3分でわかる技術の超キホン 界面活性剤の種類と化粧品での使われ方
当連載の「化粧品と界面活性剤」のコラムで、化粧品作りには界面活性剤は一つ欠かせない成分として説明いたしました。
界面活性剤は「天然」と「合成」の2種類があります。
一般的に「天然」は肌にやさしい、体にいい、といったイメージを持つ方が少なくありません。
しかし、「天然」も「合成」も、使い方次第で肌にダメージを与える可能性があります。
一口で「合成」より「天然」の方がいいというわけではないのです!
目次
1.天然界面活性剤と合成界面活性剤
「天然界面活性剤」は、もともと自然界に存在している成分です。
例えば、サポニン、レシチン、ペプチドなどが有名です。
一方、「合成界面活性剤」は、人工的に合成した成分です。
例えば、ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Naなどがあります。
また、天然由来の界面活性剤も人工で合成するものもあります。
安価に大量生産できることや、洗浄効果が優れているなどの理由から、化粧品や洗浄剤に使われる界面活性剤は合成品の使用が主流となっています。
合成界面活性剤より天然界面活性剤のほうが安心と思われがちですが、実際、天然界面活性剤の代表とされる「石けん」は高級脂肪酸塩でアルカリ性なので、洗浄力が意外と強く、カサついたりして、皮膚トラブルの原因となることがあります。逆に皮脂が多すぎて、洗浄力の弱い界面活性剤を使うと、脂っぽくベタついた感じとなって、ニキビができやすくなったりします。
要するに、天然界面活性剤が合成より好ましいというわけではなく、界面活性剤にはさまざまな種類があり、強さも異なります。ご自分の肌に合うように、上手に使い分けることが化粧品選びのポイントです。
2.界面活性剤の種類と洗浄力の強さ
主な化粧品に使われる界面活性剤の種類と洗浄力の強さについてご紹介します。
(1)陰イオン界面活性剤
陰イオン界面活性剤は、水に溶けるとマイナスの電気を帯びる性質があり、洗浄、気泡作用に優れています。石鹸はその代表です。
洗浄力が強く、泡立ちが良いため、主に洗うことを目的とした洗顔料の主成分として多く用いられています。
脱脂力の強さは種類によって異なります。強い石鹸系に対して、アミノ酸系やカルボン酸系は比較的マイルドであり、敏感肌や乾燥肌の方でも使いやすいタイプもあります。
《陰イオン界面活性剤の成分例》
ラウリル硫酸Na、オレフィン(C14-16)スルホン酸Naなど
(2)両性イオン界面活性剤
マイナスとプラスの両方の性質持ち合わせて、電気的には中和されているため、比較的マイルドな作用をもたらす界面活性剤です。
ベビーシャンプーの成分として用いられたりすることが多く、他の界面活性剤の洗浄力や皮膚刺激性を調整するために使われることも多いタイプです。
《両性イオン界面活性剤の成分例》
コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、レシチンなど
(3)非イオン(ノニオン)界面活性剤
非イオン(ノニオン)界面活性剤は、電気を帯びないタイプで、毒性や皮膚刺激性が殆どありません。
洗浄力は弱いため、洗浄目的で配合する場合には、他の界面活性剤と合わせて用いられることが多いです。
とてもマイルドなため、スキンケア製品やメイクアップ製品にも広く使われています。
《非イオン(ノニオン)界面活性剤の成分例》
アルキルグルコシド、ラウラミドDEA など
(4)陽イオン界面活性剤
陽イオン界面活性剤は、水に溶けるとプラスの電気を帯びる性質があり、界面活性剤の中では最も殺菌作用が強いタイプで、皮膚への刺激も強めになります。
《陽イオン界面活性剤の成分例》
塩化ベンザルコニウム、ベヘントリモニウムクロリドなど
3.界面活性剤との上手な付き合い
化粧品は毎日使う商品です。肌に合わないと感じるときは、まずは優しいタイプの界面活性剤に変えてみるとよいかもしれません。
例えば、洗浄力がマイルドなアミノ酸系やカルボン酸系の界面活性剤、皮膚へのダメージが少ない非イオン界面活性剤を選ぶなどの工夫ができます。
豊富にある選択肢の中から、ご自分に合ったものを上手に使い分けていくようにしましょう。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 )