質の審査及び規制

新規化学物質を製造又は輸入を開始する前に、三大臣に届出を行い、審査によって規制の対象となる化学物質であるか否かを判定します。
規制の対象となる化学物質であるか否かを判定するまでは、原則として、新規化学物質の製造又は輸入をすることができません(いわゆる「事前審査制度」)。

新規化学物質の審査は概ね以下の通り行われます。

三大臣は、届出を受理した日から三ヵ月以内(外国からの届出については四か月以内)に、既に得られている知見に基づいて「分解性」、「蓄積性」、「人への長期毒性」及び「生態毒性」の有無について審査し、下記1~6のいずれに該当するかを判定し、その結果を届出者に通知します。

  1. 第一種特定化学物質相当の化学物質
  2. 難分解性で人への長期毒性を有する疑いのある化学物質(生態毒性を有さない)
  3. 難分解性で生態毒性を有する化学物質(人への長期毒性を有する疑いはない)
  4. 難分解性で人への長期毒性を有する疑いがあり、かつ、生態毒性を有する化学物質
  5. 1~4のいずれにも該当しないもの
  6. 1~5のいずれに該当するか不明のもの

 

また、下記の場合には新規化学物質であっても事前届出が不要となります。

  • (イ)外国において新規化学物質の届出をし、その新規化学物質が「規制対象外」物質である旨の通知を受けた者からその通知に係る新規化学物質を輸入しようとする場合
  • (ロ)試験研究のため新規化学物質を製造・輸入する場合
  • (ハ)試薬として新規化学物質を製造・輸入する場合
  • (ニ)中間物、閉鎖系等用途、輸出専用品(環境の汚染が生じるおそれがない場合として政令で定める場合)に該当する旨の三大臣の確認を受け、その確認を受けたところに従って製造・輸入する場合
  • (ホ)年間1トン(国内での製造・輸入予定数量が政令で定める数量)以下の場合であって、既知見から判定して人の健康等に係る被害を生じるおそれがあるとは認められない旨の三大臣の確認を受け、その確認を受けたところに従って製造・輸入する場合
  • (へ)低懸念ポリマーの確認基準(高分子化合物であって、これによる環境の汚染が生じて人の健康等に係る被害を生ずるおそれがないものとして三大臣が定める基準)に該当する旨の三大臣の確認を受け、その確認をうけたところに従って新規化学物質を製造し、又は輸入する場合

また、国内の一年間の製造・輸入予定数量が政令で定める数量(具体的には十トン)以下の新規化学物質については、届出は必要ですが、事前審査の過程で当該化学物質が「高蓄積性ではない」(すなわち、第一種特定化学物質に該当する可能性がない)旨の判定・通知を受けた場合には、三大臣の事前の確認及び事後の監視を受けることによって、毒性の判定(人の健康に係る「スクリーニング毒性試験」及び「生態毒性に係る試験」の試験成績が必要)を行わなくても製造・輸入が可能となるという、低生産量新規化学物質に係る審査の特例等があります。

 

4.上市後の化学物質の継続的な管理措置について

包括的な化学物質の管理を行うため、化審法制定以前に製造・輸入が行われていた既存化学物質を含む「一般化学物質」等について、一定数量以上の製造・輸入を行った事業者に製造数量等の届出義務を課しています。

国は、上記の届出によって把握した製造・輸入数量等を踏まえ、リスク評価を優先的に行う物質を「優先評価化学物質」に指定します。リスク評価の結果に基づき、必要に応じて第二種特定化学物質等に指定することにより、所要の規制が講じられます。

一般化学物質については、政令で定める数量(具体的には1トン)以上の一般化学物質を製造し、又は輸入した者は、経済産業大臣に対して、毎年度、製造・輸入数量等を届け出なければならないとされています。

一方、人の健康に係る被害等を生ずるおそれがあるものであるかどうかについての評価を優先的に行う必要があると認められる化学物質は、三大臣によって「優先評価化学物質」に指定され、その名称が公示されます。
優先評価化学物質についても、一般化学物質と同様、毎年度、製造・輸入数量等を届け出なければならないとされています。

 
次回の当連載では、化審法における「化学物質の性状等に応じた規制」についてご紹介します。

 
(日本アイアール株式会社 A・A)
 

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