購買BOMとは?作成手順と作成例、見積入手後の対応などを解説《購買/調達業務の初心者向け》

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1.購買BOM(調達BOM)とは?

製造業で仕事をしている方にとっては「ボム」という言葉になじみがある場合も多いと思いますが、いわゆる部品表であるBOMBill Of Materials)にも種類があります。
この記事で取り上げる「購買BOM」(調達BOM)は、購買・調達部門で作成する手配品リストのことで、「P-BOM」(Purchasing-BOM)と呼ばれることもあります。

製品を製造するとき、たいていの業務依頼書に記載(添付)されている手配品リストは完成品の型式、数量などが記載されています。一般的な市販品は手配品リストにあるものをそのまま手配すればよいのですが、図面をもとに製作する品物は工程毎に発注先を分けるケースがあります。
例えば、ある図面の品物を製作するのに、材料はA社、加工はB社、表面処理はC社といった具合です。

とはいえ、手配品すべてを上記のように工程毎に分けて発注すると煩雑になるので、高額と思われる部品や量産で流れている部品、社内加工品、鋳物などで型を保有している部品に絞ることが現実的には多いです。

 

2.購買BOMの作成手順と注意点

(1)手配品リストから購買BOMを作る

購買BOM作成方法について具体的に説明します。

はじめに、手配品リスト(表1)を用意して、その通りに記述することで購買BOMの作成を試みます。
手配品が過去に実績のあるものであれば、それを参考にしてBOMを作成するとよいでしょう。

 

【表1 手配品リスト】

図番 名称 型式 数量
AB100 プレート A5052 2
AB101 センサ ○○ 1
AB102 減速機付サーボモータ ○○ 1

 

表2は手配リスト(表1)に手配(予定)先、単価欄を追加したものです。

 

【表2 購買BOMの作成過程】
購買BOMの作成過程

 

購買BOMの作成例(主な記入事項とポイント)

一通り記入し終えたら、手配品の類似実績や先輩社員(上司)のアドバイスを元に、図面で製作するものの中で工程毎に分けるものを選び、BOMを階層に分けます
ここで、階層は実際の工程と逆になるように記入していきます。つまり、調達した部品を組立、検査など後工程がある場合は、それらの工程を上位階層とします。

今回の場合、実際の工程は[材料→加工→表面処理]ですが、BOMへの記入は[表面処理→加工→材料]の順に記入し、階層を分けています。

 

【表3 購買BOMの作成例(イメージ)】
購買BOMの作成例

 

表3のように、材料の場合、図面にある寸法に加工代(加工しろ)を加えた寸法を記入します。(必要加工代は加工先と相談になります)
加工の場合、材料支給と表面処理は除く旨を記入します。
また、表面処理の場合、表面処理仕様(○○処理、膜厚○○μmなど)を記入します。

表3の記入例で注意いただきたい点として、手配品リストにあった減速機付サーボモータを減速機とサーボモータに分けていることが挙げられます。一般的に市販品は手配品リスト通りの手配とすることが多いのですが、なかには市販品でも発注先を分けて手配することがあります。

表3が出来上がった購買BOMのイメージになりますが、型式(仕様)、数量が表1の手配品リストと相違無いかを必ずチェックします。問題がないことが確かめられてから、手配先に見積依頼書を送付します。

 

(2)見積入手後のチェックポイントと対応

手配先から見積書を入手したら、型式(仕様)、金額、納期等を確認します。
市販品は型式の改廃や手配品リストの誤記等で、手配品リストに記載の型式と見積書での回答型式が異なる場合があるので、それらの情報をお客様先や設計部門へフィードバックすることも重要になってきます。

表3のように、図面で製作するものは工程を分けて取引先に見積依頼をしましたが、加工の取引先から材料持ち(自社で材料手配)での見積を提示される場合もあります。その場合は取引先とコミュニケーションをとって、まずは理由を把握することが大切です。
一方で、材料支給の条件での見積回答が出てくることもあります。その場合は材料の見積書を取得します。
材料支給と材料持ちで、どちらにするかの判断は難しい場合があります。先輩社員や上司と相談して決定することが不可欠です。

また、工程を分けて見積依頼をしても、加工の見積では見積先から辞退の回答が来て、発注できないケースがあります。このようなケースでは取引先から辞退理由を伺って対応していかなければなりません。

・公差が厳しいのであれば、客先や設計部門に緩和の打診を行う
・一部分の加工が自社で出来ないのであれば、その部分の加工は他社で行う
といったことも検討します。

 
これらの問題は一例にすぎませんが、全てをクリアして正式に購買BOMを登録し、発注に至ります。

 

3.購買BOM作成の必要性(メリット)

ところで、わざわざ購買BOMを作成してから発注しているのはなぜでしょうか。

理由としては、
工程毎に発注した場合、発注品のステータス(状況)管理がしやすくなる
工程毎の責任区分が明確になる
ことが挙げられます。

 
重要部品である場合、加工が終わった段階で検査をすることで、図面通り(例として、表面処理の膜厚を除いた寸法)に出来ているかを判断します。表面処理後の検査で検査NGとなった場合には修正出来ない場合が多く、その品物は廃棄となってしまい、再製作が必要となり工程に及ぼす影響が大きくなります。
図面通りに出来ていなければ、修正してから表面処理を行います。場合によっては、表面処理後の検査も行います。

さらに、加工発注先の負荷状況により、納期までの納入が困難となった場合、他社への転注も材料持ちの場合より容易です。材料は支給品なので、費用は原則横持ち(運搬)費用しか発生しません。

 

4.調達業務では購買BOM作成が面白い

調達部門としては、手配品リストの品物を早く(工程内)、安く(予算内)、良いモノを納品してもらう必要があります。そのためにも、購買BOMを作成して、見積、発注、納品のサイクルを回す経験を積み上げることで、コスト、製作リードタイム(納期)の感覚が養われ、モノづくりの醍醐味を味わうことができるのです。

 
ということで今回は、購買BOM(調達BOM)について解説しました。

 

(アイアール技術者教育研究所 M・T)
 


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