【機械製図道場・中級編】機械要素「ばね」の製図を解説!
今回は、お馴染みの機械要素の一つである「ばね」の製図方法を解説します。
目次
1.機械要素「ばね」の役割
ばねは、次のような働きをする機械要素です。
- 振動や衝撃を緩和する
- エネルギーを蓄えて動力として供給する
- 荷重を計測する
- 機械部品に押し付け力を与える
ばねは、たわむことで上記の役割をはたすものですから、たわみに対して塑性変形することのない鋼材である「ばね鋼」が使用されます。
2.ばねの主な種類
(1)コイルばね
線状ばね鋼をねじ状に巻いたものです。
引張ばね、圧縮ばね、ねじりばね、の3種類があります。
(2)板ばね
ばね鋼板を数枚重ねたもので、車両と車軸の緩衝用として使用されます。
(3)さらばね
皿状のばね鋼を、1枚もしくは数枚重ね合わせたものです。
たわみは少なく、大きな負荷容量を持つことができます。
(4)竹の子ばね
幅広の帯鋼または平鋼を渦巻き状にして内側に向かうにつれて軸方向に伸ばしたような形で、緩衝用などに用いられます。
(5)うず巻きばね
帯状薄板か針金を渦巻き状に巻いたもので、いわゆる「ぜんまい」のことです。
3.図面におけるばねの表示
ここでは、最も多く用いられる圧縮コイルばねについて、表示方法を学ぶことにします。
ばねは、機械要素のひとつであって、規格品が多く市販されています。
(1)要目表
規格にない仕様の場合は、材料の直径、コイル外径、平均径、総巻き数、有効巻き数、自由長、ばね定数、などの仕様を記入した要目表を提示してばねメーカに発注します。
(2)ばねの作図法
① 断面表示、外形表示について
素材の断面または外形と直線で表し、圧縮コイルばねは、端面図で巻始め・巻終わりを明確にします。
端末の厚さは、線径の1/4を標準とします。
自由高さ(自由長)、外径、平均径、を寸法表示します。中間部分を省略することもできます。
この場合は、平均径に相当する線を1点鎖線で表示します。
《ばねの作図に関する注意点》
(ⅰ)荷重のない状態で描く
荷重のかからない自由高さ(自由長)の状態を作図します。
(ⅱ)荷重と高さの関係を示すときは線図で表す
指定高さ(取付高さ)、最大圧縮高さにおける荷重の関係を下図のような線図で表示します。
② 簡略表示について
ギザギザの太い実線で簡易図示することができます。
下図のように、圧縮ばね、は両端を直線で、引張ばね、は両端を円弧で、それぞれ表します。
機械を設計するとき、ばね単品の製作図(部品図)を製図する機会はあまりないと思いますが、ばねを用いる機械の組立図などには、ばねを表示する必要があります。
上記のいずれかの方法で、適切にばねを図示するようにしてください。
4.知っておきたい「ばね」に関する周辺知識
1)ばね定数とばねのたわみ
コイルばねのたわみ(自由高さからの変位量)をδ[mm]、ばね材料の横弾性経緯数をG[N/mm2]、有効巻き数をN、線径をd[mm]、平均径をD[mm]、荷重をP[N]とすれば、
たわみは、次式で求めることができます。
δ=8ND3P/(Gd4)
ばね定数をk[N/mm]とすれば、フックの法則より P=kδ であるので
k=P/δ=Gd4/(8ND3)
となります。
2)ばね鋼
ばね鋼には、比較的大型のコイルばねや板ばねに適用される熱間成形用と、小型ばねに適用される冷間成形用とがあります。
前者は、JIS G4801に材料記号SUPで、ばね鋼として8種類が規定されています。
後者は、SW(硬鋼線)やSWP(ピアノ線)が代表的ですが、他にも多くの材料が規格化されており、耐熱・耐食性が要求される用途向けに、Co基やNi基の合金製のものや、非磁性、導電性の用途に銅合金製のものもあります。
次回は機械要素の続きとして、「歯車」の製図方法を解説いたします。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)