【機械製図道場・初級編】形状の一部を省略して図面を描く(図形を省略できる場合の表示法)
前回までの連載で、基本およびバリエーションの各種投影法により三次元立体形状を二次元図に表す手法、中空部品の断面を適確に図面に表す手法について学んできました。
物の形状を図面に表すためには、正面図や側面図などの各投影図に、投影面に現れる形状をすべて忠実に正確に図示することが原則です。
しかし、形状変化に富む機械部品形状を全て図面に起こす作業は、手間ひまと長大な時間を要するものです。
物によっては、対称性や繰り返し性など一定の規則性と条件を満たせば、すべてを図に表さなくても、その形状を確実に製造側へ伝えることが可能です。
そのような場合は、一定の規則に従って、形状の一部を省略して図面を描くことが許されています。
図形を省略できる場合には、どのような形状があるか見ていきましょう。
1.対称形状
中心線に対して、左右または上下に対称である形状の場合は、中心線の片側を省力して図示することができます。省略する部分は、次のようにします。
- 正面図・・・中心線より下半分
- 左側面図・・・中心線より右半分
- 右側面図・・・中心線より左半分
中心線の両端部に、短い二本の細線で対称図示記号を示すか、省略した部分がわかりやすくなるよう、中心線を少し超えた所まで省力形状を伸ばして図示するか、いずれかの方法と取ります。
下図はキー溝が180°対称に切られた円筒部と、ボルト穴が等配されたフランジとからなる物体の図面例です。
2.繰り返し形状
同一径の穴が等間隔で多数あけられた板など、同種同形状が連続して多数並ぶ形状の場合は、端部など1か所もしくは形状に応じて2~3か所のみを図示し、他の箇所は、その形状と中心線との交点を小さい黒丸のような図記号で表示して、図記号が何を示すか図面上の一か所に記述するか、または加工する穴など当該形状の総数や、穴径などの寸法情報、配列ピッチなど加工に必要な情報を図面に表示して、図記号は省略する方法をとることができます。下図は板に多数のボルト穴を等間隔で多数配列する場合の省略表示の一例です。
対称形状の物の側面図を片側省略する例題演習をしましょう。
【例題】図形の省略
《 問題 》
下図の品物は、対称性があるので、片側省略図示が可能です。
正面図を片側断面、側面図を対称図示記号による片側省略として描いてください。
外形にテーパ部を持ち、内側には六角穴が貫通し、端面からテーパ部の半分の深さまで、六角の角部から外周方向延長線上に穴があけられています。
《 解答 》
《 例題の解説 》
長尺物は、中間部分を省略可能!
軸、棒、管など同一形状、同一断面で長い物品の時、図面枠に収まり切れない場合、中間部分を省略して表示することが可能です。
下図のように、形状が同一で長い部分を破断線で切って図示します。
矢印部分が同一形状で長いので、破断線で切ります。
対称形状や繰り返し形状に対して省略図示方法をうまく活用して、製図作業の効率化に役立ててください。
次回は、寸法表示の基本について学びます。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)