シリコン系光導波路とフォトニクスデバイス集積技術の開発
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目次
「光導波路」とは、図1のように、光を閉じ込めて特定の方向に導く構造を持った媒体のことです。つまり、光の伝送路を意味します。
光を特定の方向へ導く役割を果たすという点で光ファイバと光導波路は同じです。
「光導波路」という言葉はより広い概念で、厳密には光ファイバを含んでいます。
【図1 光導波路のイメージ】
光導波路の構造は、図2に示すように、その断面形状によって、円状・層状の大きく二つに分類することができます。
【図2 断面形状のイメージ】
プレーナ導波路そしてチャネル導波路は、断面形状が平面のものであり、図3に構造のイメージを示します。
【図3 プレーナ構造/チャネル構造のイメージ ※引用[1]】
「プレーナ導波路」は、二次元的に光を閉じ込める構造です。通常、基板とその上に配置された薄い膜から構成されており、その間を光が伝送します。
それに対して、「チャネル導波路」は三次元的にも光を閉じ込めることができます。通常、基板上に微細な溝などでチャネルを作ります。光はそのチャネルを伝送します。
光導波路構造に使用されている材料も様々です。
ガラス薄膜を形成するものからイオン拡散を利用して作られるものなどがあります。
基板上に光導波路の他に光学素子などを設置し設計された「光導波路基板」として購入することもできます。
基板を構成する材料などによって種類があるので、3つほど紹介します。
これらの光導波路基板を使用する際は、設計や応用先に応じて選択しましょう。
光導波路がどのような場面で使われているのかをご紹介します。
光を特定の方向へ伝播させるために必要なことはなんでしょうか?
それは、「光を閉じ込める」ことです。
では、どのように光を閉じ込めるのか?
答えは、「屈折率の異なる材料で光を挟む」ことです。
そうすることで、光は反射を繰り返して伝播されます。
「スラブ光導波路」を用いてもう少し詳しく説明していきます。
ちなみに「スラブ」は、「平板」を意味します。
【図4 スラブ光導波路を横から見たイメージ】
スラブ光導波路を横から見るイメージが図4です。
クラッド層とコア層に分かれており、それらの層はお互いに屈折率が異なります。
そのため、光はコア層内を反射して伝播していく仕組みになっています。
ここで、反射する時に、互いの屈折率の大小の違いで全反射して進む場合と一部がクラッドへ漏れ出る場合があります。それらを表した図が図5,6になります。
【図5 全反射閉じ込め構造導波路[2]】
【図6 漏れ構造導波路[2]】
図5のように全反射構造であれば、光損失を最小限に抑える事ができますので、全反射構造が一般的には好まれます。しかし、導波路の設計や使用材料によっては全反射が実現できず、図6のような反射時に一部が漏れ出すこともあります。
そのような場合を意図的に使用する例として、レーザ共振器やビームスプリッタがあります。ただし、この場合でも光損失をなるべく減らす工夫がなされています。
光導波路を伝送する光波は、図7のように「導波モード」と「放射モード」の二つに分けることができます。
図6のようなフルネル反射において、コア層内で反射していく光の伝わり方が「導波モード」、そしてコア層の外部へ出ていく一部の光が「放射モード」になります。
【図7 導波モード/放射モード】
このうち、導波モードは、さらに「シングルモード」と「マルチモード」に分類されます。
シングルモードは、その名の通り一つの導波モードしかありません。一方で、マルチモードは複数の導波モードが存在しています。
簡単に説明すると、一つの導波モードを持つという事は周波数成分がただ一つ(つまり波長成分もただ一つ)であるということで、複数の場合は周波数成分が多く含まれているということです。
図8は、複数の周波数の光波のイメージです。
【図8 複数の導波モードが存在するイメージ】
光が導波路内を伝播する際に全てがコア層に留まりながら進むわけではなく、一部が外部へ漏れ出たりすることがありました。
この場合、コア層とクラッド層の両方に存在する光エネルギーのうち、コア層の中にある光エネルギーの割合を「光閉じ込め係数」と呼びます。
つまり、光閉じ込め係数が大きいほど導波路内に光が多く存在し、漏れ出ている光が少ないことになります。
この光閉じ込め係数というパラメータは、光導波路の伝播効率等の性質を考える上で重要な指標になります。
本記事では、光導波路の基礎知識ということで、光導波路の用途や種類から基本原理までを説明しました。
光導波路について理解が少しでも深まっていただけたら嬉しいです。
(アイアール技術者教育研究所 Y・F)
《引用文献、参考文献》