【機械設計マスターへの道】冷凍機の種類と仕組み、性能の考え方

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当連載コラムの「熱交換器の種類・分類と特徴、伝熱計算の基礎知識」の中で、エアコンにも熱交換器が活躍していることを書きました。

一般家庭、小規模の事務所・店舗などの、限られた空間(部屋)を、エアコンを用いて空調制御する方式を「個別空調」といいます。
一方、大規模オフィスビルや商業施設、工場などでは、空調を行うために必要な熱源装置を機械室に設置してエリア全体を一括して空調管理を行います。このような方式を「セントラル空調」といいます。機械室に設置される熱源装置の一つが「冷凍機」(refrigerator)です。

冷凍機には大きく分けて、「蒸気圧縮式冷凍機」と「吸収式冷凍機」の2種類があります。
今回はこれらの冷凍機に関する基本的な知識を解説します。

1.蒸気圧縮式冷凍機の原理・仕組み

蒸気圧縮式冷凍機は、図1のように圧縮機・凝縮器・膨張弁・蒸発器からなるサイクルを形成します。

蒸気圧縮式冷凍機のサイクル

“1段圧縮1段膨張”の基本的な冷凍機サイクルを、p-h(圧力‐エンタルピ)線図、およびT-s(温度‐エントロピ)線図上に表すと、図2・図3のようになります。

熱力学の理想的サイクルである逆カルノーサイクル(カルノー冷凍サイクル)に近似していて、機構が簡単であるわりに熱効率が良いことが特長です。

カルノー冷凍サイクル

まず、サイクルを循環する冷媒ガスは、圧縮機で高温・高圧となり凝縮器で排熱を行って液化し、低温・高圧の冷媒液になります。冷媒液は、膨張弁を通って低温・低圧の気液混合状態となり、蒸発器で蒸発し、低温・低圧の冷媒ガスとなって圧縮機へ戻ります。

冷媒は熱交換器である蒸発器で、気化熱分の熱量を冷水から奪って冷水温度を下げます。
そして、低温冷水は空調機(AHU)へ送水されて、空気温度を低下させ、送風機により冷風が各エリアへと送風されます。AHUで温度が上昇した冷水は再び冷凍機へ戻って蒸発器で冷却されます。

冷媒の排熱は、熱交換器である凝縮器で冷却水に捨てられます。温度上昇した冷却水は、屋上などに設置される冷却塔(クーリングタワー)で温度を低下させて、再び凝縮器へ戻って、冷媒の排熱を受け取ります。

 

2.吸収式冷凍機の原理・仕組み

吸収冷凍機は、図4に示すように、蒸気圧縮式冷凍サイクルにおける圧縮過程を、低温水蒸気を吸収器で水溶液として、再生器で加熱して高温水蒸気を発生させる方法に代替したものです。

吸収式冷凍機のサイクル

吸収式冷凍機では、電気を動力とする圧縮機が存在しません。冷媒として水を用い、臭化リチウムなどの吸収液を使用します。

蒸発器で冷媒の水は水蒸気となって吸収器に入り、吸収液に吸収され水溶液となります。
水溶液はポンプで再生器へ送られ加熱されます。この加熱によって、水溶液から吸収液が分離され、高温の水蒸気が発生します。分離された吸収液は、再び吸収器へ戻ります。

高温水蒸気は、凝縮器で冷却水に排熱して低温水になり、膨張弁を通して減圧されて水・水蒸気混合状態で、蒸発器に入ります。蒸発器は高真空で水の沸点が7~10℃と低温になっており、冷媒水は、熱交換する冷水から気化熱を奪って低温水蒸気になることができます。
 

吸収式冷凍機のメリット・デメリット

吸収式冷凍機の利点として、冷媒に水を利用するのでフロンを利用する蒸気圧縮式に比較して環境負荷が低いこと、再生器の加熱源に他のシステムからの排熱を利用することが可能で、圧縮機を使用しないため電気設備容量を下げられることが挙げられます。

一方、短所としては、すべてサイクルを化学反応で行うため、立ち上がりや負荷追従が遅いこと、吸収液による経年腐食影響が大きいことが挙げられます。

 

3.冷凍機の性能

(1)冷凍能力について

冷凍機の能力は、「冷凍トン」という単位を用いて表します。
これは0℃の水1トンを24時間で氷にするために奪うべき熱流のことです。
日本冷凍トン(JRt)とアメリカ(米国)冷凍トン(USRt)の2種類がありますが、慣用的に USRt が用いられています。

米国で用いられる慣用単位からSI単位へ換算してみます。

1米国トン=2000Lb(ポンド)= 907.2kg
水の凝固潜熱144BTU/Lb = 79.68kcl/kg (BTUは英国熱量単位)
1USRt = 2000×144/24 = 12000BTU/h = 3024kcal/h = 12661kJ/3600s = 3.52kJ/s = 3.52kW

蒸気圧縮式冷凍機のうち、ターボ圧縮機を用いる「ターボ冷凍機」の冷凍能力は、一般的に200~5,000USRt程度です。また、吸収式冷凍機の冷凍能力は、一般的に50~2,000USRt程度といわれています。

なお、蒸気圧縮式冷凍機には、スクリュー圧縮機を用いる「スクリュー冷凍機」もありますが、こちらは30~500USRt程度の小~中容量に用いられます。
 

(2)成績係数COP

冷凍機のエネルギー消費効率を表す指標として、成績係数COP(Coefficient of Performance)が用いられます。”COP”は、冷凍能力と消費エネルギーの比です。

例えば、冷凍能力100USRtの冷凍機の、消費エネルギーが120kWであるとすると、
 COP = 100×3.52/120 = 2.93
ということになります。

実測的には、冷凍機が実際に作り出す熱エネルギー(冷水の出入り温度差と冷水流量と比熱の積)を、圧縮機の軸動力で割ることで求めることができます。

吸収式の場合、圧縮機がないので、再生器の加熱量で割ります。
ポンプや圧縮機の効率とは異なりCOPは1より大きな値となります。

一般的に、吸収式冷凍機のCOPは、蒸気圧縮式冷凍機のCOPより低くなります。

近年のターボ冷凍機はCOP5.0以上を要求される場合もあり、圧縮機とその周辺システムの改良を行うことでCOP6.0以上の性能を発揮するターボ冷凍機もあるようです。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・Y)
 

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