「機器分析」とは?「化学分析」との違いは?定性分析/定量分析など前提知識を解説《機器分析のキホン①》

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機器分析の基礎知識
分析センターに相談に行ったら、いきなりSTEMだEPMAだTOF-SIMSだと略語を並べられて、面くらったことはありませんか?分析機器の技術進歩は非常に速く、しかもいくつかの機能を組み合わせた複合装置も開発され、それに新たな機器名をつけるというわけで、日常的に分析に携わっていないとどんな方法で分析するのか理解できず、判断がつかないことも多々あると思います。

ちょうど、お医者さんに行って、「とりあえずレントゲンで見てみましょう、CTもやった方がいいかな、いややっぱりMRIかな」と言われた時のような感覚?自分の体に何をされるのか、理解したいですよね!
そんな、分析業務には慣れ親しんでいないけれど、どういう理屈でその結論が出たのかは知りたいという方のために、分析機器(分析装置)の基本を紹介するのがこのコラムの目的です。

最先端の分析機器でも、原理と基本を知っていれば、理解することはそんなに難しいことではありません

1.機器分析とは? 化学分析とは何が違う?

分析」とは、物質を構成する原子、分子(化学種)の種類、性質、量、構造などを明らかにする方法です。

化学反応を利用して物質を構成する化学種を検出し、組成を明らかにする化学分析」に対して、物理的な方法、例えば、質量の測定、標準スペクトルとの比較などによって元素種の特定、元素の量の特定などを行う方法のことを「機器分析」と呼びます。

機器分析には、様々な原理に基づいた多様な方法がありますが、最大公約数的に言えば「光、電子、熱などを試料に照射して相互作用を起こさせ(励起)、結果として放出される信号(光、電子、熱など)を検出して、電気信号に変えて、試料の素性を知る方法」と言うことができます。
このコラムでは、「励起」「信号」「検出」という言葉をこのような意味で使います。

 

機器分析とは(励起、信号、検出)

 

分析で知りたいことは?

分析によって何を知ろうとするのか、具体的には以下の四つの事項であるということができます。

  1. 何があるのか?
  2. それはどれだけあるのか?
  3. それはどこにあるのか?
  4. それはどのような状態であるのか?

とは言え、これらの知りたいこと別に、異なった分析方法を取るということはまれで、当然いっぺんに4項目すべてを知ろうとするわけです。それが、複合機の開発につながり、なじみのない人には機器分析がとっつきにくくなる理由でもあるのですが・・・。

 

2.定性分析と定量分析

物質中に含まれる成分を調べることを「定性分析」と呼び、試料中に含まれる元素や化合物が何であるか知りたい、付着した異物が何であるか知りたい、などのケースに実施することになります。
また、含まれる成分の量を調べることを「定量分析」と呼びます。

機器分析では、「量はとりあえず置いておいて、何があるのかだけを知りたい」という場合を除いて、一般的には定量分析も可能です。分析機器によって、定量性(精度)が異なりますので、用いる機器を選択する時に注意を払う必要があります。
逆に、例えば付着した異物の量よりも、どの範囲に付着しているかのほうが重要であるようなケースでは、定量性はさほど問題ではありません。

 

絶対定量法、相対定量法

試料から特定成分を分離、精製して重量を測定するなどの方法で直接定量する方法を、「絶対定量法」と言います。
一方、励起した時に試料から放出される信号の強度を、濃度が既知の物質(標準試料)から放出される信号の強度と比較し、成分量を導く方法を「相対定量法」と呼び、機器分析では後者の方法が使われています。

一般的には、複数の濃度の違う標準試料を用意して、濃度と信号強度の間の関係を表すグラフ(検量線)をあらかじめ作り、濃度未知の試料から得られた信号強度をこのグラフにあてはめることで、濃度を知ることができます。

 

3.破壊測定、非破壊測定

分析する試料からわずかでも成分を取り出したり、構造を崩すような測定は「破壊測定」と呼び、これに対して、試料にはほとんどダメージを与えない(与えたとしても可逆的)測定は「非破壊測定」と呼びます。

非破壊測定
一般的には、先ずは非破壊的な測定であたりをつけ、必要に応じて破壊的な測定も行うという手順を取るのは、お医者さんも同じですね。
先ずは触診、打診、必要ならレントゲン(ここまで非破壊)、さらに必要なら血液採取(破壊!)という手順です。
もっとも、レントゲンも被爆の可能性はゼロではないし、血液採取も体に影響を与えるほどでもないので、「取りあえず血液検査」とおっしゃるお医者さんもいらっしゃいますが・・・。

 

4.《何があるのか?》非破壊で定量的に知る方法がベスト

こうしてみると、「何があるのかを、非破壊で定量的に知る」ことができれば、それが一番望ましい方法だということがわかります。それが、「電子あるいはX線で励起し、電子あるいはX線を信号として検出する」という方法で、AESEPMAXPSXRFなどがその代表です。
励起、信号のいずれかに電子を用いる方法では、試料を真空中に置かなければならないため、試料は固体に限るという制約はありますが、真空技術の発達、信号処理技術の飛躍的な発展によって、機器分析の中心部分をなしています。

次回は続きとして、非破壊で定量的に知る方法の原理について説明します。

 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)

 

【連載:機器分析のキホン】

 

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