【早わかり電子回路】IC(集積回路)の種類について総整理!

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IC・集積回路の解説

電子回路を構成する部品のうち、IC(集積回路)は、無くてはならない電子部品です。
私たちが普段持ち歩いているスマートフォンはもちろんのこと、あらゆる電化製品はICがないと作ることができません。
今回は、私たちの身のまわりでよく使われている主なICの種類について簡単に紹介します。

1.IC(集積回路)とは?

「IC(集積回路)」とは何かというと、電子部品の繋がりである回路を、一枚の基板(チップ)上に実装したものです。

ここで言う電子部品は、抵抗やコンデンサ、トランジスタなど様々ですが、多数の素子が集積し、パッケージングされています。

電化製品や複雑な装置でも、回路構成が共通のものは少なくありません。構成が決まっていて、しかも複雑なものをいちいち製造するのは効率が悪く、時間もお金もかかってしまいます。

集積回路は、そんな面倒な手順を省くために、あらかじめチップ上に必要な回路を実装していてくれる便利な電子部品なのです。

 

2.主なIC(集積回路)の種類と概要

ここでは、ICを機能別に分けた種類について説明していきます。

(1)アナログIC

アナログICには、増幅や線形回路を表現するオペアンプ(演算増幅器)やコンパレータ(比較器)、さらにデジタルに変換するA/Dコンバータ(Analog-to-Digital Converter)やその逆のD/Aコンバータ(Digital-to-Analog Converter)などがあります。

また、アナログ信号を切り替えることができる「アナログスイッチIC」や、CR(抵抗やコンデンサ)を用いた「タイマIC」があります。
 

(2)ドライバーIC

ドライバーIC(Driver Integrated Circuit)とは、液晶パネルやモーターなどを駆動する目的で電気信号を送るための集積回路(IC)です。
ドライバーICを使用せずに液晶パネルやモーターなどを駆動させようとすると、回路設計が複雑になりがちな上、過電流・過熱を起こしやすくなります。

ドライバーICは、「LCDドライバー」「モータードライバー」「LEDドライバー」などがあります。

液晶ディスプレイ用のドライバーICは、LCD(Liquid Crystal Display)ドライバーICと呼ばれ、パソコンや携帯電話のディスプレイに使用されます。

モーター用ドライバーICを使用する製品は、家電製品・自動販売機・ロボットアームなど、モーターを使用する幅広い製品です。

LEDライト用のドライバーICは車載LED・照明LED・LEDディスプレイなど、LEDを使用する製品に使用され、電力の効率化に役立っています。
 

(3)電源IC

安定した5Vや3.3V、あるいは1.2Vなどを作り出すための安定化電源用ICです。

AC/DCコンバータDC/DCコンバータなどがあります。

以前は、5V単一や3.3V単一などICに加える電源電圧は一定だったのですが、例えばスマートフォンでは、約4Vのリチウムイオン電池から1.2V、3.3V、5Vなど10種類くらい電源が必要だと言われており、DC/DCコンバータの需要は増えてきています。
 

(4)通信モデムIC

携帯電話やスマートフォンに使われる無線通信用のICを示します。

無線通信では、デジタルデータを電波に乗せて飛ばしたり、受け取ったりするためにデジタル変調をかけています。このデジタル変調を計算するために使うICチップです。
 

(5)標準ロジックIC

「標準ロジックIC」とは、業界で標準になっている論理回路で、各社でファンクション(機能)とピン配置に互換性を持たせた製品群となります。
小型パッケージでは一部例外もありますが、パッケージについても互換性を持たせたパッケージを各社が揃えています。

標準ロジックICは、ファンクション番号が同じであれば、同一機能で同一ピン配置の製品です。
CPU、メモリ等のシステム間を繋ぐインターフェースの役割で標準ロジックIC が使用されています。

主な用途して、信号の動能力向上(バッファー)、波形整形、信号出力のタイミング調整などに使われます。
また、システムIC の信号仕様が変更されてシステムの小修正が必要となった場合、標準ロジックIC を使用することで簡単に回路の修正ができます。

なお、ここでの「ファンクション」とは、ANDゲートとかフリップフロップとかのデジタル回路の機能のことをいいます。
 

(6)MPU(Micro-Processing Unit:マイクロプロセッサ)

ソフトウエアプログラムで演算や制御を行うICで、仕組みはコンピュータと同じです。命令セットも演算命令と制御命令などを使います。
現在は、64ビットが主流になり、絶えず使うメモリをキャッシュメモリとして、多数の高速SRAMを集積しています。
 

(7)DRAM(Dynamic Random Access Memory)

1トランジスタ/セル方式の集積度が高いメモリで、絶えず書き込みと読み出しがおこなわれるメモリとして使われます。

例えば、パソコンで文章を書く場合はDRAMに貯めておき、書き直しがいつでもできるようにしています。
メモリ内容が数秒で消えてしまうため、百ミリ秒程度ごとにリフレッシュしてメモリ内容を保っています。
 

