【機械設計マスターへの道】機械要素「ねじ」の基本をチェック!必ず知っておくべき前提知識のまとめ
機械は多くの機械要素から構成されています。機械要素はいろいろな機械の中で共通的な役割を果たす部品のことです。
機械要素の多くは規格化されていて、設計者は自ら機械要素を設計する機会は少なく、市販の機械要素群から自分が担当する機械に適したものを選定して製品に取り入れることが大半です。
機械要素の選定・設計が不適確であると、機械製品全体の故障やトラブルの原因ともなります。
設計を担当する機械が、その機能・信頼性を十分に発揮するためには、使用する機械要素の種類、使用方法、選定の要領などについて十分な知識を持っておくことが重要です。
今回は、機械要素の中でも最も基本的かつ重要な締結部品であるねじの基本についてお話したいと思います。
目次
1.ねじの形
(1) 「リード」と「ピッチ」
ねじが円筒の外周にらせん状に巻き付く一本の連続した「つる」とします。
「つる」を一周巻き付けたときに軸方向に進む距離を「リード」といい、「つる」を直線に開いて斜辺とし、円周長を底辺、リードを垂辺とした直角三角形の斜辺と底辺の間の角を「リード角」といいます。。
【図1 リードとリード角】
つるを連続して円筒にらせん状に巻き付けていくと、外周に一定間隔でつるが並びます。
「つる」の断面が三角形であればギザギザの山谷が並んだ形状になります。
山と山の間隔を「ピッチ」といいます。
一般に広く使うネジは1本のネジを連続的に巻き付けて作る「一条ねじ」と呼ばれるもので、この場合はリードとピッチは同じであり、ネジを1回転させるとリード=ピッチ分だけ軸方向に進みます。
【図2 ねじのピッチ】
(2)おねじとめねじ
円筒の外周にネジ山谷を設けたものを「おねじ」、穴の内面にネジ山谷を設けたものを「めねじ」と呼びます。ネジ部品はおねじとめねじが組み合うことで機能を発揮します。
おねじの山径とめねじの谷径が、ねじの呼び径になります。
ネジ山を軸方向に切断した時の断面の幅が等しくなるときの径を「有効径」とよびます。
(3)三角ねじと台形ねじ
ボルトナットなど締結用に使うネジは、ネジ山角度が60°の二等辺三角形になっています。
ネジ山断面が台形で角度が30°の形状をしているものは台形ねじと呼ばれ、三角ねじに比べて摩擦が小さいことから、ねじの回転を直線運動に変換して物体を直線方向へ送る工作機械の送りねじなどに利用されます。
【図3 三角ねじと台形ねじ】
2.三角ねじの種類
(1)メートルねじ(記号M)
各部寸法をミリメートルで表したねじで、一般締結用ねじとして用いられます。
JIS B0205-2で、呼び径1から300mmまで規格制定されています。
JIS B0205-3に、Mねじ部品のサイズが規定されています。
呼び径に第1選択、第2選択があります。これは特に理由なければ汎用性の面から第1選択を選ぶことが望ましいという意味です。
例 M12とM16が第1選択、M14が第2選択
設計上必要なボルトサイズがM14となった場合は、M12として本数を増やすか、M16として本数減らすことを検討すべきです。
第2選択のネジサイズは在庫がない、ねじ穴加工用の冶具がないなど、納期・コスト面で支障をきたす可能性があります。
(2)ユニファイねじ(記号UN)
ネジ山形状はメートルねじと同じで、寸法をインチ単位で規定したものです。
ねじピッチは1インチ(25.4mm)あたりのネジ山の数で表します。
ユニファイねじのネジ山角度はMねじと同じ60°です。
ユニファイねじの表し方の例
3/4-16UNC ・・・3/4インチ並目ねじ インチ16山
(3)管(くだ)用ねじ
配管部品の接続用に制定されたねじ規格です。
薄肉のパイプなどの強度を維持するために、ネジ山の高さを低く、ピッチも小さく定められています。
ユニファイねじと同様、寸法はインチ系列、ピッチは1インチ当たりのネジ山で規定されています。
管用ねじのネジ山角度は55°となっています。
内部流体が漏れないよう密封性に重点を置くテーパねじと、構造用鋼管や密封性を要求しない配管部品取付けなど単に機械的接合を行うための平行ねじ(G)があります。
テーパねじには、おねじ、めねじ双方をテーパにするRcと、おねじをテーパ、めねじを平行として組み合わせるRpとがあります。
テーパねじは軸線に対してネジ面に16:1の勾配をつけたものです。
【図4 管用ねじのテーパと勾配】
三角ねじの種類(まとめ)
三角ねじの種類をまとめて整理すると、下表のようになります。
メートルねじ | ユニファイねじ | 管用ねじ | |
記号 | M | CNC,UNF | R,RC,Rp,G |
呼び径の単位 | mm | インチ | インチ |
ピッチ | mmで表示 | 1インチ当たりのねじ山数 | 1インチ当たりのねじ山数 |
ねじ山角度 | 60° | 60° | 55° |
用途 | 機械部品締結 | 機械部品締結 | 配管部品締結 |
【三角ねじのまとめ】
3.並目ねじと細目ねじ
メートルネジとユニファイねじには、各呼び径ごとに「並目ねじ」と「細目ねじ」が規定されています。
「細目ねじ」は、並目よりもリードが小さく、ネジ山の高さが浅くなっています。
Mネジの場合、並目ねじを手配するときは特にピッチの記述はせず、細目ネジを手配するときネジの呼び径xピッチで指定します。
例 単にM10 と書くと並目ねじ(ピッチ1.5)
M10x1・・・細目ねじ(ピッチ1)
ユニファイねじは並目をUNC、細目をUNFで表して区別します。次のような場合に細目ネジを適用します。
- 締付時の回転角度で締付トルクを厳密に管理する場合
- 振動が大きい環境で緩みにくくしたいとき
- 薄肉部品にねじを切るとき など
4. 右ねじと左ねじ
ネジは通常右ねじで、時計方向(右回転)に回転すると締まる(前進)方向に進みます。
ポンプや送風機などの回転機械の主軸にネジを使用するとき、起動時の慣性で緩み方向に力がかかると、起動停止を繰り返すうちにネジが緩んで思わぬ事故につながる可能性があります。
そこでねじ部品から見て右回転の時、左ねじを使用して起動時に締まり方向に力が働くように設計します。
通常は右ねじを用いるので特に表示が無ければ右ねじで、左ねじを用いる場合にのみ、LHの表示をします。(LH: Left Hand)
例 M16- LH
ということで今回は、締結に用いる「ねじ」の基本について解説しました。
次回は、ねじの使い方についてご説明いたします。
(アイアール技術者教育研究所 S・Y)