3分でわかる技術の超キホン デジタル通信の伝送関連技術《用語・方式など基礎知識》

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デジタル通信

人類にとって通信の歴史は古く、古代より狼煙や太鼓など視覚、聴覚による伝達から始まりました。
1800年代には電気の性質を利用したテレグラフや電話が出現し、1900年代に入ると多様な電気製品が盛んに生まれ、この製品間を繋ぐという要求によりデータ通信が発達してきました。このデータ通信も当初は電話のようなアナログ通信なるものでしたが、機器のデジタル化が進むことでデジタル通信へ移行してきました。

今回のコラムでは、このデジタル通信の中でも、2進数の強度変調であるベースバンド伝送方式を支える技術について、用語や方式などの基礎知識を解説します。

1.パラレル通信/シリアル通信

機器間を繋ぐ信号ケーブルには、パラレル通信とシリアル通信の二通りの種類があります。

パラレル通信」は、複数の通信回線を使用データ信号を同時並列に複数ビット伝送する方式です。
シリアル通信」は、1本の通信回線でデータ信号を1ビットずつ順番に伝送します。

パラレル通信は、通信回線数が多いためコスト的には高くなりますが、同時並列で高速通信を可能にします。
ただし、回線間のクロストーク(漏話)が発生するため、線長を長くすることは避けなければなりません。そのため主にコンピュータと周辺機器間などの比較的に短い接続に利用されます。
例えばSCSI、IEEE1284、ATA、PCIなどに利用されます。

これに対してシリアル通信は、回線数が減るため低コストであり長距離伝送が可能です。
反面パラレル通信と比較すると、パラレル/シリアル変換、シリアル/パラレル変換の回路が必要となります。この変換に対して半導体の高速化により処理遅延などの通信速度問題をカバーして、現在ではコンピュータネットワークに広く使用されています。
例としてRS-232C、USB、インターネット、シリアルATAなどで利用されています。

 

パラレル通信とシリアル通信

 

2.通信の同期/非同期

通信の同期と非同期というテーマですが、ここでいう同期は送信側と受信側でのタスク処理に関することを示します。ビット同期に関しては後述します。

「同期」は、送信側の処理後に受信側からの応答信号が返ってくるまで待ちます
「非同期」は、送信側の処理後に応答信号を待つことに並行して、ほかのタスク処理を行います

図に示すように同期では、送信側でタスク処理により送信処理のイベントが発生します。これを受信側では受信処理後に応答処理を実行します。送信側は応答処理を受信後、次のタスク処理を実行します。

これに対し非同期では、送信側でタスク処理により送信処理のイベントが発生します。引き続き次のタスク処理を実行します。これに対して受信側では受信処理後に応答処理を実行します。
送信側は応答処理を受信すると、実行中の次のタスク処理を一旦停止して受信処理を実行します。その後、次のタスク処理を実行します。

つまり、同期処理では送受信をその都度確認しながら次のステップに進みますが、非同期の場合は、確認処理を行わずに次のステップに進みますので処理効率は改善しますが、送受信の信頼性は劣るため、再送信する必要性が発生する可能性があります。

 

同期処理と非同期処理

 

3.全二重通信/半二重通信

シリアル通信を行う際の物理的伝送路には、全二重(Full Duplex)と半二重(Half Duplex)の2種類があります。

全二重通信」は、双方向の通信を行うために2本の通信路を使用します。したがって同時に双方向の通信が可能になります。
一方、「半二重通信」は、1本の通信路で双方向を実現するために、送信と受信を同時に行うことはできず、切り替えながら行うことになります。1本の通信路のためケーブル長を伸ばせるというメリットがあります。
電磁波や赤外線など無線技術を利用した通信は、基本的に同一の周波数帯を利用するということで半二重となります。例えばトランシーバー無線機などです。

なお、先ほど全二重においては、2本の通信路が必要と記載しましたが、1本の通信路で周波数変調により2つの信号に割り当てて行う手段もあります。

 

全二重通信と半二重通信

 

4.伝送路の符号化方式

伝送路において雑音などによる伝送誤り率が高まることを避けるために、情報に冗長部を加えたものが「符号化」です。
いくつかの符号化を以下の図を示しながら紹介します。その際に図に示していませんが、クロックというビット同期させる基本信号に沿ってデータを出力します。

最初に「マンチェスタ符号化」は、データビットを“01”が“0”で“10”が“1”というように定義するビット内に2つの状態が存在する符号化です。10Baseイーサネットなどで利用されています。

次に「RZ方式」(Return to Zero)ですが、これはビットとビットの間に必ずゼロを挿入する方式です。

そして「NRZ方式」(Non Return to Zero)は、RZ方式と異なり電位をゼロに戻しません

そのほかに「NRZI」(Non Return to Zero Inversion)、「AMI」(Alternate Mark Inversion)、「CMI」(Coded Mark Inversion)などの方式もあります。

 

マンチェスタ符号化とRZ符号化とNRZ符号化

 

5.信号同期方式(ビット同期/ブロック同期)

データの送受信においては、相互にタイミングを合わせることが必要です。
タイミングが合っていないとデータの始めと終わりがわからないからです。
このため信号同期が必要になります。この同期方式にはビット同期とブロック同期の2つに分類されます。

 

(1)ビット同期

ビット同期には、さらに送信側においてデータとは別に常時同期タイミング信号を送りビット位置を伝える「連続同期方式」、送信側で同期信号とは関係なくデータの先頭にデータの始めを示すスタートビット、終わりを示すストップビットを付加してビット位置を伝える「非同期方式」があります。

 

(2)ブロック同期

ブロック同期は、データの先頭位置を知るためにビット列を一つのタイミングとしてとる方式であり、代表的なものにフレーム同期、調歩同期、キャラクタ同期があります。

 

① フレーム同期

フレーム同期は、フラグ同期とも言われ特定の並びであるフラグを有します。
例として、HDLC伝送制御手順では「01111110」の2進数の列が利用されます。データの有無にかかわらず常にフラグが送り続けられて、データが発生したら、データをフラグ間に挿入します。データ長は任意であり、オーディオデータやイメージデータなど多種のデータを扱えます。

 

フレーム同期

 

② 調歩同期

1つの文字符号の前後に開始と終了を示すビット付加する方式です。
通常、スタートビット(“0”)によりデータが開始され、終了はストップビット(“1”)を取ります。またデータがない状態では、“1”の状態が維持されます。

 

調歩同期

 

③ キャラクタ同期

「SYN」と呼ばれる同期用の制御文字を使用して同期をとる方式で、8ビット単位の文字情報を伝送するために使用される方式です。
このためデータ長は8ビットを目安に増やすことができます。

 

キャラクタ同期

 
デジタル通信を支える技術として、代表的なものを挙げて説明をしましたが、これ以外にもプロトコルの種類や誤り訂正符号等の項目があります。
紹介したような技術をベースにそれぞれの方式の特徴を生かして、通信に要求される速度、信頼性、コスト、通信環境を考慮したうえで手段を選択する必要があります。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)
 

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