非破壊で定量的に知る方法:励起と検出の組合せと信号の解釈《機器分析のキホン②》

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機器分析の基礎(励起と検出)

機器分析に関する当連載の前回 “「機器分析」とは?「化学分析」との違いは?” では、機器分析の概要、言葉の意味等について説明しました。
今回は、その記事中で記載した「何があるのかを、非破壊で定量的に知る方法」の続きを解説します。

 

1.電子殻のエネルギー準位の情報を用いる

成分を特定する、すなわちどのような元素があるかを非破壊的に知るために、元素原子の電子殻のエネルギー準位の情報を用いる方法があります。
原子の周りには、内側からK殻、L殻、M殻という順に電子が存在し、そのエネルギー準位は元素ごとに異なっています。

以下では、K殻の電子を弾き出し、L殻電子がK殻に遷移する場合について説明しますが、一般的に、より内殻にある電子が飛び出し、そこに外殻電子が遷移する場合に同様の現象が起こります。
なお、電子を殻外に弾き出してもすぐに元の状態に戻りますので、このような励起は破壊的とは言いません。

 

電子核、K殻、L殻

 

2.励起と検出の組み合わせ(電子とX線)

最内殻のK殻電子を、外から電子線あるいはX線を照射することで弾き出すと(励起)、K殻に空きができます。そこに、例えばL殻から電子が遷移してK殻とL殻のエネルギー差に相当するX線を放出します。
放出されたX線のエネルギー(波長)を測定すれば(検出)、元素を特定することができます。
電子線マイクロアナライザ蛍光X線

 

電子線マイクロアナライザ、蛍光X線

 

なお、電子線で励起した場合には、信号のX線を「特性X線」と呼び、X線で励起した場合の信号のX線を「蛍光X線」と呼びますが、これらは同じものです。

 

また、L殻からK殻に電子が遷移した際のエネルギーを他のL殻電子に受け渡し、その電子が殻外に飛び出した場合(オージェ電子)は、飛び出した電子の運動エネルギーを測定することで(検出)、元素を特定することができます。
オージェ電子分光

 

オージェ分光

 

エネルギーがわかっているX線を外部から照射し(励起)、飛び出してきた電子の運動エネルギーを測定すれば(検出)、照射したX線のエネルギーと、電子の運動エネルギーの差から、電子殻のエネルギー準位がわかり、元素を特定することができます。
X線光電子分光

 

X線光電子分光

 

3.得られた信号の解釈(測定結果とデータベースとの比較)

分析の対象物が単一成分であることはまれで、試料中に含まれる元素や化合物が何であるか知りたい、付着した異物が何であるか知りたい、などのケースに分析を実施することが多く、当然検出された信号には試料中のすべての元素からの情報が含まれます。そこで、分析機器には、あらかじめ様々な成分の標準的な物理値、測定値などがデータベースとして用意されていることが多く、試料から得られた測定値をデータベース中の値と比較することで知りたい成分を容易に同定することができます。例えば、下図のような場合、未知試料には、成分Aが含まれていると結論できます。

 

測定スペクトルと標準試料のスペクトルとの比較

 

4.《それはどれだけあるのか?》定量分析

物質中に含まれる成分の量を調べることを「定量分析」と呼び、機器分析では、励起した時に試料から放出される信号の強度を、濃度が既知の物質(標準試料)から放出される信号の強度と比較して成分量を導く「相対定量法」が使われていることは、前回のコラムでも説明しました。

一般的には、複数の濃度の違う標準試料を用意して、濃度と信号強度の間の関係を表すグラフ(検量線)をあらかじめ作り、濃度未知の試料から得られた信号強度をこのグラフにあてはめることで、濃度を知ることができます。

 

強度信号と標準物質の濃度との相関

 

「それはどれだけあるのか?」と言った場合、測定精度はもとより、どれくらい低濃度まで測定できるかという、検出限界も押さえておく必要があります。

例えば、ある分析方法での**に対する検出限界がxxだった場合、検出されなかった時に言えることは、「この試料に**は濃度xx以上は含まれていない」ということであり、「全く含まれていない」とは言えないということに注意して下さい

 

次回は、「それはどこにあるのか?」「それはどのような状態であるのか?」について、分析対象の測定場所の絞り込み方法、形状・構造を知る方法をご説明します。

 

(アイアール技術者教育研究所 H・N)

 

【連載:機器分析のキホン】

 

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