【TWIの要点解説】TWI (監督者向け企業内訓練) の指導法と特徴は?製造業の人材育成で再注目
目次
1.TWIとは?
皆さんは「TWI」という指導法はご存知でしょうか?
「TWI」とは、”Training Within Industry for supervisors“(監督者の方々のための企業内訓練)の略です。
第二次世界大戦時アメリカで開発された訓練で、世界で最も優れたな監督者向けの訓練とも言われています。
この訓練は、多国籍の人々でも短時間で生産効率と品質を確保するための現場管理と教育方法として開発されました。 日本では1950年に労働省(現在の厚生労働省)によって導入され、トヨタの成功に大きいな役割を果した「TPS」(トヨタ生産方式)の基礎になった教育方法ともいわれています。
今回はTWIの概要についてご紹介します。
2.TWI誕生の背景と4段階職業指導法
TWIは第二次世界大戦中のアメリカで考案された指導法でした。
アメリカの造船所の訓練責任者だったチャールズ・R・アレン(1919)は、世界大戦にて軍用艦の増産をする必要がありました。しかし、優秀な技術者は戦地へ行っており、アメリカ本土では経験不足の若い人、高齢者、移民など、とても即戦力にはなり難い人材しか確保できない状況だったのです。
そこでチャールズ・R・アレンは、ドイツの教育学者ヘルバルトが考案した「5段階教育法」を参考に職場の指導法として、「4段階職業指導法」を考えます。
4段階職業指導法
- Show: やってみせる
- Tell: 説明する
- Do: やらせてみる
- Check: 確認・追加指導
この指導法はそれぞれの能力に応じつつ、短期間で技術習得を目指して作成されました。
4段階職業指導法を基に、造船所の新人技術者たちの研修用に変化したのがTWIです。
第二次世界大戦当時、米国の技術者を中心にTWIは全米に広がりました。
戦後、日本は経済復興が大きな課題であり、その復興を支える産業が工業(製造業)でした。短期間で技術者を増やし生産性の向上を目指すにも「技術者の育成」が大きな課題となっていました。その課題の払拭に繋がったのがTWIでした。
その後、労働省による普及もあり、トヨタ生産方式のように大手製造業を中心に取り入れられるようになりました。ただし、社員数が少ない中小製造業にまで浸透することはなかったのです。
しかし昨今、製造業における人材育成の課題解決にTWIの指導法が再注目されています。
なぜいまTWIの指導が注目されているのか、その概要をご紹介します。
3.TWIの概要(4つの指導法と特徴)
TWIの指導法が注目されている最大のポイントは「指導の仕方が体系的に整えられ、誰が指導者になっても同じように部下を導くことが出来る」という点です。
中小製造業での社内指導は、ベテラン技術者さんの経験に基づいた指導が多いのではないでしょうか?
それにより、同じ会社であっても、指導者によって作業の手順や重要ポイントに違いがあり、習う側からすると混乱の要因になります。
TWIのように、指導法が体系化されていると、社内の誰が指導者になっても指導法が統一されることで技能習得がしやすくなり、結果育成時間の短縮も図れます。
TWIは4つの指導法があります。
(1)TWI-JR(Job Relations) 「人の扱い方」
(2)TWI-JI(Job Instruction) 「仕事の教え方」
(3)TWI-JM(Job Methods)「改善の仕方」
(4)TWI-JS(Job Safety) 「安全作業のやり方」
それぞれの指導法の特徴を見ていきましょう。
(1)TWI-JR(Job Relations)「人の扱い方」
産性を高めるためには、技術を教えることだけでなく、部下を含めた周囲の人と良い関係性を保つ必要があります。特に現代では、この良い関係の構築・維持で悩まれている方が多いのではないでしょうか?
《TWI-JRの4段階法》
- 第1段階: 事実をつかむ
- 第2段階: よく考えて決める
- 第3段階: 処置をとる
- 第4段階: あとを確かめる
TWI-JRは、職場の人と人との問題の「処理の仕方」を学ぶことが出来ます。
(2)TWI-JI(Job Instruction)「仕事の教え方」
教えることは技能です。
作業者を育成し、継続的な成長を目指すための重要な技能です。
良い教え方というのは、正確に、安全に、良心的に、速く、仕事を覚えさせる方法です。
その成果として、ムダ・手直し・不良品の減少、職場安全意識を高めて災害の減少、職場で活用する道具や設備の破損の減少などへと繋がります。
《TWI-JIの4段階法》
- 第1段階: 習う準備をさせる
- 第2段階: 作業を説明する
- 第3段階: やらせてみる
- 第4段階: 教えたあとをみる
TWI-JIは、実際の職場の作業を使い、部下が実演を通して理解できるまで教える方法を学ぶことが出来ます。
(3)TWI-JM(Job Methods)「改善の仕方」
改善は標準(基本)があって成せることです。
皆さんの会社では、標準(基本)を明確に示して仕事に取り組ませていますか?
もし、標準(基本)ではなく、感覚で作業を行い、それを教育しているとしたら、製品の生産性と品質向上の妨げになっているかもしれません。口で説明ができないことは、正しく教えることも、修正することも出来ません。
例えば、運搬作業、機械作業、手作業のどれかに標準(基本)が含まれ、明確に説明が出来る状況になれば、仕事の効率は更に良い方向に改善することができます。
《TWI-JMの4段階法》
- 第1段階: 作業を分解する
- 第2段階: 細目ごとに自問する
- 第3段階: 新方法に展開する
- 第4段階: 新方法を実施する
技術進歩は、監督者の改善の結果として生まることもあります。
TWI-JMは、自社の業務内容を題材に、改善について学ぶことが出来ます。
(4)TWI-JS(Job Safety)「安全作業のやり方」
TWI-JSは「安全とは事前に対策を考えて処置すること」に重きを置き、起こってからの事後処置のことではないと明確に認識させるところから訓練を始めます。
災害事例を用い、「災害連鎖方式」という原因分析や、なぜ事故や災害が発生するのか、そのプロセスを研究させます
事故や災害は、単に偶発的に発生することではなく、必ず何らかの原因が影響しあって発生することを理解させ、業務の安全意識を高める訓練をします。
《TWI-JSの4段階法》
- 第1段階: 事故となる要因を考え
- 第2段階: 対策を考えて決める
- 第3段階: 対策を実施する
- 第4段階: 結果を検討する
TWI-JSは、安全作業のやり方のやり方だけでなく、安全推進を担う人材の育成として「人間の尊重」「要因の究明」も学ぶことが出来ます。
4.TWIの考え方を取り入れて、社内教育を改善を
TWIは、監督者が教えやすく、相手の状況を踏まえながら行き戻りが出来る4段階に整備された指導法です。
これまで以上に、社内の人との関わりが難しい、技術者育成がこれまで通りだと上手くいかないと感じている方、是非TWIの指導法を取り入れてみては如何でしょうか?
(※この記事は、OJT・社内指導法の改革の専門家 権堂 千栄実 講師からのご寄稿です。)