- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
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流量を制御するバルブ(弁)は、その用途により、様々なものがあります。
今回取り上げるのは数100μs(100μs=0.0001秒)以下のレベルの短時間に開閉弁を制御するバルブについてのお話です。
バルブの駆動方式には、次に挙げるように様々なものがあります。
油圧駆動や空圧(空気圧、真空圧)駆動の場合には、さらに別のバルブ(パイロットバルブ)を加えて、これにより基のバルブ(メインバルブ)を駆動する圧力を変える方式もあります。
高速で、直接に、流量を精度よく制御しようとする場合には、電磁力による駆動を用いた「高速電磁弁」(高速ソレノイドバルブ)が用いられます。
流量制御弁では、開弁時に流体が流れ、その量を調量します。
基本的な調量制御方式として、以下図(a)と(b)に示す「デューティ制御」と「時間制御」があります。
流量制御弁では、バルブの開弁時の流失量により流量を制御しますが、デューティ制御では(a)図のように、開弁制御時間において開弁と閉弁を繰り返し、開弁期間に流失する総流量として流量を制御します。開弁制御時間における開弁駆動時間の割合を「デューティ比」と呼びます。
デューティ制御では、開弁と閉弁の1秒間の繰り返し数、すなわちバルブのON-OFF駆動周波数も設計変数となります。例えば、駆動周波数が10Hzでデューティ比が30%という場合には、開弁制御時間中の1秒間に、0.03秒開弁→0.07秒閉弁という開閉動作を10回、繰り返します。
一方、時間制御の場合には、開弁制御期間中には、図(b)のように、バルブを連続開弁し、流量を制御します。
電磁力駆動のバルブでは、電流を制御して電磁力を変え、これによりバネ力などでシート部に押えつけられているバルブをリフトさせます。
このため、コントロールユニットにおいてバルブ駆動信号によりバルブ駆動電流が制御され、磁力の発生により実際にバルブがリフトするまでには、図(c)や(d)に示すように遅れ時間をともない、さらに動き出してからのバルブの挙動自体も複雑な曲線を描きます。
時間制御を用いた高速流量制御弁において、流量の制御精度を高めるには、バルブリフト曲線の繰り返し安定性(リピータビリティ)が重要です。
バルブのリフトに対して、リフトストップ機構を持たず、図(c)のようなバルブリフトによる流量制御の場合は、バルブの挙動のバラツキも大きく、流量もバラツキます。一方、図(d)のように、バルブストップ機構がある場合でも、制御流量が小さく制御時間が短くなると、バルブがリフトストッパーまでリフトせず、図(c)と同様のリフト挙動となってしまいます。
高速(短時間)で精度良く、より小さい流量を制御するには、下図(e)に対して図(f)のように、バルブのリフト速度と下降速度を上げることが必要です。
電磁弁において、リフト速度を上げるために磁力をアップしようとする際に、コイルの巻き数増加による電磁弁の大きさの増加や、電流値の増加による消費電流増加を防ごうとした場合には、電磁コイルの固定鉄心の仕様が重要になります。
ただ単に大きい磁力を発生する材料では、残留磁気により電流OFF時の磁気抜け(磁力低下速度)が悪く、バルブ降下速度を上げられませんので、発生磁力が大きく磁気抜けの良い材料を開発しなければなりません。「ソリッドコア」と呼ばれる一体ものの固定鉄心に対して、ケイ素を含む鋼板を積層して固定鉄心を作る技術は、磁気抜け性能を上げるためのものです。
一方、バルブが速く動くことによって、別の開発課題が生じます。
それは、図(d)や(f)のリフト曲線で表したように、最大リフトに達した時やバルブが下降してシートへの着座する時に、バウンシング(跳ね返り)を生じることです。これらはバラツキの要因となるとともに、機械的衝突音によるノイズ増大をもたらします。
バウンシング量の低減策には、以下のような方法があります。
理想的な高速流量制御弁とは、「省電流にしてコンパクト、素早く動きだし、最大リフト時やシート着座時には、そっと静かに止まる」、そんなバルブです。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)