<半導体デバイス向けプラズマ装置による高品質成膜へ>プラズマCVD(化学気相堆積)装置による高品質薄膜の成膜技術、および量産化対応
【Live配信】 2024/5/22(水) 13:00~16:30 , 【アーカイブ配信】 2024/6/4(火) から配信開始【視聴期間:6/4(火)~6/17(月)】
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ALD(原子層堆積, Atomic Layer Deposition)は、気相の自己制御式な表面化学反応を利用した真空薄膜形成技術であり、CVD(化学気相堆積, chemical vapor deposition)の一種とされます。
1974年にFinlandのTuomo Suntola氏によって開発された技術であり、半導体デバイスの微細化のための重要技術として一躍注目を集めるようになりました。
ALDを話す前に、まずCVDをみてみましょう。
CVDは気相化学反応によって、基板上に膜を形成させる方法です。
反応条件により、熱CVD、光CVD、プラズマCVD、ALDなどがあります。
TiN膜の熱CVDを例に、CVDのメカニズムをお話しします。
まず、室温の大気圧状態で液体状態のTiCl4を加熱して気化し、精製したN2反応ガスとH2キャリヤガスとともに処理槽内に送り込まれます。
そして、高温(1000℃ぐらい)下で気相反応が進行して、TiN膜が生成されます。
HClとして余る反応気体は、排ガスとして排出されます(図1)。
【図1 熱CVDのメカニズムイメージ】
ALDは自己制御(self-limiting)式の表面反応に基づき、一層ずつ原子を堆積することができます。
1回のALDサイクルで1つの「原子層」を堆積させ、サイクル回数をコントロールすることによって、均一な膜をナノメートルレベルで高度に制御することができます。また、低温成膜などの産業分野で扱いやすいなどの特徴も有しています。
ALDのメリット・デメリットについて、CVDとの比較も交えながら整理してみましょう。
ガスが分解してできた化合物がそのまま堆積していくCVDとは異なり、ALDは自己制御して成膜します。
膜の厚さを原子単位以内に制御することが可能で、他の薄膜形成技術と比べて、さまざまな用途に最適な薄膜厚さを正確に制御できます。
成膜時の温度はCVDより一般的に低温化することが可能であり、熱によるデバイスの性能低下を回避できます。特にプラズマ援用の場合、100度以内の反応温度が実現できます。
ALDでは飽和化学吸着を利用するため、複雑な表面(例えば凹凸のある表面)に対しても均一な膜を形成することができます。
ALDは非常に緻密で、ピンホールフリーの膜形成が可能です。
ALDは優れた技術ではありますが、以下のようなデメリット・技術課題があります。
ただし多くの研究者が注目していますので、解決は時間の問題かもしれません。
【表1 ALDとCVDの技術比較】
プリカーサー | 膜の均一性 | 成膜速度 | 厚さの制御 | |
ALD | プリカーサーごとに反応、隔離が必要 熱分解しない 高い反応性 過剰投与が可 |
自己制御 | 遅い nm/min |
サイクル回数による制御 |
CVD | 反応温度下で分解 低い反応性 量の厳密制御が必要 |
反応の設計、パラメータによる制御 | 速い μm/min |
プロセス設計による制御 |
ALDのメカニズムには、主に化学吸着(Alternating Chemisorption)、表面反応(Surface Reaction)と脱着(Desorption)という3つの反応と、以下の4つのステップがあります(図2)。
【図2 ALD Process Technology in the Semiconductor Industry】
ALDは主に以下のような技術領域で活用されています。
ALD技術は半導体技術の進化に大きな役割を果たしました。
デバイスの微細化については限界が近いとされる中、他の技術領域への応用が期待されます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)
《引用文献、参考文献》