毒劇法とは?押さえておきたい基本事項・まとめ解説!

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毒劇法の基礎知識

1.「毒物及び劇物取締法」の概要

まず、毒劇法(正式名:「毒物及び劇物取締法」)の「目的」を見てみましょう。

第一条 この法律は、毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とする。

毒劇法は、1950年に公布(施行日:1950年4月1日)された法律で、日常流通する有用な化学物質のうち、急性毒性による健康被害が発生するおそれが高い物質を毒物や劇物に指定し、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的としています。

毒物や劇物を取り扱う場合には、毒物劇物営業者の登録制度、容器等への表示、販売(譲渡)の際の手続、盗難・紛失・遺漏等の防止の対策、運搬・廃棄時の基準などが定められ、不適切な流通や漏洩等が起きないよう規制されています。

 

2.毒劇法における「毒物」「劇物」とは?

厚生労働省の資料「毒劇法に基づく容器等への表示及び情報提供について」では、以下のように記載されています。

  • 毒物: 毒劇法別表第1、毒物及び劇物指定令(以下「指定令」という。)第1条に記載されている物質です。
  • 劇物: 毒劇法別表第2、指定令第2条に記載されている物質です。
  • 特定毒物: 「毒物」のうちで毒性が極めて強く作用の激しいもので、人に対する危害の可能性が著しいものは「特定毒物」に指定されています。具体的には、毒劇法別表第3、指定3条に記載されている物質をいいます。

指定令でも定められるようにしたのは、新しく毒性または劇性のあるものが発見されたり、創られたり、輸入されたりする可能性を考慮して、法律の改正を待つまでもなく、政令で指定できるようにしたからです。
毒物劇物の判定は、種々の特性(動物やヒトにおける知見等に基づいて、その物質の物性、化学製品としての特性等を勘案して行われ、厚生労働省の諮問委員会にて決定されます。

なお、「毒物」または「劇物」に該当する化学物質であっても「医薬品」及び「医薬部外品」として使用される場合には、薬機法の規制を受け、毒劇法の規制は受けないこととされています。

また、品目によっては含有量により毒物、劇物、非該当と取り扱いを分けているものや原体と製剤で取り扱いが異なる物もありますので注意が必要になります。
毒劇法別表や指定令には、毒物・劇物が以下のように記載されています。
 

毒劇法別表等における毒物・劇物の記載について

① 物質名のみ記載されている場合
例)キシレン
⇒ 化学的純品(毒劇法においては「原体」という。いわゆる100%の物質)のみ対象となる。
 例えば、キシレン50%を含有する製剤は、毒劇法の対象外となる。
 

② 「○○を含有する製剤」と記載されている場合(以下の3、4の場合を除く)
例)クロルピクリンを含有する製剤
⇒ クロルピクリンがどのような濃度であっても、毒劇法の対象となる。
 ただし、不純物(意図的に添加していないもの)は除く。
 

③ 「○○を含有する製剤。ただし、△%以下を含有するものを除く」と記載されている場合
例)水酸化ナトリウムを含有する製剤。ただし、水酸化ナトリウム5%以下を含有するものを除く。
⇒ 5%以下の水酸化ナトリウム製剤については、対象外となる。
 

④ 物質名の後ろに、「ただし、次に掲げるものを除く。」と記載されている場合
例)鉛化合物。ただし、次に掲げるものを除く。
イ 四酸化三鉛 ロ ヒドロオキシ炭酸鉛 ハ 硫酸鉛
⇒ イ~ハに掲げている除外品目に該当すれば、対象外となる。

 

3.毒物等の取り扱い

毒物、劇物、特定毒物の取り扱いは、毒劇法で種々規定されています。一部をご紹介いたします。
 

(1)製造・輸入・販売等の禁止

毒物又は劇物の製造業の登録を受けた者でなければ、毒物又は劇物を販売又は授与の目的で製造してはならない(毒劇法第3条)とされています。
製造以外にも、輸入、販売、販売目的の貯蔵等の禁止規定があります。特定毒物についても同様な規定があります(毒劇法第3条の2)。
これに違反すると、「三年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(毒劇法第24条)という重い罰則があります。

毒物又は劇物の製造業又は輸入業の登録については、毒劇法第4条で、「特定毒物」を取り扱う「特定毒物研究者」の許可は(毒劇法第6条2)でそれぞれ規定されています。

なお、毒物劇物営業者は、毒物又は劇物を直接に取り扱う製造所、営業所又は店舗ごとに、専任の毒物劇物取扱責任者を置き、毒物又は劇物による保健衛生上の危害の防止に当たらせなければならない(毒劇法第7条)とされ、毒物劇物取扱責任者の資格は毒劇法第8条で規定されています。

 

