オーファンドラッグとは?開発支援制度、メリット/デメリットなど要点解説

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オーファンドラッグ

さまざまな疾病の特効薬が開発される中、新たに注目を集めているのが「オーファンドラッグ」です。

本コラムでは、オーファンドラッグの概要と支援制度をご紹介します。
オーファンドラッグ開発に興味がある方はもちろん、オーファンドラッグへの参入をまだ検討していない企業の方も、ぜひ一度目を通してみてください。

1.オーファンドラッグとは

オーファンドラッグOrphan Drug・OD)は、日本語で「希少疾病用医薬品」と訳し、およそ550品目(※)が指定されてます。

オーファン(Orphan)とは「孤児」を意味する英語です。
患者数が少ない希少疾病が、医薬品開発から取り残された孤児のようだと、オーファンドラッグ(Orphan Drug)と名付けられました。

以下で、オーファンドラッグの概要と指定基準についてご紹介します。

(※2023年2月現在)

 

(1)オーファンドラッグの概要

先程も述べたとおり、オーファンドラッグ(Orphan Drug)は、日本語で希少疾病用医薬品と訳します。
なお、「希少疾病」は全国で患者数が5万人未満の疾病を指します。
つまり、オーファンドラッグとは、患者数が5万人未満の稀有な疾病に対する医薬品のことです。

患者数が少ない疾病は、開発費用の回収リスクや安定供給の難しさから、医薬品等の開発が進みにくい傾向があります。そのため、希少疾病患者が最適な治療を受けられるよう、1980年代頃から、欧米を中心にオーファンドラッグ開発に対する支援制度が設立され始めました。日本では、1993年の薬事法改正でオーファンドラッグ開発を推進する制度が設立されています。

後ほど具体的にご紹介しますが、オーファンドラッグに指定された医薬品の開発は、さまざまな公的支援が受けられます。

また、オーファンドラッグは新薬創出加算制度の対象です。
新薬創出加算は、特許期間中、薬価の引き下げを抑える制度です。新薬の価格を維持することで、企業が開発費を回収できるよう、さまざまな条件をクリアした一部の新薬に適応されます。

新薬が出にくくなる中、オーファンドラッグ開発を後押しする制度が設けられたことで、オーファンドラッグ開発に踏み切る企業は年々増えています。

 

(2)オーファンドラッグの指定基準

オーファンドラッグの指定基準は下記の3点です。

  • 対象者数
  • 医療上の必要性
  • 開発の可能性

上記の観点から、オーファンドラック指定の有無が決定されます。
それぞれの基準を具体的にご紹介します。
 

対象者数

医薬品の対象となる患者数が、全国で5万人未満である疾病が対象です。
ただし、対象となる疾患が指定難病の場合、難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)で規定する人数(全人口の千分の一程度)までが対象者数の範囲となります。

 

医療上の必要性

重篤な疾病が対象となります。
加えて、以下のいずれかに該当する疾病が対象です。

  • 代替する医薬品等、または治療法がない
  • 既存の医薬品等と比較し、著しく高い有効性または安全性が期待される

オーファンドラッグ認定には、とくに医療上の必要性が高いと認められる必要があります。

 

開発の可能性

対象となる疾病に対し、医薬品等を使用する理論的根拠がある必要があります。
また、その開発計画の妥当性の認定も求められます。

 

2.オーファンドラッグ開発の支援制度

オーファンドラッグ開発の支援制度には、以下があります。

  • 助成金の交付
  • 指導・助言
  • 税制措置
  • 優先審査
  • 再審査期間の延長

それぞれについて詳しくご紹介します。

 

(1)助成金の交付

オーファンドラッグの開発には、医薬基盤・健康・栄養研究所NIBIOHN)から、助成金の交付が受けられます。

 

(2)指導・助言

オーファンドラッグの試験研究は、厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)および医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)から指導・助言が受けられます。

また、医薬品医療機器総合機構(PMDA)では、オーファンドラッグの優先対面助言制度があります。
さらに、オーファンドラッグは、通常品目よりも安く治験相談を受けることができます。

 

(3)税制措置

オーファンドラッグは、医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)の助成金交付の対象期間に行う、試験研究費総額の20%を税額控除できます。
ただし、助成金額は含まれません。

 

(4)優先審査

オーファンドラッグに指定された製品の承認審査は、通常項目の医薬品等より優先して受けることができます。
さらに、オーファンドラッグに指定された医薬品の承認審査に係る手数料は、通常品目よりも安くなります。

 

(5)再審査期間の延長

通常項目の新医薬品の再審査期間は8年ですが、オーファンドラッグに指定・承認された新医薬品の再審査期間は、最長で10年間延長されます。

 

3.オーファンドラッグ開発のメリットとデメリット

支援制度が充実しているオーファンドラッグですが、開発をためらう企業が多いことも事実です。

最後に、一般的に認識されるオーファンドラッグのメリットとデメリットをご紹介します。

 

(1)オーファンドラッグ開発のメリット

オーファンドラッグ開発のメリットには、下記があげられます。

  • 公的支援制度が充実している
  • 新薬創出加算の対象になる
  • 競合する医薬品が少ない

公的支援制度が充実しているため、医薬品開発にかかるコストを抑え、より迅速に新医薬品を市場へ届けることができます。日本では、新医薬品の承認に期間を要することが課題にあげられていますが、優先的に審査を受けることで、通常品目と比較し、短期間で承認が受けられます。特許期間中により長く市場で販売できれば、開発費用の回収にも効果的です。

また、新薬創出加算の対象となるため、特許期間中の価格低下を抑えることができます。
[※関連記事:「新薬創出加算とは?」はこちら]

患者数の多い疾病では、すでにさまざまな特効薬が開発されており、新医薬品が開発されづらい現状はご存じの方も多いでしょう。
一方で、希少疾病は競合する医薬品が少ないため、開発に成功すれば患者へ優先的に供給できるうえ、価格低下が抑えられる効果も期待できます。

 

(2)オーファンドラッグ開発のデメリット

オーファンドラッグ開発のデメリットは、下記があげられます。

  • 採算面のリスクがある
  • 安定供給が難しい
  • 安全性のリスクが高い

患者数が少ないオーファンドラッグでは、採算面のリスクがあることはたしかでしょう。
また、治験データが少ないため、全例での使用成績調査(全例調査)が求められ、その分のコストも必要です。

患者数が少ないため、安定供給の難しさや、治験データが少ないことによる安全性のリスクも否定できません。

しかし、これらのリスクがあることで、オーファンドラッグの開発は、これまで進んできませんでした。
その分、オーファンドラッグの開発には、社会貢献の一面があり、企業のイメージアップを含めると、デメリットとは言い切れないでしょう。

 

4.オーファンドラッグ開発の今後

競争が激化する医薬品開発において、近年、新たに注目を集めているのがオーファンドラッグです。
今後、助成金や控除額のさらなる増額や、米国のような市場独占権など、より支援制度が充実すれば、オーファンドラッグ開発により注目が集まることでしょう。

当研究所サイトでは、オーファンドラッグ開発に関するセミナー開催情報も随時ご紹介しております。
オーファンドラッグ開発に興味のある方は、ぜひ受講を検討してみてください。

 

(アイアール技術者教育研究所 S・N)

 


《引用文献、参考文献》


 

 

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