3分でわかる技術の超キホン インターロイキン-1(IL-1)の概要と関連する医薬品

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インターロイキン1の解説

「インターロイキン」(Interleukin)とは、免疫反応に関連する細胞間相互作用を媒介するペプチドまたはタンパク質の総称で、細胞の活性化、分化、増殖、細胞間の相互作用に関与するサイトカインの一つとして知られています。

多くのインターロイキンが知られていますが、中でも「インターロイキン-1」(IL-1)は、炎症や感染防御に重要な役割を果たしており、例えば、脳の発熱中枢に作用して発熱を誘導したりします。
今回は、そのIL-1と関連する医薬品についてご紹介します。

1.インターロイキン-1(IL-1)とは?

「インターロイキン-1」(Interleukin-1、以下「IL-1」)は、インターロイキンの中で最初に同定された分子で、炎症性のサイトカインです。

IL-1は、単球、樹状細胞、好中球、T細胞、B細胞、マクロファージ、内皮細胞など様々な細胞によって産生される、分子量約 17000の糖タンパク質です。IL-1の生理作用は、例えば、炎症時における発熱や急性期タンパク質の産生誘導への関与、リンパ球、単球、顆粒球などの免疫系細胞の増殖促進、血管内皮細胞への接着促進、破骨細胞活性の増強などなど多岐にわたっています。

IL-1には、「インターロイキン-1α(IL-1α)」と「インターロイキン-1β(IL-1β)」の2種類がありますが、「β-trefoil fold」と呼ばれる共通の3次元構造を有し、同一のIL-1受容体に結合して、生理作用を発現し、その作用に差はないとされています。また、IL-1αの前駆体にも活性があるとされています。
 

2.インターロイキン-1関連の疾患

IL-1は、上述の通り、生体にとって重要な役割をしています。
IL-1が関与する疾患としては、下記のものが知られています。

(1)クリオピリン関連周期性発熱症候群(CAPS)

「クリオピリン」(NLRP3遺伝子)は、好中球などに発現する炎症作用に関与するたんぱく質です。
このクリオピリンに変異(異常)が起きると、過剰なIL-1βが産生され、結果として、周期的あるいは持続的に全身に炎症が引き起こされます。
CAPSは、先天性の慢性自己炎症症候群で、その症状は多彩です。

主なものとしては、

  • 蕁麻疹、関節痛、結膜炎を伴う家族性寒冷蕁麻疹
  • 同様な症状を呈するMuckle-Well症候群
  • 新生児に発症するCINCA/NOMID症候群

などが知られています。

100万人に一人という極めてまれな病気で、生後または幼児期から生涯を通じて上記の症状が繰り返されるとされています。
医薬品としては、カナキヌマブなどが用いられています。
 

(2)関節リウマチ(RA)

関節は、骨、軟骨、靱帯、滑膜、関節空、関節液などで構成されていますが、リウマチによる炎症は滑膜組織から始まり、軟骨、骨と進んでいきます。
リウマチの炎症によって、IL-1、IL-6などの炎症性サイトカイン、軟骨を破壊する中性プロテアーゼ、活性酸素、一酸化窒素などが滑膜組織で産生されるようになります。
このうちIL-1等の炎症性サイトカインは、破骨細胞を活性化する働きがあり、骨を壊す原因とされています。
 

(3)インターロイキン-1受容体拮抗分子欠損症

IL-1とその受容体に対して競合阻害するIL-1受容体アンタゴニストの欠損により起こる自己炎症性疾患です。
主な症状としては、膿疱省、骨髄炎、骨膜炎です。世界でも症例は10例程度で、日本ではまだ報告されていない疾患です。
アナキンラがほとんどの症例で有効であることが確認されています。
 

そのほかIL-1が上昇する疾患としては、アルコール性肝炎、肝炎、脊髄疾患、頭部障害が知られています。
 

3.インターロイキン-1に関連する医薬品

(1)カナキヌマブ(遺伝子組換え)

