【機械製図道場・初級編】寸法数字等を記入するスペースが無い場合の寸法表示方法

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狭い箇所の寸法数字表示方法

前回のこの連載では、寸法数字の表示方法に関する原則の解説と例題演習を行いました。
図面の受け取り側(作り手)に設計意図を明確に、誤解されることなく伝えるための寸法表示の要領がつかめたことと思います。

寸法数字は、両側に矢印のついた寸法線の上(垂直の場合は左)に記入します。
しかし、寸法が小さい場合は、寸法線の幅も狭くなり、両矢印と寸法数字を書き入れるスペースがありません。さて、どうすれば良いでしょうか?

今回は、寸法表示の続きとして、狭い箇所の寸法数字表示方法について、解説と例題演習を行います。

狭い箇所に寸法数字を表示する方法

狭隘部(狭小部)の寸法数字の表示方法としては3つあります。
 

1) 寸法線の矢印の代りに、黒丸もしくは短い斜め細線を用いる

寸法線の両端から、狭隘部が連続している場合は、左端と右端から通常とは逆の向きに矢印を外へ出し、その上に寸法数字を表示します。
寸法数字
 

2) 部分拡大図を使って、狭隘部の寸法を表示する

当該箇所を細線の円で囲ってAのような記号表示を行い、近傍にA部詳細として局部の拡大図を描いて寸法数字を表示します。拡大図には、その図が描かれている尺度を記入します。
溝底の丸み形状等、幅寸法以外の寸法・形状情報も表示する必要がある場合は、部分拡大図が適しています。

部分拡大図の活用
 

3) 引き出し線を使って寸法を記入する

狭隘部の寸法線から細線で斜め上に引き出し、終点から水平に細線を引いてその上に寸法数字を記入します。
引き出し線の始点には矢印や黒丸などはつけません。
引き出し線
 

では、溝が多数設けられた軸の例題で、狭隘部寸法表示の方法について練習してみましょう。
 

【例題】狭隘部の寸法表示方法

《 問題 》

下図のシャフトは、全長100、溝がある箇所の山部の幅はすべて5、左側の溝は幅3で底に丸みがあります。
中央部は溝の幅は2,底の丸みはありません。
右の溝は2か所あって、溝の幅が1.5です。底の丸みはありません。

各溝部の長手方向寸法を、解説にある狭隘部寸法表示に関する3つの方法を使い分けて表示してください。
部分拡大図を用いる場合の尺度は2倍尺とします。
全長も記載しましょう。直径方向や、左の溝底形状の寸法表示は不要とします。

寸法数字表示方法

《 解答 》

解答例はここをクリック
寸法数字表示方法の解答

 

《 例題の解説 》

解説はここをクリック

左側は、底に丸みがあり、詳細情報を図示する必要があることから部分拡大図としました。
尺度は、2倍尺と指定があるので2:1としましたが、当該箇所の寸法や形状を無理なく表示出来る尺度とします。

右側は、溝の幅が狭く、しかも複数連続していることと、寸法数字が小数点以下を伴うので、引き出し線を利用するほうが、寸法数字の読み取りがしやすくなります。

中央部は、両端部の矢印の方向変更と黒丸(斜め細線でも可)を使うことで無理なく表示できました。
この方法で表示可能であればこれを優先し、無理な場合には引き出し線か、部分拡大図を使うのが良いでしょう。

 

【関連知識】引き出し線の書き方、尺度の表示

《 引き出し線の書き方 》

引き出し線は、寸法引き出し線の他にも、加工方法指示、形状指示、部品番号、注意書き、などいろいろな用途に使います。
寸法引き出し線には記号を何もつけませんが、他の用途に使う場合は先端に矢印か黒丸をつけます。
(加工指示に用いる引き出し線については、別の回で解説と例題演習を行います。)
 

《 尺度の表示 》

図面は、実物と同じ大きさで描く(現尺といいます)ことができれば一番わかりやすいですが、実物が大きい場合は紙面の大きさに限りがあるので縮小して(縮尺)、実物が小さく現尺で描くと図面が読みづらくなる場合は拡大して(倍尺)図面を描きます。

図面の表題欄に尺度を記入します。尺度は、図面上の大きさ:実物の大きさ で表示します。
縮尺は右の数字が、倍尺は左の数字が大きくなります。
たとえば表題欄が1:5、部分拡大図に2:1と表示されている場合、図面は縮尺5分の1で描かれているが、部分拡大図が2倍尺となっていることを示します。
 

次回の連載では、代表的な「寸法補助記号」について解説します。
適切な寸法表示をするために不可欠な知識ですので、ぜひ次回も取り組んでみてください。
 

(アイアール技術者教育研究所 S・Y)

 

 

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