電磁ノイズの伝達経路を整理!各パターンでのノイズ対策の基本を押さえよう

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ノイズ

EMC対策の連載コラム第2回は、ノイズの伝達経路と、伝達経路ごとの対策についてです。

ノイズの発生が完全に防げれば、それにこしたことはありません。
しかし、ある電子機器にとっては有用な信号が、他の電子機器にとってはノイズになることは、ごく当たり前に起こります。そこで、ノイズがどのような経路で伝わるかを知り、それをどのように断ち切るかを考えることが重要になります。

1.ノイズの伝達経路(伝搬経路)

電磁ノイズが伝わってくる経路は、伝わる確実性が高い順に、次のように整理することができます。

 

(1)導体伝導

ノイズ源とノイズを受ける機器が直接導体で繋がれている。導体が電源線の場合もある。

 

導体伝導

 

(2)導体伝導+空間伝導+導体伝導

ノイズ発生源にアンテナが繋がっていて、アンテナから空間に電波が発せられる。
ノイズを受ける機器にもアンテナ線が繋がっていてノイズ発生源から発せられた電波を受けて機器に伝える。
わざわざアンテナを取り付けているわけではなく、回路が不可避的にアンテナの役割を果たしてしまう。

 

導体伝導+空間伝導+導体伝導

 

(3)導体伝導+空間伝導

ノイズ発生源にアンテナが繋がっていて、アンテナから空間に電波が発せられる。
ノイズを受ける機器にはアンテナ線はなく、ノイズ発生源から発せられた電波を直接受ける。
 

導体伝導+空間伝導

 

(4)空間伝導+導体伝導

ノイズ発生源にアンテナはないが、空間に発せられた電波はノイズを受ける機器に繋がっているアンテナ線が受けて機器に伝える。
 

空間伝導+導体伝導

 

(5)空間伝導

ノイズ発生源、ノイズを受ける機器ともアンテナはなくノイズ発生源から発せられた電波を直接受ける。
 

空間伝導

 

2.伝達経路ごとのノイズ対策

電磁ノイズの伝達を抑制するために、伝達経路のそれぞれのモードに対して次のような対策を施します。
以下の説明図では、ノイズの矢印の色が薄くなっていくことで、ノイズの強度が弱まることを示しています。
 

(1)導体伝導

ノイズ源出口にフィルタ、ノイズを受ける機器入口にもフィルタを入れる。

※フィルタは、必要な電気信号は通し、不必要な電気信号(ノイズ)は通さない(減衰させる)装置のこと。

 

導体伝導

 

(2)導体伝導+空間伝導+導体伝導

ノイズ源出口にフィルタ、ノイズを受ける機器入口にもフィルタを入れる。
 

導体伝導+空間伝導+導体伝導

 

(3)導体伝導+空間伝導

ノイズ源出口にフィルタを入れ、ノイズを受ける機器をシールドで囲む。

※「シールド」とは、導体の壁(囲い)によって、電波を遮断する構造物のこと。

 

導体伝導+空間伝導

 

(4)空間伝導+導体伝導

ノイズ源をシールドで囲い、ノイズを受ける機器入口にはフィルタを入れる。
 

空間伝導+導体伝導

 

(5)空間伝導

ノイズ源、ノイズを受ける機器、いずれもシールドで囲む。
 

空間伝導1

 

実際には、すべての経路をつぶさなければならないので、下のように対策を行うことになります。

 

空間伝導2

 

3.ノイズ対策の基本

ここまでの説明で、既にシールドやフィルタと言った言葉を使ってきましたが、改めて整理すると、ノイズ対策の基本は一般的に次の4要素とされます。

  • シールド:安定した電位(グランド、アース)で囲うことで、ノイズを周囲に出さない、あるいは周囲からのノイズの影響を遮る。
  • 反射:ノイズ成分を選択的に反射させて発生源に戻す。
  • 吸収:ノイズのエネルギを熱に変換して吸収する。
  • バイパス:ノイズ成分を選択的にグランドに逃がす。

今後の連載で説明する具体的なノイズ対策は、これらの要素を単独で、あるいは組み合わせて使っています。

次回は、導体伝導への対応として、ローパスフィルタの基礎知識を解説します。

 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)

 

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