(8)NAND型フラッシュメモリ

保存用のメモリで、「ストレージ」と呼ばれる不揮発性メモリです。
DRAMとは違い、写真やビデオ、オーディオを貯めるのに使われています。

メモリセルがある程度集まったブロックごとに一括消去するため、一瞬でブロック全部を消すことから「フラッシュ」と名付けられました。
 

(9)マイクロコントローラ(マイコン)

上述の「マイクロプロセッサ」(MPU)は、ソフトウエアでさまざまな機能を設けたり、演算速度を上げたりしますが、「マイクロコントローラ」(Microcontroller、マイコン)は制御命令を得意としてシステムの制御を担当しています。

超高集積のマイクロプロセッサ(MPU)よりも構造が比較的簡単で、コストが安いです。
 

(10)GPU(Graphics Processing Unit)

「GPU」とは、グラフィックス、すなわち絵を描くためのプロセッサです。

絵は、まずデッサンを描くのと同様に小さな三角形のポリゴンをつなぎ合わせておおよその輪郭を作ります。

次にレンダリング(Rendering)、すなわち色塗りを行います。色は、さまざまな色を混ぜ合わせて作るため、掛け算を足し合わせる「積和演算回路」を多数集積しています。

コンピュータ画面上に1枚の絵を素早く色塗りするためには、小さなブロックに分割し、それぞれを積和演算回路で色を塗り、しかもすべての積和演算回路を並列に同時に動作させます。

この積和演算回路は、人工知能(Artificial Intelligence :AI、以下AI)に使われるニューラルネットワークの演算とよく似ているため、AIの学習と推論にGPUが使われています。
 

(11)DSP(Digital Signal Processor)

「DSP」とは、積和演算専用のマイクロプロセッサで、GPUの多数の小さな演算器とは違い、大きな演算器をもち、数値解析に使います。複雑な偏微分方程式などを解く場合には数値演算がよく使われますが、ここでは演算精度を上げるため、32ビットよりも64ビット演算が主流になっています。

例えば、通信モデム(変復調器)のデジタル変調や、圧縮・伸長アルゴリズムなどを解くために使われています。
 

(12)FPGA(Field-Programmable Gate Array)

「FPGA」は、ユーザーが自分専用のロジック回路を自由に組むことができます。
いろいろなロジックテーブルと、ロジックをつなぐスイッチやメモリなどを集積しています。

最近では、一般的なC言語でプログラムできるツールも入手できるほか、クラウド上でプログラムするツールもあります。
 

(13)ASIC(Application Specific Integrated Circuit)

「ASIC」とは、電子機器などのメーカーが自社の機器に搭載するために自社で、あるいは半導体メーカーなどに依頼して、特別に設計するオリジナルのICチップを指します。

ASICは、必要な機能を論理回路の形で一つのチップにまとめて作り込むため、汎用ICの組み合わせやプログラマブルIC(FPGAやPLCなど)を使う場合に比べ高速に動作し、実装面積や消費電力、大量生産時の製造単価などでも有利となります。

一方、回路設計などのために多数の人員、高いコスト、長い期間が必要で、また、半導体製造工程上の固定的なコストが高額なため、不具合や仕様の見直しによる設計変更が難しく、また、少数しか製造しない場合には単価が高くついてしまいます。
 

(14)システムLSI

マイクロプロセッサやメモリ、アナログ回路ブロックなどを1個のLSIの中に混載し、ワンチップで高いシステム機能を有するものです。

半導体加工技術の微細化に伴い、一片のシリコン上へ数億素子の集積が可能になり、従来は基板上に多数のLSIを実装・結線して作っていたシステムが、ワンチップで実現できるようになってきました。

 

3.IC(集積回路)の進化のポイント

上記のように、IC(集積回路)には様々な種類がありますが、元は1個のトランジスタから始まったものです。

進化のポイントを見てみると、下記の点が挙げられると思います。

  • 小型化、軽量化: プリント基板数十枚分の電子回路がわずか数ミリ角の1個のシリコンチップになりました。
  • 高性能化: 小さく作ることで、容量分や抵抗分が減少して動作処理速度が上がり、高性能になりました。
  • 高機能化: 膨大な数のトランジスタなどを1個のICに搭載できるようになり、従来の寸法や消費電力を維持しつつも、複数の機能を一つにまとめることができるようになりました。
  • 低消費電力化: 半導体素子自身の高性能化に加えて、小型化することにより、電子機器の消費電力を低減できるようになりました。
  • 低コスト化: 1枚のシリコンウエハー上に回路チップを数千個作成できるため、大幅な低コスト化が可能となりました。
  •  

    以上、今回はICの主な種類について紹介してきました。
    ICは、今後もますます、質・量ともに進化し続けることでしょう。

     

    (日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)
     

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