GHS・SDSの基本がこれでわかる!ラベルの見方からSDSの作成方法まで

化学品を扱う職場では、成分の危険性や正しい保管方法を知らずに作業を進めると、火災・爆発・健康被害といった取り返しのつかない事故につながりかねません。
だからこそ「何かあってから調べる」のではなく「扱う前に危険性を正確に把握しておく」という予防の考え方が必要です。
そこで、化学品を取り扱う事業者に関係するのが「GHS」と「SDS」です。
この記事では、GHSとSDSをはじめて学ぶ方に向けて、基本的な仕組みから実務での作成・確認ポイントまで解説します。
1.GHSとは何か?
国や地域によって化学品の危険性の表現の基準がバラバラだと、同じ物質でも扱い方がまったく変わってしまいます。そこで国連が2003年に定めた世界共通の分類・表示システムが「GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)」です。
GHSの目的は、化学品の危険有害性の種類と程度を統一された基準で「分類」し、その結果をGHSラベルとSDS(安全データシート)という2つの手段で誰にでも伝えられるようにすることです。
(1)GHSの9つの絵表示が意味すること
GHSでは、分類の結果を視覚で伝えるために9種類の絵表示(ピクトグラム)を用います。複数の危険有害性を持っている場合、以下のように定められた表示の優先順位があります。
- 「どくろ」の絵表示はすべての「感嘆符」より優先
- 「腐食性」の絵表示は皮膚・眼刺激性を示す「感嘆符」より優先
- 呼吸器感作性を示す「健康有害性」の絵表示は、皮膚感作性や皮膚・眼刺激性を示す「感嘆符」より優先
GHSは、化学品の危険有害性を世界共通の基準で分類し、その結果をGHSラベルとSDSという2つの手段で関係者に伝えることを目的としています。GHS分類の結果は、ラベルとSDSの両方に記載されるため、どちらを確認しても危険有害性を一目で把握できるようになっているのです。各ピクトグラムは、以下のような危険有害性の区分に対応しています。

【表1 9種類の絵表示(ピクトグラム)】
(2)GHSラベルの「注意喚起語」「Hコード・Pコード」
GHSラベルには、下記のように絵表示や製品名のほか、
- 危険性の大きさを一言で伝える「注意喚起語」
- 危険の中身を具体的に示す「危険有害性情報(Hコード)」
- 安全な取り扱いや応急処置の行動指針を示す「注意書き(Pコード)」
が記載されます。

【図1 GHSラベルの注意喚起語とHコード・Pコード】
注意喚起語は、化学品の危険有害性の程度を利用者に一目で伝えるための語句で、「危険(danger)」と「警告(warning)」の2種類です。重大な危険有害性がある場合には「危険」が、それより軽い場合には「警告」が使われます。
たとえば急性毒性の区分1〜3(非常に毒性が強い)では「危険」、区分4(毒性は低めだが注意が必要)では「警告」と表示され、数値の区分と連動する仕組みです。
HコードとPコードは、危険の「内容」と「対策」をコード化したものです。
Hコード(Hazard statement code)は危険有害性情報の各文言に対応する識別番号で、たとえばH300は「飲みこむと生命に危険」を意味します。
一方、Pコード(Precautionary statement code)は注意書きの文言に対応するコードで、化学品への不適切な取り扱いや保管から生じる被害を防ぐための推奨措置が記されています。
ただし、HコードもPコードも文言の「略称」ではなく、コード番号だけでは文言の代わりになりません。GHSラベルやSDS(安全データシート)には、必ずコードに対応した文章を一緒に記載する必要があります。
2.SDSとは何か?
SDSとは「安全データシート(Safety Data Sheet)」の略称で、
- 化学品の製品名
- 危険有害性
- 成分
- 安全な取り扱い方法
- 緊急時の対応手順
などが記載された文書を指します。GHSが導入される以前は「MSDS(Material Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)」と呼ばれていましたが、現在はSDSが正式な呼称です。

