【工場運営AtoZ】総まとめ!工場の組織と工場長の役割
工場を機能させるのに必要な色々な役割の人々
今回は、代表的な工場について、全体を組織、運営等の観点から俯瞰してみたいと思います。
この連載コラムでは、工場の機能をクローズアップするために、工場は生産に徹し、開発や設計等の機能は持たない、営業も工場には常駐していない、という場合を説明してきましたが、このような場合、会社として持つべき、営業、物流、設計、研究・開発、知的財産に関する機能は、本社または他の箇所で担うことになります。
また環境安全、調達、総務、技術についても、工場にも機能はあるものの、扱うべき課題が工場では重すぎる場合には工場外から助けることになります。
実際には、市場、顧客の要望をすばやく製品に反映させるため、営業技術、設計、開発等の機能を何らかの形で持っている工場も増えていますが、いずれにしろ工場単独では事業が成り立たないことは明らかですので、社内の他の部門との連携を密に保つことも、工場運営上大変重要なことです。
組織から復習する「工場」
生産に徹した工場の組織は、典型的には下の図のようになっています。
連載の第2回目(工場の収支の計算方法と損益分岐点)、第3回目(工場の設備投資と減価償却)で説明した、工場の収支、設備投資等の金銭的な側面に目を配っているのは総務部の中の財務・経理担当で、総務部にはまた、ステークホルダーである地域の行政、住民の皆さんへの窓口という大切な任務もあります。
第4回目(工場の安全衛生対策)、第5回目(工場の環境対策)、第6回目(緊急事態訓練のあり方)のコラムの内容は、主に環境安全部の担当範囲になります。
コラムでは説明しませんでしたが、原材料、部品の購入、納入業者の管理等を担当し、製品に使用する設備、装置の導入にも関与しているのが購買部で、4Mの一つであるMaterialの管理に中心的な役割を果たしています。
第7回目(管理者が心得ておくべき品質管理の大原則)、第8回目(製造ライン検討の基本を整理)に説明した業務を主導しているのは、製造部に所属するそれぞれの課です。
社外に対して製品の品質を保証する最後の砦が品質保証部で、立場上ラインからは外れて工場長のスタッフに位置付けられています。
多くの工場で、いわゆる環境マネージメントシステム、労働安全衛生マネージメントシステムの導入が盛んになっています。品質マネージメントシステムの導入とあわせて、3つのマネージメントシステムの導入が、日本の大手企業では、スタンダードになりつつあるようです。
以前は、マネージメントシステム導入の認証を得ること自体が目的化しているかのような時期もありましたが、現在は、抜けのない管理、継続的改善を押し進めるための実効性のある手段として、定着してきています。
工場長の役割
このような組織のトップにいるのが工場長です。
工場全体が一つの方向を向いて仕事をする状況を作り出すことは、工場運営の要で、各現場、職場の向いている方向がばらばらでは効率的な運営はできません。
このために工場長が先ずやるべきことは、会社の目的・方針に基づいた工場の目的・方針を工場内に明確に伝えることです。
工場の最高権力者であるとともに、ビジョン、運営方針を示すという大きな責任も持っています。
ピラミッドからふりかえる工場運営に必要な考え方
第1回目のコラム(はじめに)で、工場の目的を「何らかの製品を製造して社会に供給することで貢献し、その対価として収入を得ること」としましたが、前半の言い方を替えれば「社会の要求するQCDを実現すること」であり、そのために工場が行っているのが4Mの管理です。
工場では、4Mの管理をブレークダウンして、各々の組織(製造課、生産管理課等)に割り付けて、組織の担当業務にしています。
そして、その活動を下から支えているのが、5Sであり、総務部、環境安全部といった間接部門の業務で、この様子は、下の様なピラミッドで表現することもできます。
例えば製品の品質は、品質管理課だけが作り上げているわけではありません。
総務部、環境安全部などのいわゆる間接部門も含め、工場内のそれぞれの部署がそれぞれの方向から寄与しています。
QCDは、工場全体で作りあげるもの、組織が有機的に機能して初めて達成されるものなのです。
このコラムは、工場を水鳥に例えるところからスタートしましたが、ピラミッドの絵の工場運営が水鳥の頭、QCDと4Mが水の上に出ている部分、間接部門と5Sが水面下の部分というところでしょうか。
水鳥の頭に相当する工場長は、工場運営のすべて、すなわち収支も安全衛生も環境も品質も、さらにはあらゆるステークホルダーに責任を負う、大変な仕事ですが、それだけにやりがいはあります。
皆さんも工場長を目指してみませんか?
(アイアール技術者教育研究所 大変でもやっぱりあの頃は充実していたな、と懐かしむ元工場長H・N)