3分でわかる技術の超キホン インターロイキン-8(IL-8)と医薬品
インターロイキン-8(IL-8)は、「ケモカイン」と呼ばれる分類に属しており、白血球に対する遊走活性を示します。
ケモカインは、50種類以上報告されていますが、インターロイキン-8は、分子量が数千~1万程度で、多くのインターロイキンよりも比較的低分子となっています。
今回は、IL-8とIL-8に関連する医薬品を取り上げてみました。
目次
1.インターロイキン-8とは?
IL-8は、マクロファージ、上皮細胞、気道平滑筋細胞および血管内皮細胞が産生するサイトカインです。
サイトカインの中でも、IL-8など特定の白血球に作用し、その物質の濃度勾配の方向に白血球を遊走させる活性(走化性)を持つサイトカインは「ケモカイン」と呼ばれています。
ケモカインは、CXC、CC、C、CX3Cの4つのサブファミリーに分類されていますが、IL-8はCXCケモカインで、N末端側の2つのシステイン残基の間にその他のアミノ酸が1つ存在するという配列を有しており、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド8 (CXCL8)とも呼ばれています。
IL-8受容体は分子量60kDの糖蛋白質で、ヒト末梢血好中球では表面に数万個発現されており、IL-8結合後は速やかにダウンレギュレーション(応答能低下)されます。受容体としては、CXCR1とCXCR2が良く知られています。
2.インターロイキン-8の作用
IL-8は、好中球、T細胞、好塩基球に対して、以下のような生物活性が認められています。
- 好中球走化性、好塩基球、好酸球、T細胞に対する遊走活性
- 骨髄より末梢血への好中球の動員
- 好中球活性化
その他にも、IL-8は多彩な活性を示すことが多数報告されています。
3.インターロイキン-8と疾患
IL-8は、種々の疾患に関連していることが報告がされています。
例えば、動脈硬化症の発症・進展に重要な役割を果たしていると考えられており、実際、動脈硬化性疾患の患者は、健常者に比べ血中IL-8の濃度が高くなることが分かっております。
動脈硬化に関しては、IL-8はin vivoでもin vitroでも血管新生作用が知られています。
また、癌に関する研究でも、腫瘍由来のIL-8が血管新生および癌の転移を促進する因子として働いており、IL-8を阻害することにより、腫瘍形成効果が低下する可能性があるとされています。
その他、慢性関節リウマチでは、関節炎局所への好中球浸潤にIL-8が関与していることや通常の創傷治癒過程ではIL-8により血管新生反応が起こり新たな血管が形成されることなどが報告されています。
4.インターロイキン-8産生抑制物質
IL-8産生抑制物質としては、IL-4、 IL-10、TGF-β、インターフェロンといったサイトカインやグルココチルコイド、ビタミンD3などが知られています。
5.インターロイキン-8に関連する医薬品
IL-8が関連する医薬品としては下記のものが挙げられます。
(1)レバミピド
レバミピドの効能効果としては、胃潰瘍や急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善です。
レバミピドは、胃粘膜における炎症性サイトカイン(IL-8)に対する作用として、Helicobacter pyloriによるヒト胃粘膜上皮細胞からのIL-8産生増加を抑制するとされています。
(2)デスロラタジン
デスロラタジンは、ロラタジンの活性代謝物であり、持続的なヒスタミンH1受容体拮抗作用を有するアレルギー性疾患治療薬で、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒に効能効果を有する薬剤です。
デスロラタジンは、ヒト肥満細胞又は好塩基球からの各種刺激によるIL-4、6、8及びIL-13の産生を抑制したとされています。
(3)オロパタジン
オロパタジンは、抗アレルギー薬です。ヒスタミンH1受容体拮抗作用を主体とし、ケミカルメディエーター(ロイコトリエン、トロンボキサン、PAF等)の産生・遊離抑制作用を現す、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹に効能効果を持つ薬です。
前臨床試験において、主作用である抗ヒスタミン作用(in vitro〔ラット、モルモット組織〕)に加えて、IL-6やインターロイキン-8等のサイトカイン分泌抑制作用(in vitro〔ヒト結膜上皮細胞〕)、などを示すとともに、各種アレルギー性疾患モデルにおいて、好酸球浸潤抑制作用(ラット)など抗アレルギー作用が確認されているとされています。
(4)ウルソデオキシコール酸
ウルソデオキシコール酸は、肝機能の改善、消化不良、コレステロール系胆石の溶解などに用いられます。
動物モデルにおける肝障害抑制作用として、コンカナバリンA誘発肝障害モデルマウスで血中TNF−α、IL-8及びMIP−2(ヒトのIL-8に相当)上昇を抑制したとされています。
(5)エピナスチン
エピナスチンは、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎などに効果を有する薬です。
選択的ヒスタミンH1 受容体拮抗作用を主作用とし、さらに、IL-6、IL-8等の炎症性サイトカインの産生、遊離や好酸球の遊走・接着分子の発現などに対する抑制作用を有するとされています。
その他、エリスロマイシン、シクロスポリンA、タカルシトール水和物やブシラミンも、IL-8の産生を濃度依存的に抑制したとされています。
ということで今回は、「インターロイキン-8」と関連する医薬品について簡単にご説明しました。
次回は「インターロイキン-17」(IL-17)をご紹介します。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
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