環境マネジメントシステム(EMS)活動における外部コミュニケーションのポイント[ISO14001]
組織における環境マネジメントシステム(以下EMS, Environment Management System)活動においては、外部への発信やコミュニケーションが必要となります。
本コラムでは、環境マネジメントシステム規格「ISO14001」が要求するコミュニケーションのポイントについて説明します。
1.EMS活動でコミュニケーション対象となる「外部」とは?
組織の活動が影響を与える可能性のある組織又は個人を「利害関係者」と呼びます。
例えば、図1に挙げる組織又は個人が、環境マネジメント活動における利害関係者となります。
【図1 EMS活動における利害関係者】
ISO14001における「環境」の定義では、大気、水、土地、天然資源、植物、動物、人及びそれらの相互関係を含み、組織の活動をとりまくものを表し、組織内から、近隣地域、地方及び地球規模のシステムまでも含めて表します。
環境への影響側面を考える場合には、組織活動に伴う使用と排出を考え、次に示す項目を考慮する必要があります。
- 大気への排出
- 水への排出
- 土地への排出
- 原材料及び天然資源の使用
- エネルギーの使用
- 排出エネルギー(熱、放射、振動、騒音、光など)
- 廃棄物、又は副産物の発生
- 空間の使用
EMS活動における利害関係者は、これらの項目に関係して利害をもつものを意味します。
2.外部コミュニケーションのポイント
EMS活動において、外部とコミュニケーションを行う際のポイントを図2に示します。
【図2 EMS活動における外部コミュニケーションのポイント】
- 透明: 組織が、報告した内容の入手経路を公開する
- 適切: 情報が関連する利害関係者の参加を可能にしながら、利害関係者のニーズを満たす
- 真実: 偽りなく、報告した情報に頼る人々に誤解を与えない
- 正確: 事実に基づき,正確であり、信頼できるものである
- 無作為: 関連する情報を除外していない
- 簡潔・平易: 利害関係者にとって理解可能である
これらに配慮・注意をして外部とコミュニケーションをすることが重要です。
3.環境貢献についての情報発信も重要!
EMS活動でのコミュニケーションでは、環境負荷の増加に関するコミュニケーションの他に、環境フレンドリーな活動をアピールするようなコミュニケーションも重要です。
例えば、製品やシステムにおいて環境配慮設計がなされていたり、製品やシステム自体が、環境改善に貢献できるような特性をもつというような点もアピールポイントとなります。加えて、直接の事業活動以外に社会貢献活動として行っている森林保護活動などは、CSRレポート(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)の内容ともなりますが、環境活動として外部へ発信することができます。
CSRレポートなどの一部として外部発信される内容は、組織内部においても共有されることになりますので、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)達成に貢献する活動を行っているという認識ができ、組織に対する誇りを高めることにも繋がります。
コーポレートガバナンス(企業統治)という言葉は、とかく悪い場面で登場しますが、環境に関する良いコーポレートガバナンスを紹介できることができれば良いですね。
(アイアール技術者教育研究所 H・N)