- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2025/4/2(水)10:00~17:00
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交流は電流と電圧の向きと大きさが周期的に変化するため、ベクトルで表現することもできます。
今回は、電気回路に使われる代表的な素子である抵抗、コイル、コンデンサについて、実際にはどのようにベクトルを使っていくのかを解説します。
抵抗は、直流でも交流でも電流を妨げるはたらきをします。
図1には、左から抵抗の回路記号、ベクトル図、波形を示しています。
抵抗に交流電流が流れても、電圧vと電流iの位相が等しくなります(同相)。
[図1 抵抗のベクトルと波形]
コイルは、直流では短絡ですが、交流電流を妨げようとします。
この交流の流れにくさを「誘導リアクタンスXL」と呼びます。
また、コイルには自己インダクタンスがあります。
そのため、交流電流が流れると誘導起電力(逆起電力)が生じ続けます。
したがって、逆向きの電流を発生させる分電流が遅れます。
図2には、コイルの回路記号と電流iを基準にしたベクトル図、波形を示しています。
ここで、コイルは物理量がインダクタンスなので、回路中ではインダクタンスLと表記しています。
電流iは、電圧vに対して遅れ位相となります。
[図2 インダクタンスのベクトルと波形]
コンデンサは直流では開放ですが、交流では、抵抗やコイルと同様に電流を妨げようとします。
この交流の流れにくさを「容量リアクタンスXC」と呼びます。
また、コンデンサには静電容量があります。
そのため、交流電流が流れると充電と放電を繰り返します。
したがって、充電される分電圧が遅れます。
図3には、コンデンサの回路記号と電流iを基準にしたベクトル図、波形を示しています。
ここで、コンデンサは物理量が静電容量なので、回路中では静電容量Cと表記しています。
コイルと異なり、電流iは、電圧vに対して進み位相となります。
[図3 静電容量のベクトルと波形]
以上の内容をふまえて、図4に示した抵抗、コイル、コンデンサを直列接続して交流電源につないだRLC直列回路におけるベクトルの使い方を解説します。
[図4 RLC直列回路]
交流回路でコイルやコンデンサが使われているときには、どちらも電流を妨げようとすることの他に、位相を考慮しなければなりません。
図5は、各素子における電圧と電流の関係を表したベクトル図です。すべて電流を基準にしています。
[図5 RLC直列回路と各素子における電圧と電流のベクトル図]
ここで、直列回路の合成インピーダンスZは、抵抗RとリアクタンスXの和になるので、
Z=R+XL+XC
となります。
では、各素子のベクトルを合成します。
=
+
+
実際には、回路全体の電圧は
と
の関係で決まります。つまり、誘導リアクタンスXLと容量リアクタンスXCとの大小で決まり、回路の特性が確定します。
そのため、図6に示したように、まず、+
から求めていきます。
=
+(
+
)
[図6 RLC直列回路における(+
)を合成したベクトル図]
と
は、向きが逆であるから、その合成ベクトル
+
は、大きさにより
または
のどちらかの向きになります。
図6では、の大きさが
の大きさよりも大きいので、合成ベクトル
+
は
の向きになります。
次に+(
+
)を求めていきます。
図7に示したように、先ほど求めた、+
(赤いベクトル)と
の合成ベクトルを考えることで、回路全体の電圧V ̇を求めることができます。
[図7 RLC直列回路における+(
+
)を合成したベクトル図]
以上がRLC直列回路における各素子のベクトルの関係になります。
このあと電圧の大きさを求めていくためには、複素ベクトルを用いると便利です。
[※複素ベクトルについては別のコラムで解説予定です。]
(日本アイアール株式会社 N・S)