【早わかり電気回路】ACアダプターの構成・方式・装置設計での選び方(電源回路の基礎知識)
電源回路のうち「ACアダプター」は、私たちの最も身近にある電源回路です。
例えば、ノートパソコンで、パソコン本体と電源コンセントをつなぐ途中の黒い箱が、ACアダプターです。
また、スマートフォンの充電器もACアダプターです。
このように、普段、私たちは意識していませんが、だれもが使用している電源回路がACアダプターといえるでしょう。
今回は、ACアダプターについてみていきましょう。
目次
1.ACアダプターの基礎
図1に「電源回路の基本を解説」の回で示した、電源回路の出力による分類を示します。
【図1 電源回路の分類(出力での分類)】
図1のように、電源回路は出力で見ると大きく2種類に分けられます。
一般に、出力が交流の電源回路を「インバータ」、出力が直流の電源回路を「コンバータ」と呼んでいます。
図1の中で、ACアダプターは、AC(交流)からDC(直流)を作るAC/DCコンバータに相当します。
ACアダプターは、電源が必要とされる電気製品に用いられる電子機器のことで、必要とされる電力を主電源から引き出すようなものではなく、発電所等から供給される商用電源を、交流から直流に変えたり、電圧を変換したりする電子機器です。日本の場合、商用電源の電圧は100Vで、周波数は50Hz(ヘルツ)から60Hz(ヘルツ)となっています。
従って、日本ではAC100Vから、電気製品の内部で必要とされる電圧(DC5VとかDC12Vなど)に変換されるものが多く使われています。
2.ACアダプターの構成
図2は、ACアダプターの構成を簡単に示した図です。
ACアダプターは、主に、電圧変換部と整流部と平滑部で構成されています。
【図2 ACアダプターの基本的な構成】
- 電圧変換部: AC100Vを、必要とするAC電圧に変換します。部品としては「トランス」が用いられます。
- 整流部: AC(交流電圧)→DC(直流電圧)に変換します。部品としては、整流素子にダイオードブリッジが用いられることが多いです。
- 平滑部: 整流のみでは完全な直流になっていません(脈流)。 コンデンサを用いて、脈流のない直流に変換します。
ACアダプターの基本構成は、図2の通りですが(「トランス方式」といいます)、出力電圧が安定しないため(接続する負荷の影響を受けやすい)、平滑部の後段に、さらに安定化回路を加える場合もあります。
3.スイッチング方式のACアダプター
スイッチング方式は図2のタイプと原理的に異なり、図3のような構成です。
AC100Vを整流、平滑したDCを「スイッチング回路」によりON/OFFします。
この出力を再び整流、平滑するとON/OFFに応じた平均値の直流になります。(図4を参照)
出力変動に対しては、変動を検出し、スイッチング制御(電圧制御)を行って、常に一定となるようにフィードバックして制御を行います。
この方式には大きなトランスを用いる必要がなく、電源装置が小型になり、AC→DCへの変換効率も良いというのが特長です。
なお、図3におけるトランスは数10KHz以上の高い周波数用なので、50Hz/60Hz用のトランスと比べて小型、軽量なものが使えます。
【図3 スイッチング方式のACアダプターの構成】
【図4 スイッチング方式の出力イメージ】
なお、注意点としては、スイッチング方式は原理的に高速(数10KHz~数100KHz)でスイッチ(MOSFETなど)がON/OFFしますので、これによる「スイッチングノイズ」が発生します。
機器によっては、例えばAMラジオなどは、このノイズの影響を受ける場合があるので注意が必要です。
4.ACアダプターの選び方(装置設計の場合)
ACアダプターは、電気製品に付属している場合が多いので、普通は付属しているものを使用すればOKです。
しかし、装置を設計する場合には、最適な電源を選択する必要があります。入力電圧、入力電流、出力電圧、出力電流など、仕様として最適なACアダプターを選びましょう。
また、小型の装置を設計する場合は、電源として、まず交流電源を直接使用するか、ACアダプターを使うかを選択する必要が出てきます。
それぞれの場合の、長所、短所を見てみましょう。
(1)ACアダプターを使用する場合
ACアダプターを使用するメリット(長所)
- 入力電圧範囲等の仕様が変わった時、アダプターの交換で対応ができる。
- 電源が故障した時の交換が簡単。
- 電源を部品とすることで機器に使用する部品数を減らしコスト削減可。
- バッテリーの充電器との兼用が可能。
ACアダプターを使用するデメリット(短所)
- 機器とアダプターを一緒に持ち歩く必要がある。
- 自分で電源設計できないので、仕様に制限が出てくることがある。
- 特殊な仕様が必要な場合、高額になる。
(2)交流電源を直接使用する場合
交流電源を使用するメリット(長所)
- 機器に対して最適な設計ができる。
- 機器とアダプターを一緒に持ち歩く手間が省ける。
- 機器が独自に必要とする特殊な仕様への対応が容易になる。
交流電源を使用するデメリット(短所)
- 電源が故障した時、機器ごとの交換か修理が必要となる。
- 電源仕様により、ノイズ対策が必要な場合がある。
- 装置を小型化する場合に限界が出てくる。
上記のように、それぞれの場合の、長所、短所がありますので、装置の仕様に応じて選べばよいでしょう。
ただ、最近は、装置が小型化してきているので、ACアダプターの必要性は増してくると思われます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)