3分でわかる技術の超キホン 「レーザ」とは?なぜレーザ光を光ファイバ通信の光源に使うのか?

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レーザとレーザ光の基本を解説

光通信では、媒体として光ファイバを用いて光を伝送させています。
その光の光源としては、「レーザ」が使われています。

本コラムでは、なぜ光源としてレーザが適しているのかを解説していきます。
はじめにレーザ光との比較のために自然光について説明し、その後に一般的なレーザ光の特徴について解説します。

そもそも「光」とは何か?(光の定義)

光とは、粒子であり、波であります。
すなわち、光は粒子と波動の二重性を持っています。

波動性としては、反射、屈折、干渉などの現象があります。
粒子性としては、光電効果などが挙げられます。

まず光が波動性を持つことに着目します。
光は電磁波の一種です。電磁波は、電界と磁界の変化を伝える波です。

電磁波は波長により、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線等に分類されます。
波長が360nm~830nm程度の電磁波は、「可視光線」と呼ばれ肉眼で確認できます。

波長が長い側から短い側へと順番に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫といわゆる七色(虹色)として、波長の違いを色の違いとして認識することができます。
可視光線
本コラムでは、光とは、赤外線、可視光線、紫外線と定義(*)します。
(*)可視光のみを光と定義している文献などもありますのでご注意下さい。
 

1. 自然光とレーザ光

太陽光は、自然光と呼ばれ多数の波長の光が集まったものです。
可視光線以外の電波や赤外線、紫外線等も含まれています。

太陽光を構成するその一つ一つの光の波は、短い波であったり、波の位相も一致していません。
いわゆる”寄せ集め”になります。

「位相」とは、周期的に変化する現象においてその位置を示す量のことです。
波の“位相が一致しない”とは、波の山と谷が重なり合わないということです。そのため弱い光になります。

白熱電球の光は、同じ波の寄せ集めでも赤外線が多くなります。蛍光灯やLEDの光の波長も太陽光の波長とは異なります。

光は波長によって屈折率が異なるので、光をプリズムに通すことで分光スペクトルを得ることができます。
つまり、分光器を使えば特定の波長のみの光を取り出すことが可能です。
分光器で取り出された単色光は、ほぼ一定の波長のみで構成されています。
このような単一波長の光を「単色光」といいます。

このとき単色光の波長は揃っていますが、位相は異なっています。
このような光の状態を「インコヒーレント」、もしくは”可干渉性が悪い”といいます。
位相の揃い具合を表す「コヒーレンス」という言葉については、後ほど説明します。

レーザ光は単色光、同位相の光です。

 

2.レーザとは?

レーザ(LASER:Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)とは、誘導放出による光増幅放射を意味します。共振器を含むレーザ発振器そのものをレーザと呼ぶこともあります。

レーザは、収束性に優れたほぼ単一波長の光を発生させることができます。
「レーザ光」は、レーザを用いて人工的に作り出した光です。

レーザ光は、次に挙げる4つの特徴を有します。

  • (1)単色性
  • (2)指向性
  • (3)コヒーレンス(可干渉性)
  • (4)高エネルギー密度

 

(1)単色性

「単色性」とは、単一波長の光を持つ性質です。
レーザ光を発生させるその原理により、レーザの発振波長はレーザの種類でほぼ決まります。
レーザ光は単色性に優れているため、スペクトル幅が非常に狭くなります
 

(2)指向性

「指向性」とは、光源からの方向によって波の強さが異なる性質です。

レーザ光は位相が揃った波であるため直進し、光源からの距離が遠くなっても拡がりが少ないビームとなることから、”指向性が良い”といわれます。
一方、ランプなどの光源の場合には、あらゆる方向に光が分散します。
 

(3)コヒーレンス(可干渉性)

「干渉」とは、複数の波が重なり合って強め合ったり、弱め合ったりする現象です。

また「コヒーレント光」とは、位相と周波数が同じ波です。
すなわち、一定の波長をもつ光で、連続的に波の山と山、谷と谷が一致する光になります。

レーザ光はコヒーレンスをもっています。
一方、自然光はこのような性質は持っていないので「インコヒーレント光」と呼ばれています。

誘導放出の増幅によってレーザ光が生ずるその原理上、レーザ光は位相が揃った電磁波になります。
したがって、この波を合成することにより、振幅の大きい波を得ることができます。
 

(4)高エネルギー密度

虫眼鏡を使って太陽光を集光すると紙を焦がすことはできるかもしれませんが、金属を切断することはできません。

一方、レーザ光を集光する場合、レーザ光は、位相が揃っているためレンズの収差の影響もほとんど受けず減衰もしません。すなわち収束性が良いため、焦点のサイズを回折限界まで小さくして、エネルギー密度を高めることができます。

エネルギー密度が高くなると焦点温度は非常に高温となります。
そのため集光したレーザ光を利用して金属の加工、溶接が行われています。

 

3.なぜ光ファイバの光源はレーザ?

レーザ光は位相が揃っておりコヒーレンスが高い光です。
そのためレンズによって光を極めて小さな領域に集光することができます。

光ファイバは髪の毛程度に細いため、光ファイバに光を入射するためにはレーザ光が好都合です。

また、レーザ光の単色性と指向性により非常に強い光が得られ、遠くまで減衰することなく伝送が可能という点も、光ファイバの光源に用いられる理由です。

 
(日本アイアール株式会社 N・S)

 

 

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