【図2 安全データシート(SDS)の例】
(1)GHSとSDSはルールと文書の関係
GHSとSDSの関係は、「ルールと文書」の関係です。GHSが危険有害性の分類基準を定め、その結果を伝える手段として「GHSラベル(容器への貼付・作業区域への掲示)」と「SDS(取引時の交付)」が存在します。
GHSラベルは容器に直接貼り付けて作業者に視覚的な注意を促すものであり、SDSはより詳しい情報を取引先や受領者へ伝えるための文書です。どちらもGHS分類の結果を基に作成されるため、分類の精度がそのままSDSとGHSラベルの品質につながります。
(2)SDSに記載が必要な16項目の全体像
SDSは「なにをどこに書くか」がJIS Z7253という日本の産業規格によって厳格に定められており、16項目の番号・項目名・順序は変更してはなりません。
16項目を大まかに捉えると、
- 前半(1〜3項):何の物質か
- 中盤(4〜8項):事故時・日常の対処法
- 後半(9〜16項):物質の性質と法的情報
という流れになります。
それぞれの詳細は以下のとおりです。
【表2 SDSに記載が必要な16項目】
| 項目番号 | 項目名 |
| 1 | 化学品及び会社情報 |
| 2 | 危険有害性の要約 |
| 3 | 組成及び成分情報 |
| 4 | 応急措置 |
| 5 | 火災時の措置 |
| 6 | 漏出時の措置 |
| 7 | 取扱い及び保管上の注意 |
| 8 | ばく露防止及び保護措置 |
| 9 | 物理的及び化学的性質 |
| 10 | 安定性及び反応性 |
| 11 | 有害性情報 |
| 12 | 環境影響情報 |
| 13 | 廃棄上の注意 |
| 14 | 輸送上の注意 |
| 15 | 適用法令 |
| 16 | その他の情報 |
(3)項目2「危険有害性の要約」が重要
項目2「危険有害性の要約」は、第3項以降を作成するベースとなる重要な項目です。なぜ最重要かというと、項目2の記載が誤っていると、連動するすべての情報がズレてしまうためです。
たとえば「区分3」と分類すべきところを「区分4」と誤った場合、注意喚起語は「危険」ではなく「警告」になり、ピクトグラムも変わります。使うべき保護具の水準や応急措置の手順にまで影響するため、SDS全体の品質が根本から崩れてしまうのです。
実際に筆者が製造現場で原料を扱っていたとき、SDSを受け取って最初に確認していたのが項目2でした。ここを見るだけで「この原料はどの保護具が必要か」「どの保管エリアに置くべきか」などをおおまかに判断できます。現場での体感として、項目2の記載が正確かどうかで、作業前の準備がまったく変わります。
(4)項目3〜16でとくに確認したい3つの記載ポイント
ここからは、実務上で確認しておきたい3つのポイントを紹介します。
- 項目3「組成及び成分情報」
化管法(化学物質排出把握管理促進法)は、化学物質の環境への排出量の把握や、SDSの提供などについて定めた法律です。この法律に基づくSDS省令第4条第3項では、指定化学物質の成分含有率について、有効数字2桁での記載が義務づけられています。例えば、「5%」のような表記(有効数字1桁)は認められません。
[※関連記事:PRTR制度、SDS制度って何?「化管法」の基本がわかる] - 項目8「ばく露防止及び保護措置」
この項目には許容濃度と推奨保護具が記載されており、受け取った側がリスクアセスメントを実施する際の判断基準として使われます。記載内容が不正確だと、作業者の保護が不十分になるリスクがあります。 - 項目15「適用法令」
法改正のたびに対象物質や義務範囲が変わるため、SDSを更新するたびに項目15の内容が現行法令と一致しているかを確認する必要があります。
3.SDSを作成する5つのステップ
SDSを作成する手順としては、大きく以下の5ステップに分けられます。
順番に見ていきましょう。

【図3 SDSを作成する5つのステップ】
① 扱う化学品がSDS交付義務の対象かを確認する
まずは自社が製造・販売などにより他の事業者へ譲渡・提供する化学品がこの対象に含まれるかを確認するところから始めましょう。「自社製品は対象外では」と思っていても、混合物の場合は成分に含まれる物質の濃度によって対象となるため、油断は禁物です。
② 原材料のSDSを入手する
自社製品がSDS交付の対象と判明したら、次は製品を構成する原材料のSDSを原材料メーカーから入手します。前述したように、製品は複数の物質を組み合わせた「混合物」である場合が多く、完成品単体の危険性・有害性をゼロから調べることは現実的にむずかしいためです。原材料のSDSを揃えることで、製品全体の特性を推定する根拠が得られます。
入手できないものについては、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が提供する「NITE-CHRIP」など、信頼できる公的機関のデータベースを活用してください。
③ GHS分類を行う
原材料のSDSが揃ったら、GHSに基づいて分類作業に入ります。
分類は、
- 物理化学的危険性(爆発しやすい、引火しやすいなど)
- 健康有害性(吸い込むと危険、皮膚を傷めるなど)
- 環境有害性(水生生物への影響など)
の3つの観点から行います。
入手した原材料のSDSにはすでにGHS分類結果が記載されています。それらを参照しながら、混合物である自社製品全体としてのGHS分類を検討しましょう。
④ JIS Z7253に基づき16項目を記載する
GHS分類が完了したら、いよいよSDSの本体を作成します。
記載すべき内容は「SDSに記載が必要な16項目の全体像」で記載した16項目に沿って記述するのが基本です。
この規格に準拠して作成すれば、
- 化学物質排出把握管理促進法(化管法)
- 労働安全衛生法(労安法)
- 毒物および劇物取締法(毒劇法)
のいずれにも対応したSDSを作成できます。
なお、JIS Z7253は2025年12月25日に改正されており、今後作成するSDSは最新規格への対応が必要です。(ただし、2030年12月24日までは旧規格(2019年版)に基づくSDSの作成も認められており、移行期間が設けられています。)
⑤ 作成後も管理する
SDSは作成して終わりではありません。
一度作成したSDSは定期的な見直しが必要で、労働安全衛生法に基づくSDS通知対象物については、記載項目のうち「人体に及ぼす作用」に関して、5年以内ごとに変更の要否の確認が義務付けられています。
確認の結果、変更が必要な場合には、確認後1年以内に更新しなければなりません。
4.まとめ
GHSは化学品の危険有害性を分類・表示する仕組みであり、SDSはその情報を詳細に伝える文書です。
SDSはJIS Z7253に基づく16項目で構成され、正確な記載が現場の安全に影響します。作成後も定期的な見直しと法令対応が欠かせません。
より深く実務に活かしたい方には、2025年改正のJIS Z7252/7253への対応や、リスクアセスメントの具体的な手法を学べるセミナーへの参加もおすすめです。
(アイアール技術者教育研究所 TKI)
《引用文献、参考文献》
- はじめての化学物質法規制・基礎講座(日置孝徳 講師)
当研究所を運営している日本アイアールは、中国語を中心とした技術翻訳サービスでも長年の実績を有しています。特に、中国語SDS翻訳は多数の企業様が活用されている定番サービスです。
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