完全ヒト型抗IL-1βモノクローナル抗体で、IgG1/kタイプの抗体製剤です。
IL-1βと特異的に結合し、IL-1βが受容体と結合することを阻害することで、クリオピン関連周期性症候群、自己炎症性突発性関節炎、家族性地中海熱、全身性若年性突発性関節炎(チスル病)に対する効能があります。
日本でも、希少疾病医薬品(オーファンドラッグ)として、「イラリス皮下注射液」が承認されています。
 

(2)アナキンラ

完全ヒト型抗IL-1受容体阻害薬です。
IL-1受容体に結合することで、IL-1α、IL-1βに対して拮抗作用を示します。
成人発症スチル病、若年性突発性関節炎、家族性地中海熱などに用いられます。
日本では承認されていない薬ですが、成人スチル病への適応が要望されているようです。

なお急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症し、全身性の炎症がみられるCOVID-19(新型コロナウイルス)の患者にアナキンラを投与すると、標準治療のみの患者に比べて成績が改善したとの報告もされているようです。
 

(3)リロナセプト

キメラタンパクで、IL-1α、IL-1βと結合する能力があるインターロイキン阻害薬です。
アメリカ等で抗炎症薬、抗リウマチ薬として用いられていますが、この薬も日本では承認されていません。
 

(4)サラゾスルファピリジン

サラゾスルファピリジンの効能・効果としては、関節リウマチです。
腸内細菌によって活性代謝物である「5-アミノサリチル酸」が生成され、IL-1βの産生抑制の関与が認められています。
サラゾスルファピリジン 

(5)ヒアルロン酸ナトリウム

ヒアルロン酸ナトリウムは、変形性膝関節症、肩関節周囲炎、関節リウマチにおける膝関節痛に効能効果を持っています。
滑膜細胞に作用し、IL-1βの産生を抑制し、軟骨の変性変化を抑制する(in vitro)とされています。
 

(6)その他の医薬品

その他、IL-1に関与しているとされる医薬品としては、下記のものがあります。

  • メサラジン(潰瘍性大腸炎、クローン病): IL-1β産生抑制に一部関与している可能性が推察されています。そもそも5-アミノサリチル酸にIL-1β産生抑制の報告があります。
  • メトトレキサート(急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病など): IL-1産生抑制
  • タクロリムス(臓器移植における拒絶反応の抑制、関節リウマチなど): IL-1β、2、6産生抑制
  • 葛根湯エキス: IL-1α濃度上昇抑制
  • 十全補湯エキス: IL-1β産生増強
  • 小柴胡湯エキス: IL-1産生増加、IL-1β産生誘導

 

 

4.インターロイキン-1に関する特許・文献を検索してみると?

(※いずれも2021年1月時点での検索結果です)

(1)IL-1に関する特許検索

J-PlatPatで、IL-1に関する特許を調べてみました。

  • 全文: [インターロイキン-1/TX+IL-1/TX] ⇒ 61533件
  • 請求範囲: [インターロイキン-1/CL+IL-1/CL] ⇒ 7415件

この7415件の特許リストをざっと見てみると・・・、「インターロイキン-1活性の阻害剤としての化学化合物」「抗IL-1治療に関する新しい適応症」「IL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1RA)産生促進組成物」「IL-1結合タンパク質」などの発明の名称が見受けられました。

 

(2)IL-1に関する文献検索

次に、文献データベース「J-STAGE」で文献を調査してみました。(調査日:2021.1.27)

  • 抄録: インターロイキン-1 or IL-1 6366件

この中には、例えば「発熱患者尿中に存在するインターロイキン-1活性抑制物質」「インターロイキン-1の白血病細胞増殖因子としての作用」などのタイトルの文献がみられました。

 
特許公報や文献の中身にご興味のある方は、ぜひご自身で検索して内容を確認してみてください。
 

次回は、インターロイキン-2(IL-2)と、その関連医薬品についてご紹介します。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


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