【工場運営AtoZ】工場の収支の計算方法と損益分岐点

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工場の収支の基本

今回は、工場でかかるお金の話をごく基本だけ説明していきます。
既に知っている人は復習のつもりで読み流していただければと思います。
 

工場はどんなおカネで回っているの?

工場では、工場外から受け入れた原料(他社で途中まで手を加えた中間品を含む)に手を加え、価値を上げて製品(他社に納入して最終製品にする中間品を含む)として工場外に送り出しています。
製品が最終使用者に渡る間には、さらに営業販売費、運送費などの費用がかかりますが、ここでは工場の収支に話をしぼるために工場からの出荷価格を販売価格と呼ぶことにします。
つまり、最終使用者が支払う金額は、工場出荷時点の販売価格に、営業販売費、運送費、その他費用、儲けを乗せたものになります。

工場でかかる費用には次のようなものがあります。

  1. ① 原料代、副原料代
  2. ② 手を加えるためにかかる費用:作業者の給与、電気代、水道代・・・
  3. ③ 工場維持に必要な費用:土地の賃借料、建家・製造装置等の固定資産税、工場長の給与、環境保全、安全対策、品質保持を担当する者の給与、「直接手を加えるためにかかるのではない」電気代、水道代・・・、建家・製造装置等の減価償却費(後程説明します)

これらの合計を、製品の最終使用者に渡るまでの費用(すなわち営業販売費、運送費などの費用を加えたもの)等と区別するために、「製造原価」と言うことがあります。
上記の、①、②はおおよそ生産量(手を加えた量)に比例し、生産量とともに変動しますので「変動費」と呼びます。
一方、生産をしようがするまいが固定的にかかる③の様な費用は、「固定費」と呼びます。

作業者の給与も、例えば作業者が正社員であれば、作業がなくても払われるので固定費に分類することが多く、特別な技術が必要でなく、誰でもできる作業を臨時員にやってもらうような場合は、変動費として扱うなど、少しややこしい話もあります。
 

工場の収入の計算方法

工場の収入(売上高)は、出荷した製品の数に販売単価をかけたものです。
以下では、1カ月当たりの生産量(=販売量、簡単のために在庫はしないことにします)をN、販売単価をC、製品1個当たりの変動費をA、固定費(1カ月当たり)をBと置くことにします。

さて、できた製品をいくらで売れば(販売単価をいくらにすれば)利益がでるのでしょうか?

N(個/月)生産するとかかる費用は、N×A+Bとあらわせます。
一方、販売単価をCとすると収入は、N×Cであり、利益は、

N×C-(N×A+B)・・・式(1)

あるいは

=(N×C-N×A)-B・・・式(2)

となります。

式(2)からわかるように、括弧内がプラスでないと利益が出ません。
販売単価が変動費より小さいのですから当たり前ですね。
式(2)の括弧内を「限界利益」と呼びます。つまり限界利益がプラスでない物は、作ってはいけないのです。

また、利益がゼロになる生産量を「損益分岐点」と呼びます。
損益分岐点(N‘)を式で表せば、式(2)=0、から、

N‘=B/(C-A)

となります。
生産量がN‘以上であれば工場収支は黒字になり、N’以下なら赤字になるということです。

収入、利益、費用の関係を表す2つのグラフを描くことが出来ます。
図1は式(1)に対応し、図2は式(2)に対応していることを確認してください。

金額と利益

図1

金額と製造量

図2

 

あちらが立てばこちらが立たず? 損益分岐点のシーソーゲーム

工場が黒字であることは事業継続の大前提ですが、販売量が安定しないのは世の常で、たとえ販売量(=生産量)が少なくても利益をあげる(黒字を維持できるようにする)ことはとても大事なことです。
これは上で説明した言葉を使えば、「損益分岐点を下げる」ということに他なりません。

図2から直感的にわかるように、損益分岐点を下げるためには、限界利益単価(C-A)を上げる(Cを上げる、あるいはAを下げる)か、固定費Bを下げることになります。
工場のC(販売単価)を上げることは、お客様にとってのA(製品1個当たりの変動費)をあげることになり、Aを下げるために単純に原料価格を下げることは、取引先にとってのC(販売単価)を下げることになることは明白です。

このように、ステークホルダーとの関係は、常にお互い様で、どうやってウィン・ウィンの関係を構築、維持するかは、工場にとって重要な課題のひとつです。

工場の収支改善のためには、製造工程の効率化(変動費Aを下げる)、無駄な経費の削減(固定費Bを下げる)など、すべての項目を検討する必要がありますが、中でも減価償却費はしばしば大問題になります

次回は、この減価償却費と設備投資について説明しましょう。

 

(アイアール技術者教育研究所 本当は経理のことがさっぱりわかっていない元工場長H・N)

 

 
 

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