AM技術(Additive Manufacturing)とは?従来の加工技術との違いと製品開発のあり方を専門家が解説

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AMここ数年、何度目かの3Dプリンターのブームが来ています。
いつもなら、ブームが去ると、3Dプリンターの産業界への導入も下火になるのですが、今回は欧米企業を中心に本格的な導入が目立ってきています。
さらには、3Dプリンターを使用した製品も増えてきており、やっと3Dプリンターの普及が本格的になってきたと思います。

本コラムでは、AM(Additive Manufacturing)技術とは何か?従来の加工技術とはどう違うのか?について解説していきます。
はじめに従来の加工技術とAM技術の技術思想の違いを説明し、その後にAM技術の特徴を説明します。

1.従来の加工技術の技術思想

従来の加工技術、例えば、旋盤加工やミーリング加工、研削加工などの機械加工、放電加工や高エネルギー加工といった加工技術には、共通する技術思想があります。

これらの多くが材料を除去する加工であるということです。

つまり、従来の加工技術の技術思想は物体から何かを差し引くマイナスの技術思想であると言えます。

 

2.AM技術の技術思想

AM技術は、「付加製造技術」とも言われます。
“付加”という言葉が意味しているとおり、AM技術は材料を付け加えていく製造技術です。

より具体的には、AM技術は、製造する物体の3Dモデルデータを高さ方向で0.01mmから0.1mm程度の厚さでスライスして、その断面の形状に合わせて一層毎に材料を積み重ねていき、物体を製造する技術です。

つまり、AM技術の技術思想は、材料を積み重ねて物体を造形するプラスの技術思想であると言えます。

 

3.AM技術の特徴とメリット、開発のあり方

(1)製造手段のオフィス化、デスクトップ化

AM技術による製造手段のオフィス化従来の機械加工の工作機械は、大型のものが多く、卓上用といっても数十Kgもあり、気軽にオフィス内で運用できるものではありません。
そのため、多くの開発者は設計した試作品を外部や社内の機械加工部門に依頼して、制作してもらっていました。

しかしながら、近年家庭用3Dプリンターの性能の向上や低価格化により、オフィスに設置することができるサイズ・価格になってきています。これからは、開発者に1台の3Dプリンターを与える企業も出てくると思料いたします。

では、開発者に3Dプリンターを1台与えることのメリットは何でしょうか?

2つのメリットがあると思料いたします。

1つ目は、開発スピードの向上です。
2つ目は開発者の加工に対する意識改革です。
 

(2)開発スピードの向上について

従来の開発の体制は、上流から下流に向けて開発段階が進む、いわゆるウォータフォール型でした。
この開発手法では、開発速度は遅くとも全ての問題を解決してから量産に移行できるため、大量生産に向いている開発手法でした。

アジャイル型開発
【図1 ウォーターフォール型開発の流れ】

 

一方、近年では少量多品種が当たり前となり、逐次新製品の市場への投入が求められるため、開発期間の大幅な短縮が求められるようになりました。
そこで、登場したのが「アジャイル型」と呼ばれる開発手法です。

Waterfall type development
【図2 アジャイル型開発の流れ】

この開発手法は、コンセプト立案後、複数の小規模なグループに分けて同時並行で開発を進めることで、様々なアイデアを出すことができ、開発スピードの向上だけでなく、製品開発の品質向上も見込まれます。

ここで重要なのは、各グループで3Dプリンターを使用することです。
これにより、すぐにアイデアを形にすることができます。
グループ内で3Dプリンターの出力品を見ながら意見交換やアイデアの検討を行うことができるので、グループ内のコミュニケーションを活発にすることができます。
その結果、グループ内でイメージを共有化ができ、開発の方向性が定まるので、開発速度を向上させることができます。
 

(3)開発者の加工に対する意識改革

上述しましたが、従来の加工技術の技術思想はマイナスの思想であり、一方AM技術の技術思想はプラスの思想です。ここで、重要なのは、2つの加工技術の技術思想が全く異なるものであるということです。
つまり、“もの”の作り方が全く異なります。

今まで、マイナスの技術思想で“もの”を作っていた開発者に、いきなりプラスの技術思想で“もの”を作れと言っても、経験したことがなく困難です。

しかし、この開発者に3Dプリンターを与えて経験を積ませたらどうでしょうか?
今までのマイナスの技術思想に加えて、プラスの技術思想も得ることができます。

そして、製品の加工や開発にマイナスの技術思想のみならず、プラスの技術思想を加えることができたら、シナジー効果で今までにないアイデアや加工、設計手法が生まれてくる可能性があります。

このように、AM技術は開発者の意識改革を促す可能性のある技術とも言えます。
 


※本コラムは、やなか技術士事務所 代表 今井 誠 技術士(機械部門)からのご寄稿です。


 

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