(2)購入手続き

毒物劇物を購入するときには、法に定められた下記記載事項を記入し、印鑑を押印した譲受書を提出しなければならない(毒劇法第14条、第15条)とされています。

  • 毒物または劇物の名称及び数量
  • 購入年月日
  • 職業、住所、氏名(印鑑が必要である)等

その他購入には、当該毒物劇物の安全データシート(SDS)等の情報を入手し、取扱い方法を必ず確認する、等々の決まりがあります。

 

(3)保管管理

盗難・紛失防止措置として実施しなければならないことが定められています。

  • 盗難にあい、又は紛失することを防ぐのに必要な措置を講じなければならない(毒劇法第11条)。
  • 毒物劇物であることが誰にでもわかるように毒劇法では容器に毒劇物の表示をする。保管庫についても毒物劇物専用のものを設置し、容器と同様に毒物は赤地に白文字で「医薬用外毒物」、劇物には白地に赤文字で「医薬用外劇物」と明記する(毒劇法第12条第3項)。
  • ・その他、毒物劇物は保管庫外に放置してはいけない 等々

 

(4)廃棄方法

毒物劇物は、廃棄の方法については政令で定める技術上の基準に従わなければ、廃棄してはならない(毒劇法15条の2)とされています。

  • 自己処理する場合は、適切な方法(中和・加水分解・還元・酸化・希釈)によって、毒性をなくすなど定められた基準に従って処理した上で廃棄しなければならない。
  • 下水道法、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律など他の法律にも抵触しないように十分配慮しなければならない。

その他にも毒物又は劇物を取り扱う者について、多くの規定があります。

  • 第11条(毒物又は劇物の取扱(盗難紛失漏えい流出の防止の義務等))
  • 第16条の2(事故の際の応急措置や通報等の義務)
  • 第17条第2項から第5項まで(立入検査等に関する事項) 等々

 

4.表示及び情報提供の義務について

毒劇法における毒物又は劇物に該当する場合、容器・被包への表示その毒劇物の情報(SDS)の提供が義務となります(毒劇法12条、13条、14条等)。

毒物・劇物に関わる下記の者が対象となります。

  • 毒物劇物の製造、輸入、販売又は授与を行う方(製造業者、輸入業者、販売業者)
  • 主な対象:化学品の製造業者、輸入業者、販売店、小売店

  • 毒物劇物を使用される方(業務上取扱者)
  • 主な対象:試験研究機関、特定の農薬を使用する農業団体

 

また、毒物、劇物に該当する製品のラベルには、下記のような項目が記載されます。

  • 「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」の表示
  • 毒物又は劇物の名称
  • 毒物又は劇物の成分及びその含量
  • 厚生労働省令で定める毒物又は劇物については、それぞれ厚生労働省令で定めるその解毒剤の名称(有機燐化合物については解毒剤として PAM、硫酸アトロピン)
  • 毒物又は劇物の取扱及び使用上特に必要と認めて、厚生労働省令で定める事項(製造業者又は輸入業者の登記上の名称・所在地、劇物たる家庭用品としての注意事項など)

毒劇法12条から14条違反には、24条の罰則規定があるので注意が必要です。
この他、表示・情報提供等については、化審法、JIS規格(JIS Z 7253)などが関係してきますので、そちらも参照するようにしてください。
 

5.毒物劇物の検索

特定の物質が毒物又は劇物に該当するかどうかを調べるには、物質名又はCAS番号で検索できる以下のデータベースを用いる方法があります。

《毒物劇物の検索》

国立医薬品食品衛生研究所
毒物及び劇物取締法 (毒劇法) - 毒物劇物の検索
(※URL:http://www.nihs.go.jp/law/dokugeki/kennsaku.html
 

《化学物質総合情報提供システム》

製品評価技術基盤機構
(※URL:http://www.safe.nite.go.jp/japan/db.html
 

6.必ずチェックしておくべき毒物法関連情報・まとめ

最後に、毒劇法に関わる方であれば絶対に押さえておくべき重要サイト・資料をまとめました。
 

《毒劇法に関する法令や通知について》

① 厚生労働省法令等データベースサービス
(※URL:https://www.mhlw.go.jp/hourei/
「本文検索へ」で「毒物」で検索すると、法や指定令等がヒットします。

② 毒物及び劇物取締法に関する通知等 ホームページ(一部の通知)
(※URL:http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/tuuti.html
 

《毒物及び劇物取締法Q&A》

(※URL:http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/situmon/qa.pdf
 

《毒劇法に基づく容器等への表示及び情報提供について》

(※URL:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/130813-01-04.pdf

 
必要に応じて、上記の関連サイト・資料等を参照しながら実務を進めてください。
 

(日本アイアール株式会社 A・A / S・T)

 

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