【生産技術のツボ】プラスチック成形用の金型技術(抜き勾配とアンダーカット形状)
金型は、日本のモノづくりを支える根幹となる技術のかたまりです。
主に、プラスチック成形用とプレス加工用の金型に分類されます。
今回はプラスチック成形金型に特化し、この中でも初めて学ぶ人にとっては聞きなれない用語でもある「抜き勾配」と「アンダーカット形状」について説明します。これらは、金型技術のツボとなる重要項目です。
1.プラスチック成形とは
まずは、本題に入る前に、プラスチック成形について簡単に説明します。
材料樹脂をある決まった形状にするため、樹脂を金型に注入し、成型品(製品)を作ることがプラスチック成形です。
下図は、プラスチック成形の中で最も広く使用されている「射出成形」の例です。
2.抜き勾配
抜き勾配とは. 金型から成形品を取出しやすくするために、金型につける勾配のことです。
なぜ抜き勾配が必要かについて説明します。
(1)抜き勾配が無い場合
以下の図に示しますように、抜き勾配がない場合には製品と金型がこすれてしまい、成形品(製品)は型から取り出しにくく、傷だらけの不良品になってしまいます。
(2)抜き勾配がある場合
以下の図に示すように、抜き勾配がある場合は製品と金型がこすれないので、型から取り出しやすく、傷の発生がなく良品の生産が可能です。
但し、勾配の角度は1°以上あれば良く、勾配が無いと不良品になります。
3.アンダーカット形状
成形加工において、金型から成形品を取り出す際に、通常の型(固定型・可動型)を開く方向のみでは、成型品を取りだせない形状のことです。
例えば、下の図のような形状がアンダーカット形状です。射出成形の金型でよく使用される用語です。
尚、溶接不良で使用される「アンダーカット」とは異なった意味ですので注意が必要です。
それでは具体的なアンダーカット形状の成形方法を示します。
横穴のアンダーカット形状は、以下のようなスライドコアの追加により成形が可能となります。
スライドコアを動作する方法は、油圧シリンダーやエアーシリンダー、アンギュラピンなどによる方法があります
(アイアール技術者教育研究所 T・I)