プラスチックの高度マテリアルリサイクルと高度成形プロセス
【Live配信】 2024/2/27(火)13:00~16:30 , 【アーカイブ配信】 2024/3/11(月)から配信開始【視聴期間:3/11(月)~3/25(月)】
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国連気候変動サミットや世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)といった諸外国の代表者が集まる場で、気候変動・環境汚染対策に関する議論が盛んに行われています。
地球規模の気候変動・環境汚染には様々な要因がある中で、プラスチック製品への風当たりは強いと言えるでしょう。特にプラスチックが注目を集める理由として、身の回りで多く使われている他、使用後の「廃プラスチック」が海洋汚染の一因とみなされていることが大きいでしょう。
これらプラスチック製品への批判を受けて、諸外国ではプラスチックリサイクル対応を拡大するともに、代替製品の開発や非利用化を進めています。
廃プラスチックのリサイクル設備や発電設備への投資をはじめ、紙を原料とした容器製品の開発や、レジ袋の有料化、繰り返し利用可能な食料容器の提供など環境に配慮したビジネスが活気づいています。
日本国内においては、平成初期から循環型社会形成の推進に関する法体系が整備されたこともあり、プラスチックリサイクルについては先進国とも言える取り組みを行ってきました。さらに諸外国の決定を受けて、プラスチック利用削減の取り組みの一環として、レジ袋有料化が2020年7月から開始されています。
ただし近年、一部の廃プラスチックが中国や東南アジアに輸出されていたことが問題化し、廃プラスチックの輸出が停止される事態となりました。輸出停止を受けて、国内には廃プラスチックが滞留しているとみられ、廃プラスチックの処理は急務となっています。
「リサイクル」というキーワードがここまで注目された理由の一つとして、2015年9月に国連サミットで採択された「SDGs」があります。
「SDGs」とは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された、2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さないことを目的に掲げています。そして、「SDGs」は発展途上国のみならず、先進国自身も取り組むユニバーサル(普遍的)なものとして、世界各国が力を入れているのです。
この「持続可能な世界」を阻害する問題の中に、世界のゴミ問題が影を潜めています。
廃棄物がリサイクルされずに行き場をなくしてしまうと、気候変動、海洋資源・生物多様性さなど数多くの問題に関わってくるのです。
このようなことから、「SDGs」の中でも環境問題は大きく取り組むべきターゲットとして指定され、廃棄物をリサイクルするという考えが求められます。
そして、廃プラスチックの資源価値を高めることで経済的な資源循環を達成することが必要です。
そのため、リサイクル技術をさらに発展させ資源効率性を向上させるとともに、付加価値を生み出しつつ二酸化炭素排出を削減することが求められています。
リサイクルにおいて注目されているキーワードが「3R」(スリーアール)と呼ばれているものです。
「3R」は Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の頭文字を取った3つの行動の総称であり、環境省を主に取り組みが進められています。
「3R」はごみを限りなく減らし、それによりごみの焼却や埋立処理による観光への負担をできるだけ少なくすることが狙いです。
さらに、限りある地球の資源の使用を減らすために、資源を有効的に繰り返し使う社会(循環型社会)を実現するための重要なキーワードとして位置づけています。
「3R」の定義、そして、消費者及び事業者の視点から出来る具体的な「3R」の例を考えてみましょう。
製品をつくるときに使う資源の量や廃棄物の発生を少なくすることです。
耐久性の高い製品や製品寿命延長のためのメンテナンス体制の工夫なども取り組みの中に含まれます。
使用済製品やその部品などを廃棄せず、繰り返し使用することです。
そのための製品の提供、修理・診断技術の開発、リマニュファクチャリング(使用済み製品の再生)なども取り組みの一つです。
廃棄物などを原材料やエネルギー源として有効利用することです。
それを可能にする製品設計、使用済製品の回収、リサイクル技術・装置の開発なども取り組みの一つです。
日本の廃プラスチック処理は熱回収が主流であり、単純焼却とあわせて廃プラの64%が、焼却に基づいた処理をされているようです。熱回収は、廃プラスチックを焼却する際に発生する熱エネルギーの一部を活用できるという利点があります。
しかし焼却することで、プラスチックは資源として循環せず、新たな大量生産に結びつきます。
プラスチックは、その製造過程と焼却処理過程の双方で、温室効果ガスである二酸化炭素を発生させ、地球温暖化を加速させることになります。
よって。熱回収は、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)で対応できない場合に検討すべき処理手法です。
熱回収による処理をストップするわけにはいきませんが、中長期的には廃プラ処理の主流として熱回収を位置づけていくことは避けなければなりません。プラスチックの使用を抑えることを基本としつつ、過度に代替品に頼らずに着実にリサイクルを推進していくことが、今後の日本の廃プラスチック処理には求められます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・I)
《参考文献・サイト》