購買・調達担当者が絶対に押さえておくべき業務のポイントと心がけ

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購買・調達業務のポイント
今回のコラムでは、製造業における購買・調達・資材関連業務の重要ポイントを整理します。

 

1.品質管理(「前工程」としての責任)

品質マネジメントシステムに関する国際規格ISO9001の8条に、[顧客要求(インプット)⇒製品・サービス(アウトプット)]の実現プロセスを説明しています。

その8.4は「外部から提供されるプロセス、製品およびサービスの管理」であり、まさに購買部門が果たすべき責任と職務です。

自社の品質プロセスにおける自部門の立場・職務を十分理解するとともにサプライヤ(取引先)の視察・監査の際にも、ISO9001のしくみを理解した上で臨むことで、課題点の把握にも役立ちます。

購買品は、検収後、自社の製造工程のどこかで使用されるものですから、重要な「前工程」といえます。
購買品に何らかの故障、不良が生ずれば、品質や納期の上で、自社の工程に重大な支障が生じます。

「後工程はお客様」「自工程保証」という言葉があります。
購買担当者はこの意味を理解して、購買品の工程全体に目を配る必要がります。

後工程はお客様

 

2.購買先管理のポイント

(1)取引先の業務遂行状況の評価

図2のように、事業の3大指標であるQCD(品質、コスト、納期)を中心にして、4M(Man, Machine, Method, Material)の切り口から定量的評価基準を設け、取引実績における評価データを収集蓄積するとともに、定期的もしくは抜き打ち的な訪問監査を実施して、評価精度を高めます。
 
取引先業務の定量評価項目
 

(2)コストダウンの課題発掘

発注者(親事業者)からの一方的な価格押し付けなどはあってはならないことであり、下請事業者(サプライヤー)が希望すれば、共同開発、技術支援、技術指導なども考慮して、成果を共有する仕組みを考案し、共存共栄の精神で、合理的な原価低減を達成できるように、購買担当者は努力しましょう。

例えば、下請け業者の職場状況によっては、3S(整理・整頓・清掃)が行き届かず、ムダによるロスコスト発生があるかもしれません。
定期的に下請け業者を訪問して状況を知ることも大切です。

そして、外部から見た発見点を伝える、下請事業者にアイデア発想を促すなど、下請け業者を育てる意識でのコストダウン推進も必要です。
 

(3)トラブル発生時は?

情報入手、状況受発信の機能を購買部門に一元化して混乱を防止します。
必要に応じて他部門への協力を要請するとともに、場合によっては速やかにサプライヤーの現場へ飛び、状況を確認します。
そして購買が主体となって、サプライヤーと協力して、以下のプロセスを進めます。

  1. 発生原因の明確化
  2. 再発可能性の検証
  3. 具体的改善の実行とフォローアップ

トラブルが発生したとき、納期や品質への影響の懸念から、社内各部門がサプライヤーを責め立てる場面が発生する可能性があります。

その時には購買担当者は、サプライヤー側の立場に立って、問題解決のための対策立案、実行を冷静に主動することが大切です。

サプライヤ側に立つ

 

3.海外調達に注意

外国為替及び外国貿易法(外為)と輸出貿易管理令(輸出令)に規定される「製品・サービス」にはハードウエアのみならず、書類、図面、などソフトウエア(役務)も含まれます。
海外に見積依頼する際、取引先に供与される仕様書、図面はまさに役務の提供です。
注意点は、「伝達手段によらない」ということです。伝達手段は正式文書のみならず、口頭、電話、メール、FAXなどあらゆる手段が含まれます。

従って、正式文書を送付する前であっても、技術内容について、電話など口頭で伝える場合は、事前に輸出令の規定に照らして、適正な手続きを踏む必要があります。

 

4.CSR調達、グリーン調達を考慮

CSR(Corporate Social Responsibility) とは企業の社会的責任のことです。

CSR調達とは、「調達においても社会的責任を果たす」ということで、取引先に調達方針を開示して広く理解を求め、協力要請していきます。

CSR調達指針の作成にはISO26000が参考となります。
ISO26000が掲げる7つの中核課題の1つに「環境」があります。
 

「グリーン購入法」とは?

正式名を「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」といい、環境負荷低減に努力する企業から優先的に購入する方針を促進するために制定されたものです。

これからの購買は、品質、価格、納期など従来からの評価基準に加えて、取引先の環境負荷軽減への取り組み状況も考慮することが必要です。

 

5.設計・開発部門との関係とこれからの購買担当者像

購買部門と社内各部門との関係をまとめると図4のようになります。
ここでは、設計・開発部門との関係について説明します。

購買と各部門との関連図

従来は、顧客要求が購買品サプライヤーへ伝達される流れは下記の様でした。

顧客仕様 ⇒ 設計(購入品技術仕様書作成) ⇒ 購買部門 ⇒ サプライヤ

近年、顧客要求納期が従来よりも短縮される傾向にあります。また、設計が従来以上に多忙となり、購入品仕様書作成が遅延することも多くなります。
すると調達リードタイムが圧縮されて、見積に十分な時間をかけることができず、結果として購入品の品質に影響を及ぼす事態が発生します。

解決策として早い段階で購買が関与し、購入品の技術仕様作成において設計との協業を行うフロントローデイング化があります。
これを開発プロセスにも適用することで開発工程が促進されることが期待できます。
開発製品の新しい購入品技術仕様検討にも購買が参加するコンカレントエンジニアリング(CE)が重要になります。

これからの購買担当者は、購入品の技術仕様に明るい「調達エンジニア」となることが必要です。
自分が担当する購買品が自社製品のどこに使用され、どのような役割を果たすのか、よく理解するようにしましょう。

 
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)
 


※関連コラム:製造業の「購買・調達業務」ってどんな仕事?はこちら


 

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