3分でわかる技術の超キホン インターロイキン-23(IL-23)と医薬品

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インターロイキン-23と乾癬

インターロイキン-23(IL-23)は、2000年に報告された比較的新しいサイトカインです。
炎症性サイトカインで、IL-23を標的とした乾癬や乾癬性関節炎の治療薬がいくつか使用されております。

今回は、IL-23とそれに関連する医薬品を取り上げてみました。

1.インターロイキン-23とは?

インターロイキン-23(IL-23)は、IL12B(IL-12p40)サブユニットIL23A(IL-23p19)サブユニットで構成されるヘテロ二量体(ヘテロダイマー)のサイトカインで、主として樹状細胞や単球、マクロファージから分泌され、粘膜免疫において重要な役割を担っています。

また、自然リンパ球やガンマデルタT細胞もIL-23を産生し、B細胞はBCRシグナルを介してIL-23を産生するとされています。

IL-23は炎症性サイトカインで、Th17の維持・拡張のための重要なサイトカインです。
 

2.IL-12とIL-23

IL-23は、IL-12ファミリーのサイトカインの一部で、IL-12と特性を共有(サブユニットp40を共有)しています。両者を比較すると以下のようになります。

IL-12 IL-23
p40サブユニットとp35サブユニットから成るヘテロダイマー IL-12と同じp40サブユニットに、p19サブユニットが結合したヘテロダイマー
Th1細胞分化を誘導する Th17細胞分化を誘導
NK細胞やT細胞などの細胞障害活性を高め、これらの細胞によるインターフェロンγ産生を誘導 メモリーCD4+T細胞を刺激し、炎症性サイトカインの産生を促進する

 

3.インターロイキン-23と疾患

IL-23は、炎症に関与しており、また、肺腫瘍の増殖を促進するとされています。

乾癬は、表皮細胞の異常増殖が特徴(時に正常の約30倍にも及ぶ)で、その病態にはヘルパーT 細胞17(Th17)が大きく関与していると考えられています。
IL-23 は、Th17 の分化、増殖およびその維持に関与するサイトカインで、このサイトカインを阻害することは、樹状細胞の活性化を低下させ、それによってIL-23を減少させることで、乾癬患者の治療選択肢となる可能性があるとされています。

また、IL-23 は動脈硬化、高血圧、大動脈解離、心肥大、心筋梗塞、急性心損傷などの心血管疾患の進行を促進することが知られています。

 

4.インターロイキン-23に関連する医薬品

IL-23 は炎症性疾患の治療標的の一つで、下記のような医薬品が開発されています。

 

(1)グセルクマブ(遺伝子組換え)

グセルクマブ

グセルクマブは、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬などを薬効とする薬剤で、447個のアミノ酸残基からなるH鎖2本及び217個のアミノ酸残基からなるL鎖2本で構成される糖タンパク質です。

グゼルクマブは IL-23 に対するモノクローナル抗体であり、IL-23を阻害することで、Th17免疫反応やIL-17の産生に間接的に影響を与え、乾癬の臨床症状を遅らせることができるとされています。
 

(2)サンキズマブ(遺伝子組換え)

リサンキズマブ

リサンキズマブは、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症に効果を示すヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤です。

リサンキズマブは、IL-23のp19サブユニットという部位に結合することでIL-23の活性を阻害し、IL-23によるシグナル伝達を抑えることによって尋常性乾癬などの症状を改善する効果を表すとされています。
 

(3)ウステキヌマブ(遺伝子組換え)

尋常性乾癬、関節症性乾癬、活動期クローン病、潰瘍性大腸炎などに効能を有する、ヒトIL-12/23p40(IL-12及びIL-23が共有するp40ユニット)に対するヒト免疫グロブリンG(IgG)1κモノクローナル抗体です。

ウステキヌマブは、449個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2分子及び214個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2分子で構成される糖タンパク質で、IL-12及びIL-23に共通のサブユニット IL-12/23p40 に高い親和性で結合し、IL-12及びIL-23が免疫細胞表面の受容体複合体に結合するのを阻止して生物活性を中和するという作用機序を有しているとされています。
 

(4)アプレミラスト

アプレミラスト

アプレミラストは、尋常性乾癬、関節症性乾癬、ベーチェット病に対する経口ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤です。

PDE4 を阻害することで細胞内の環状アデノシン 1リン酸(cAMP)レベルを上昇させ、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、IL-17、IL-23 等種々の炎症性サイトカインの産生を抑制し、炎症反応を抑制すると考えられています。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


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