【機械製図道場・初級編】寸法補助記号② 円弧の半径寸法(R寸法)と円弧の長さの表示方法

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円弧表示・円弧の長さに関する製図方法

前回の「寸法補助記号① 絶対に知っておくべき代表的な記号」では、丸みを持った箇所、角の面を取った箇所など、様々な形状に関する情報を正しく作り手に伝わるようにするために寸法数字の前につける「寸法補助記号」について学びました。

今回は、円弧の半径寸法表示のバリエーションと、円弧長さの寸法表示について学びます。

R寸法表示のバリエーション

(1) Rの省略

半径を示す寸法線を、円弧の中心から引く場合は、記号Rを省略することができます
この場合、円弧中心を黒丸もしくは短い細線実線の十字で明確に表します。

Rの省略
 

(2) 小半径で寸法記入の余地がない場合

以前の連載コラム「寸法数字等を記入するスペースが無い場合の寸法表示方法」で解説した狭隘部の寸法記入方法と同様に、寸法線の矢印の向きを工夫して下図の例のように表示します。

寸法記入の余地がない場合
 

(3) 半径が大きくて線が図枠範囲内に収められないとき

円弧中心を示す必要があるが、半径が大きくて半径寸法線を図枠内に引くことが困難な場合は、中心線を移動させ、寸法線をZ型に折り曲げて表示します。

円弧中心は、十字または黒丸で表し、基準線からの位置を表示します。
あるいは、引出線につなげた参照線の上側に半径の寸法数値を、下側に円弧の中心位置を、X,Y,Zの座標値で表すこともできます。
寸法線の矢印の付いた側(図形の円弧に当たる側)は、正規の円弧中心に向くようにする必要があります。

半径が大きい場合の寸法表示
 

円弧長さと弦の区別の仕方について

円弧半径ではなくて、円弧部分の長さを表示するときは、弦の長さを示すのか、円弧長さを示すのかを区別する必要があります。

円弧長さを表示する場合は寸法数字の前に円弧記号◠をつけます
記号がない場合は、弦であることを示します。

円弧長さの寸法線は、該当する円弧と同じ半径の円弧で表し、弦の寸法線は、弦に平行な直線とします。

円弧長さと弦

様々な円弧表示の方法について演習してみましょう。

 

【例題】円弧半径と円弧の長さの表示

《 問題 》

下図形状における3か所の円弧半径を上記(1)~(3)のバリエーションを用いて表示し、1か所の円弧長さは円弧記号を用いて表示をしてください。
円弧半径と円弧長さ以外の寸法は記入不要とします。

補助記号例題

《 解答 》

解答例はここをクリック
補助記号解答

 

《 例題の解説 》

解説はここをクリック

上部の円弧は半径が大きく中心が紙面からはみ出すため矢印と寸法数字の部分のみ真の円弧中心に向かい、途中から折り曲げ線で表示しています。
底外周の半径は中心位置を明示してRを省略しています。
底の窪み付け根は寸法線を外へ出して寸法数字をわかりやすく表示しています。

 

【様々な円弧表示方法】こんなときどうする?

《 円弧部分の角度が大きい場合 》

円弧を表示するとき、円弧部分の角度が大きい場合には、下図のような表示方法があります。
左のように引き出し線で表示するか、右のように円弧記号をつけない円弧長さの後にカッコ内にR寸法を表示します。

円弧部分の角度

 

《 円弧が複数隣接する構成の場合 》

下図のように各円弧中心を黒丸で表示して、円弧半径が変わる境界に2つの寸法線を表示して、連続性を明確に示します。

円弧が複数隣接する構成
 

ということで、今回は「円弧」に関する様々表示方法をとり上げました。
機械部品には様々な円弧形状で構成されるものが多くあるので、今回学んだ表示方法を活用して、適切に円弧形状を表示できる製図スキルを習得しましょう。
 
次回は、機械製図における「穴」の表示方法について解説します。
 

(アイアール技術者教育研究所 S・Y)

 

 

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