3分でわかる技術の超キホン インターロイキン-6(IL-6)と医薬品

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インターロイキン-6の解説(B細胞)

インターロイキン-6」(IL-6)は、T細胞等によって生産され、B細胞に作用して抗体産生を誘導するサイトカインです。免疫系にとって重要な働きをするものですが、過剰に生産されると関節リウマチなどの原因であったり、癌細胞の増殖分化にも深く関わっていると考えられているほか、多様な生物学的活性を示すことが報告されています。

今回は、IL-6とそれに関連する医薬品を取り上げてみました。

1.インターロイキン-6とは?

IL-6は、T 細胞の他、B 細胞、単球、線維芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、メサンギウム細胞、脂肪細胞、および一部の腫瘍細胞を含む、様々な細胞によって産生されるサイトカインで、多くのインターロイキンより比較的低分子で数千~1万程度の分子量のものです。

IL-6の働きは、主として、B細胞に作用して抗体産生を誘導することにありますが、炎症時の急性期反応などをはじめとした生体の様々な反応に関与する重要な物質であり、その異常産生が、多発性骨髄腫、キャッスルマン病、関節リウマチなどの疾患に深く関わっていることが分かっています。

1988年に関節リウマチの患者の関節液中にIL-6が多く存在していることが発見され、その後の関節炎に対する薬の開発につながったとされています。

また、動脈硬化性疾患においては、健常者に比べ血中IL-6濃度が高くなるとの報告がされています。
 

2.インターロイキン-6受容体

IL-6受容体は、膜結合型可溶性の2種類の受容体が存在し、いずれもIL-6と結合すると、シグナル伝達サブユニットであるgp130 のホモ二量体が誘導され、IL-6/ IL-6受容体/gp130 からなる高親和性受容体複合体が形成されます。この複合体によってシグナル伝達がされるようになります。
 

3.インターロイキン-6とSTAT3

シグナル伝達は、主に2つの経路が知られていますが、そのうちの一つは、STATタンパクが結合し、さらに活性型となり、二量体を形成した後に核内に移行、標的遺伝子の転写を活性化するというものです。
中でも、STAT3が関与するものは、アトピー性皮膚炎、皮膚膿瘍、およびヒトの肺炎を伴う高IgE症候群の原因遺伝子であると考えられています。

 

4.インターロイキン-6に関連する医薬品

IL-6産生の増加は、多くの自己免疫疾患や炎症性疾患の発症機序に関与することが知られています。
したがって、IL-6を阻害することは、炎症性疾患や自己免疫疾患の治療に用いられることが期待され、いくつかの医薬品が実用化されています。

 

(1)トシリズマブ(遺伝子組換え)

トシリズマブは、IgG1サブクラスのヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体で、アミノ酸214個の軽鎖2分子とアミノ酸447、448(主成分)又は449個の重鎖2分子からなる糖蛋白質の化学構造を有しています。
関節リウマチ、突発性関節炎、成人スチル病、キャッスルマン病などに効果を示します。

作用機序としては、in vitroにおいて、可溶性及び膜結合性IL-6受容体に結合して、それらを介したIL-6の生物活性の発現を抑制(シグナル伝達を遮断)するIL-6阻害剤です。
 

(2)サリルマブ(遺伝子組換え)

サリルマブは、ヒトIL-6受容体のαサブユニットに対する遺伝子組換えヒトIgG1モノクローナル抗体であって、関節リウマチを効能効果としています。
薬理作用としては、IL-6受容体に特異的に結合し、IL-6刺激による細胞のシグナル伝達を阻害し、B細胞株の増殖抑制(シス-シグナリング阻害)、抗炎症作用を示すとされています。
 

(3)タクロリムス

タクロリムス

臓器移植における拒絶反応の抑制、重症筋無力症、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎等に使用されています。
作用機序としては、In vitro作用において、T細胞刺激によるT細胞からのIL-2及びインターフェロン(IFN)-γのみならず、腫瘍壊死因子α、IL-1β及びIL-6等の産生も抑制するとされています。
 

(4)デスロラタジン

デスロラタジン

デスロラタジンは、ロラタジンの活性代謝物であり、持続的なヒスタミンH1受容体拮抗作用を有するアレルギー性疾患治療薬で、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒に効能効果を有する薬剤です。

デスロラタジンは、ヒト肥満細胞又は好塩基球からの各種刺激によるIL-4、6、8及びIL-13の産生を抑制したとされています。
 

(5)オロパタジン

オロパタジン

オロパタジン塩酸塩は、抗アレルギー薬です。
ヒスタミンH1受容体拮抗作用を主体とし、ケミカルメディエーター(ロイコトリエン、トロンボキサン、PAF等)の産生・遊離抑制作用を現す、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹に効能効果を持つ薬です。

前臨床試験において、主作用である抗ヒスタミン作用(in vitro〔ラット、モルモット組織〕)に加えて、IL-6等のサイトカイン分泌抑制作用などを示すとともに、各種アレルギー性疾患モデルにおいて、好酸球浸潤抑制作用(ラット)など抗アレルギー作用が確認されているとされています。
 

(6)ジアフェニルスルホン

ジアフェニルスルホン

ジアフェニルスルホンは、持久性隆起性紅斑、ジューリング疱疹状皮膚炎、天疱瘡などおよびハンセン病を適応症としています。
炎症を起こす原因となる活性酸素や皮膚を攻撃する体内物質の産生を抑え紅斑や水ぶくれなどの皮膚症状を改善する薬とされており、各種in vitro試験において、マクロファージからのIL-1α,IL-1β、腫瘍壊死因子α(TNFα)及びIL-6の産生に対して抑制作用を示すとされています。
 

(7)エピナスチン

エピナスチン

気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎などに効果を有する薬です。
選択的ヒスタミンH1 受容体拮抗作用を主作用とし、さらに、IL-6、IL-8等の炎症性サイトカインの産生、遊離や好酸球の遊走・接着分子の発現などに対する抑制作用を有するとされています。
 

その他、ブシラミン、ウルソデオキシコール酸などもIL-6抑制作用を有するとされています。

 
以上、今回は「インターロイキン-6」と関連する医薬品をご紹介しました。
次回は「インターロイキン-8」(IL-8)をご紹介します。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


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