【自動車部品と制御を学ぶ】温度制御の対策原理を総整理!冷却と加熱昇温の各対策事例・厳選10パターン

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温度制御に関する技術を解説

機械要素においては、高温時の効率低下や熱による耐久性劣化の対策のため、冷却のしくみを必要とする場合があります。逆に、低温時に効率が低下するものでは、加熱・昇温のしくみが必要となります。

例えば電気自動車において、モータやインバータでは、動作発熱や急速充電時の発熱に対して冷却をしなければなりませんが、リチウムイオン電池では、発熱に対する冷却に加えて、低温での効率低下に対して加熱・昇温をしなければなりません。
また、排ガス対策として後処理で使用される触媒は、始動など有害物質が多く排出する冷間時には、加熱制御により昇温を行い触媒の早期活性化を行わなければなりません。

今回のコラムでは、冷却と加熱・昇温について対策原理をまとめ、事例をご紹介します。

車両部品に限らず、原理にさかのぼって解説します。事例も参考にして、ご自身が担当する製品の温度制御に対する理解を深めたり、新たなアイデアを考えてみたりして頂ければと思います。

【冷却/加熱・昇温】対策原理のまとめ

以下図(A)に冷却の対策原理、図(B)に加熱・昇温の対策原理をまとめたものを示します。

冷却も加熱・昇温も温度を制御するもので、温度を下げるか上げるかですので、対策原理をまとめると同様の図になります。

冷却の対策原理
 

加熱の対策原理

次に、実際の事例について説明します。
 

(1)温度制御対策・実際の事例 10選【冷却 編】

① 発熱の低減

  • 作動電流により抵抗として発熱する場合に、装置の工夫により作動に必要な電流値を低減する
  • 制御により、装置の作動を発熱の少ない運転状態とする

 

② 内部熱放散の促進

  • 発熱箇所から、金属部品などのレイアウトにより、熱を放散させる経路を作る

 

③ 外部への熱放散の促進

  • 装置のケーシング(ハウジング)に冷却フィンを設け外部へ放熱する表面積を増大する

 

④ 外部への熱放出の促進

  • 熱排気口を設ける
  • 低温時の昇温が必要な場合には、高温時のみ熱排気口を開く機構を設ける

 

⑤ 冷却媒体(回路)との熱交換

  • 装置専用の空冷、水冷、あるいは油冷などの冷却回路を設ける
  • 車両部品の冷却において走行風を導き空冷する、あるいは電動ファンを用いて強制空冷する
  • 電気部品を直接油飛沫で冷却するとともに、油を送る油冷回路の熱を水冷回路で冷却する
  • 他の装置の冷却回路と連結する(共通の冷媒を用いる)
  • 電子素子の発熱を、絶縁板をはさみ、放熱板に伝達し、放熱板で熱放散するとともに、放熱板を水冷する

 

⑥ 発熱体の遮蔽

  • 他の発熱体に対して、遮蔽、吸熱、あるいは断熱構造を設ける

 

⑦ 自部品の熱遮蔽

  • 装置に、他の発熱体からの遮蔽、吸熱、あるいは断熱する構造を設ける

 

⑧ 伝熱経路からの熱放散

  • 発熱体との接続部に放熱材を加える

 

⑨ 伝熱経路の遮断

  • 伝達経路中に断熱材を加える

 

⑩ 熱伝達経路における冷却媒体(回路)との熱交換

  • 熱伝達経路部品を空冷、水冷、あるいは油冷する
  • エンジンのラジエータ、ターボインタークーラー、EGRクーラー

 

(2)温度制御対策・実際の事例 10選【加熱・昇温編】

① 発熱の促進

  • 作動電流により抵抗として発熱する場合には、材料の抵抗値を増大させる
  • 制御により、装置の作動をより発熱する運転状態とする

 

② 内部熱放散の低減

  • 装置の部品に保温性の高い材料を適用する

 

③ 外部への熱放散の低減

  • 装置のケーシング(ハウジング)を二重構造にして保温を行う

 

④ 外部への熱放出の低減

  • 熱の抜け道を減らす

 

⑤ 加熱媒体(回路)との熱交換

  • 電気加熱装置により直接加熱する、あるいは空気などを加熱して供給する
  • 他の部品の排熱を導き加熱する

 

⑥ 冷却部品の遮蔽

  • 断熱材により低温部品を遮蔽する

 

⑦ 自部品の熱保存カバー

  • 保温材によりカバーする

 

⑧ 伝熱経路からの冷却放散

  • 高温部材との接触による昇温

 

⑨ 伝熱経路の遮断

  • 熱が逃げる伝達経路中に断熱材を加える

 

⑩ 熱伝達経路における加熱媒体(回路)との熱交換

  • 熱伝達経路部品を電気加熱装置により加熱する
  • 触媒に流入するエンジン排気ガスを電気加熱装置で加熱する

 

あなたの担当製品にあてはめて、対策を検討しましょう!

ということで今回は、冷却と加熱/昇温の各対策事例について、10個ずつご紹介しました。
是非、皆さんに担当製品にあてはめて、最適な対策を考えてみて頂ければと思います。

このような対策事例(パターン)を把握しておくことで、課題解決の引き出しが増えることになります。

今回のコラムが気になった方は、このページをブックマークに登録するなどしておき、温度制御に関する課題と向き合う必要が生じたタイミングでまた見返してみてください。何かヒントが得られるかもしれません。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)
 

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