【はじめての生産管理】生産管理のIT化の基本を解説|ERP/EDI/生産管理システム/生産スケジューラ

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生産管理のIT化~ERPやEDIなど~

生産管理という職種に初めて従事する方に向けて、分かりやすくその仕事を解説する本連載。

第4回は、生産管理の業務を進める上でかかせない各種システムについてです。
会社によってERPや生産管理システム、EDIなどが導入されていますが、それらについて解説します。

1.生産管理のIT化について

生産現場では産業ロボットやIoTなどが導入されているように、生産管理でもITを進んで取り入れています。
生産管理の業務で主に導入されている分野は、受注管理資材・購買管理在庫管理工程管理物流管理などです。

製造業においてコンピューターが導入されたのは1960年代後半からでしたが、当時はまだ給与管理や財務管理などのお金に関係する業務だけでした。次第に受注管理や資材管理といった分野にまでIT化が進みました。

1970年代に入ると今でも利用されているMRPシステムが導入されます。
MRPは基準生産計画の生産数を元にして、生産に必要な部品や半製品といった資材の所要量を計算するものです。そこから生産計画だけでなく、資材を外部へ発注する発注計画にまで利用されるようになりました。

これまでのIT化の流れは企業内だけでしたが、近年では企業間を回線で結ぶ広域ネットワーク網ができつつあります。1次請け、2次請けへと親会社の生産計画が迅速に伝わることで、より強固なサプライチェーンが形成されようとしています。

 

2.生産管理で使用する主なシステム

生産管理に関連するシステムには実にさまざまなものがあります。
全てを紹介することはできませんが、ここでは代表的なEDI、ERP、生産管理システム、生産スケジューラについて取り上げたいと思います。

 

(1)EDI

まずは「EDI」(Electronic Data Interchange)です。「電子データ交換」とも呼ばれるもので、企業間における受注書や発注書、納品書などの取引を電子化したシステムとなります。

EDIを導入するまでは受注書や発注書のやり取りをFAXやメールなどでしていました。しかし、取引先ごとに書類のフォーマットが異なったり、紙の書類から自社のシステムに入力する作業が発生したりなど、手間がかかるものでした。

EDIを導入すれば、帳票のフォーマットが統一されたものとなり、データは自社システムに落とし込むだけで保存が可能です。これにより紙の書類を管理する手間がなくなり、手入力で起きるミスがなくなるといった業務効率化が実現できます。

専用回線を使用する従来型のEDIに加えて、近年ではインターネット回線を使用した「Web EDI」も使用されており、企業間の情報共有が進んでいます。

 

(2)ERP

ERP」は基幹システムとも呼ばれるものであり、製造業の多くの企業で導入されています。
基本的な考え方としては、企業の基幹となる業務で、必要となる情報を一元的に管理し、業務の効率化を実現するシステムです。

かつては個々の部門におけるシステムだけが構築されてきました。たとえば会計管理システムや購買管理システム、販売管理システムなどです。これらは各部門の業務効率化を目指したものであり、部分最適化という側面があります。したがって、一つ一つのシステムに基本的な情報を登録しているため、同じようなマスタがいくつも存在することになります。マスタを更新する時には互いのシステムで同期を取るための手間が発生するため、非効率的です。

しかし、ERPではこれらのマスタを一元管理できるため、業務がスムーズに運ぶのです。

 

ERPの構成と主なモジュール(SAPの例)

ERPは特定の業務ごとに機能がまとまっており、ここではERPシステムとして有名な「SAP」のモジュールについて紹介します。

SAPのモジュールの全体構成としては、ロジスティクス系、会計系、人事系、分析系があり、生産管理に関係の深いモジュールはロジスティクス系です。その中には、調達・在庫管理関係や生産管理関係、販売関係が含まれています。

 

ERPの全体像
【図1 ERPの全体像】

 

 

《生産計画/管理》

PPモジュール」とも呼ばれますが、繰り返し生産や見込み生産に対応した機能が揃っています。
ちなみに、特注品などの受注生産の場合にはプロジェクト管理というモジュールがあります。

PPモジュールの主要な機能は生産管理と生産計画です。

生産計画の分野では、需要予測と在庫情報に基づいて基準生産計画を決め、MRPを実行します。
MRPは月次→週次→日次と精度を高めていきます。

計画手配から自動的に作られる製造指図作業実績入力指図の確認などの機能が生産管理の分野です。

 

《在庫/購買管理》

MMモジュール」と呼ばれる機能で、在庫の入出庫や棚卸し、資材などの調達を管理するためのものです。

在庫管理の主な機能は、在庫の受払情報を管理し、在庫数量の把握と在庫金額を管理することです。

購買管理では、[購買依頼→見積依頼→購買発注→入庫検収→請求書照合]といったプロセスを踏むことができ、購買伝票も自動的に生成できます。

 

SAPで実行できる購買プロセスの一例
【図2 SAPで実行できる購買プロセスの一例】

 

《販売管理》

SDモジュール」と呼ばれる機能では、生産した製品の販売プロセスが管理できます。
販売プロセスの一例としては、[引合→見積→受注→出荷→請求]となります。
生産管理の業務においては、受注管理と出荷管理が特に関わっている分野です。

 

(3)生産管理システム

企業によってはERPではなく、生産管理システムを導入しているケースもあるでしょう。
生産管理システムとERPの違いは、ERPが企業の業務全体を一元管理するのに対して、生産管理システムはあくまでも生産に関わる業務だけを一元管理するものです。

生産管理システムの種類によって異なりますが、基本的な機能として以下のようなものが備わっています。

  • 生産計画
  • 工程管理
  • 在庫管理
  • 原価管理
  • 購買調達管理
  • 販売管理
  • マスタ管理

それぞれの機能については、別コラム「生産管理システムの主要機能と選び方、運用のポイント等を解説」で解説していますので、興味があればご覧ください。

 

(4)生産スケジューラ

生産スケジューラ」は、詳細な生産計画を立てることができるシステムです。
生産ラインが持っている生産能力を加味した計画を、分単位、秒単位という細かい精度で立案できる点が特徴です。

ERPにも生産計画の機能はありますが、細かくても日ごとの生産数や品目しか決められず、現場の設備や人員などの生産能力も加味できないことが多いです。

では、生産能力を加味できないとどうなるでしょうか?
作る品目と生産数を決めたにもかかわらず、生産ラインが持っている能力の限度をオーバーしてしまい、とても実行できない計画になってしまうのです。

したがって、多くの現場ではERPでいったん計画を作り、現場の生産能力に見合うようにさらに詳細な計画を詰めていくのです。しかし、この作業は膨大な時間がかかり、工程を熟知していないとできないものです。

生産スケジューラは、このような人手では手間がかかる詳細な生産計画を自動立案できます。
望ましい計画を出すためにある程度のルール設定をしなければなりませんが、納期遅れをしないような着手順や設備や人員の割り当てなどを自動的に導き出すのです。
特に、多品種少量生産が求められている工場には欠かせないシステムでしょう。

 

3.まとめ

全四回の中で、生産管理の基本的な業務を解説しました。
もちろん、これまでに解説したもの以外にも業務はありますが、その全体像は大まかに紹介できたかと思います。

生産管理は納期遵守とコスト低減を実現する重要な役割であることは言うまでもありません。本連載が皆さまの業務に少しでもお役に立てれば幸いです。

 

(アイアール技術者教育研究所 T・H)
 

【連載コラム:「はじめての生産管理」】

 
 

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